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キャロライン・ルルイエの消息  作者: ヤミヲミルメ
美術集団シャーマーメイズの足跡
30/72

ウィルフレッド・ウィルソン

 一九三〇年、キャロライン・ルルイエ、失踪。


 一八八七年、サン・ジェルマン・ルルイエ、失踪。


 一八八六年、サン・ジェルマン・ルルイエ、パトリシア・ピークスと結婚。


 一八七三年、パトリシア、サン・ジェルマンからブルーダイヤの指輪を受け取る。


 一八七二年、パトリシアの父、トーマス・ピークスが、美術集団シャーマーメイズ作製の風景画『失われし神殿都市』を画廊より購入。




Q.ウィルフレッド・ウィルソンとは何者か?


A.トーマス・ピークスの友人。

 パトリシアとサン・ジェルマンの出会いのきっかけとなった『失われし神殿都市』に深い関心をいだき、独自に調査。

 この人物が残した記録は、当時を知るための貴重な手がかりである。






タブロイド紙の切り抜き


 これらの切り抜きが収められたスクラップ・ブックは、ウィルフレッド・ウィルソン氏の書斎で発見された。

 何故、ウィルソン氏がこれらの記事を保管していたのかは不明。



『伝説のシー・モンクか!? グラスゴーの海岸に謎の巨大生物の死骸』


※紙の傷みが激しく、部分的にしか読むことができない。



・嵐の翌朝、海洋生物の死骸と思しき巨大な物体が、海流によりイギリスの大西洋側の海岸に漂着。


・強烈な腐敗臭。


・ぶよぶよした皮。


・暗緑色。もとの色なのか腐敗により変色したのかは不明。



翌日の同紙。


『怪物、一夜にして消失』


・地元の漁師の証言

「潮に流されたとは考えにくい」


・近隣住人の証言

「消えてくれて嬉しい。もう二度と見たくない」


・記事は、怪物は死んでおらず自ら泳ぎ去ったとの可能性を示唆して締めくくられている。



翌週の他紙の切り抜き


・専門家の見解で、鯨の死骸の可能性が高いとされる。



※追記

 ウィルソン氏は当件の三年後に現地を訪れ、地元住民が保管していた新聞を譲り受けたと判明。

 その目的は依然として不明。






魔術書(上巻)の記述


 ウィルフレッド・ウィルソン氏の書斎に上巻のみが保管されていた。


 赤黒いシミのついたページの間に、ロンドン市内の古書店の領収書がはさまっていた。


 領収書の裏にはウィルソン氏の筆跡で

『ページに付着した絵の具のシミが、シャーマーメイズが使用していた絵の具の色に酷似』

とメモされている。

※美術集団シャーマーメイズについては後述する。


 この書物はもともとシャーマーメイズが所有していた可能性が高い。

 当該の古書店はすでに存在せず、この本が店に流れた経緯は不明。


 内容は極めて難解。

 重要と思われる部分のみを書き写す。



・偉大なる(判読不能。クルルフ? クルーフ?)の皮をなめしてキャンバスにせよ。


・キャンバスは十二枚、用意せよ。


・十二人の巫女で輪を作れ。


・輪の中央に立つ、十三番目の巫女を生け贄にせよ。


・生け贄の血で絵の具を作れ。


・輪になった巫女は、各々(おのおの)の左隣の巫女の肖像画を描け。



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