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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「広いなぁ」

 僕は部屋を見渡しながら、自分の荷物を部屋の隅に置いた。 

 すごい待遇だ……。けど、こんな部屋に一人なのはなんだか心細い。……ヘンリを連れてくれば良かったかもしれない。

 僕はそんなことを思いながら、荷物から本を取り出す。

 デュルキス国から持ってきた本。新しい本をアルバートが数冊くれた。どれも入手困難な本ばかりだ。ウィリアムズ家の力はやっぱりすごい。

 本を読み進めて暫くすると、カンッと窓の外から何か音がした。

 え、なに……!? 鳥? 虫?

 僕は本を読むのをやめて、深呼吸をした。ここは二階だ、大丈夫。

 誰もいませんように、誰もいませんようにと心の中で呟きながら、窓の方をそっと見た。

 ……黒い影。人だ!!!!

 思わず声を出しそうになったが、誰かに口を抑えられた。

 殺される……! 暗殺だ! 死にたくない!

 暴れながらモゴモゴと声を出す僕に「大丈夫だから、声を出すな」と囁かれる。

 大丈夫ではないけど、まだ死にたくないから大人しくする。

 やっぱり僕は戦闘は向いていない。頭で戦うしかない。それに彼らも僕を殺すなら、もう殺しているはずだ。

「なんだ、意外と物分かりいいんだな」

 窓から体格のいい男が入ってくる。顔は火傷を負った痛々しい痕がある。 

 僕が黙って抵抗していないでいると、僕の口を覆っていた方は手を放してくれた。

 この男は……褐色肌だ。メルビン国の者? 僕より年上だが、若い。火傷の男の方は大人だ。

 ……どういうこと? なにこれ? 強盗? いや、強盗だったらもっと手荒だし……。分からない。

 僕は自分が今置かれている状況が分からずに、彼らを交互に見た。

「驚かしてごめん。僕はレオン。主に君を頼まれたんだよ」

 ……レオン。……主?

 あ! そう言えば、アリシアからラヴァール国に行った時の話を聞いたことがある。レオンという暗殺者と知り合った、みたいなこと言ってたな。

 アリシアのラヴァール国での話は本当にぶっ飛んでて何度か脳がショートしかけたけど。

 ……けど、こっちの男は本当に分からない。……誰? 

「気配を消して現れたら怯えるに決まってんだろ」

「窓から現れる方が怖いだろ」

「どっちもどっちだよ」

 僕は二人の会話に割り込んだ。

 まぁ、暗殺者は気配消すのが仕事みたいなものだから、仕方がないか。…………仕方がないのか?

 自分で納得しようとして、分からなくなってしまった。

「こっちはリガル。猛獣のような身体能力を持ってる」

「……それ絶対悪口だろ」

「どう考えても、褒めてるだろ。なんでも言いがかりつけるな」

 この二人、めちゃくちゃ相性悪い?

「あ、あと、弟がいるんだけど、今は寝てる。リオは……ちっこい」

 ……それはちっさすぎるだろ。

 レオンは親指と人差し指で人形すら入らないほどの幅を僕に見せてくれた。

 生まれてきてすらないんじゃないかな、その大きさは……。かなり幼いということは分かった。

「リオは斑点病にかかっていてね。主に助けられたんだよ」

 レオンのその言葉に僕はじっちゃんのことを思い出した。

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