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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第四章

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開店イベント!その名もダンジョン障害物競走

 絶賛二日酔いで死んだ魚のような目をしていたメルクリアに力が戻ってきたようだ。


 さすがというか何というか。


 ワーカホリックはよろしくないですよ。


 まぁ人の事いえないけど。


 仕事が楽しくなるとついついそっちにのめりこんでしまう元社畜でございます。


「内容は先ほどお話した通りになりますが、低層のみのダンジョンで魔物の量が少なく管理しやすいからこそ出来る事だと思っています。ダンジョン全域を障害物競走の舞台にして終点までの時間を競い合います。道中命の危険が少ない罠を多数配置し、また壊れ易い武器を一定数渡して魔物と戦ってもらうことも予定しています。魔法の使用はもちろん不可です。いかに戦闘と罠を避けて短時間で目的地に着くかを競い合うので冒険者の位で大きく左右されないよう配慮したつくりにする予定です。下層へ降りるフロアマスターの部屋では戦闘以外の関門を作ってもいいかもしれませんね。」


 とりあえず今思い描いている内容を簡単に説明する。


 まだまだ企画としては草案状態なのでここからしっかり作りこんでいかなければいけないとも思っているが、ひとまず全体像が見えないことには話が進まないのでひとまず出来ている所まで話した。


 まず第一に企画として通るかというかという問題と、集客できるのかという問題も残されてはいる。


 だがまずやってみないことには始まらないからな。


 ちょうどメルクリアもいるし企画が通るかどうかはここで分かる。


「その企画を仮に行なうとして費用は誰が負担するんでしょう。商店連合としては成功する見込みのない企画にお金を出すつもりはありませんよ。」


「費用に関しては冒険者から参加料を徴収する予定です。チームもしくは個人どちらでも銀貨1枚といいたい所ですが銅貨50枚ぐらいになるのではないかとも思っています。また協賛していただける商店やギルドを募集してそこから協賛金を頂く代わりに宣伝も行なうつもりです。現在有名な武器屋から使用する武器と賞品の提供を、賛同してくれた商店から当日の飲食品の提供を得ております。企画の了承が降り次第ギルドにも掛け合うつもりです。」


「先手を打ってある程度は動いているようですね。企画の意図と内容は大体分かりました。しかしそれで本当に集客できると思っているのですか?」


 確かに集客できる保証はない。


 そもそも前例がないし企画倒れになる可能性もある。


 しかしそうならない為に退路をふさいでいるのだ。


 何が何でも成功させる。


 この気持ちがなければ初めて行なう催しに成功の二文字はない。


「先ほどいいましたように今回の趣旨は宣伝です。知名度を上げ短期的にではなく長期的に商店の利益を上げる為の企画です。ですので仮にこれを行なったからといってすぐに何か変化があるとは思っていません。商店連合にはそのことを理解していただいたうえで承諾していただければと思っています。集客できるかどうかはやってみなければわかりません。

 仮に失敗すれば私の首が早いうちに貴女の手元に転がっていくだけですよ」


「命をかけてまでしなければならない企画なのかしら。」


「命をかけてまでしなければこの商店に未来はありません。もちろん当初予定されているであろう目標を10年ほど待っていただけるのであればこの企画をする必要はないでしょう。しかしながら明日発表される目標はそれを許してくれるとは思えない。自分の命が掛かっているからこそ必死になっているんですよ。」


 異世界に来てまで仕事で命をとられたくない。


 楽しく仕事が出来れば一番だ。


 そうなる為にも最初が一番重要になってくる。


 何が何でも成功させて未来のハーレム計画を!ちがう、幸せな結婚生活を掴み取るのだ!


「ただの気まぐれで考え付いたというわけではないんですね。」


「もちろんです。本当は後一つ二つやってみたい企画はあるのですが、まずはこれを成功させない事にはそれを行なう事も出来ませんからね。」


「話の途中で申し訳ないが、その命が掛かっているというのはどういうことなのだ?」


 そうか、シルビア様は知らないんだっけ。


「私がこの世界に来て商店連合と契約をするときに決めたことなんです。ダンジョンと商店を経営していく中で目標を達成できない場合はこの命を持って弁済すると。」


「なんだって!」


「他のダンジョン経営者も同じような内容で契約しているの。命を懸けずしていい仕事は出来ない。命をかけるにふさわしい仕事をしていただく為にこのような内容になっている事をご理解いただきたいですわね。もっとも、彼はそうならない為に初回からこの私に突っかかってきたわけですけれど。」


「せめて交渉といっていただきたいですね。」


「だが失敗すればシュウイチの命はなくなってしまうのだろう?」


 まぁそうなんですよね。


「正確には奴隷に身を落として負債を帳消しにするということですわね。いきなり首を落としたりはしませんわ。」


「それはそうだがあまりにもひどい契約なのではないか?」


「まぁそう取る事もできますが、私はそれを承知の上でこの契約をしました。いまさら変えるつもりはありませんよ。」


 シルビア様は納得いかないようだ。


 しかし何かを考えるようにうつむいたかと思うと、すぐさま顔を上げる。


 その顔はとても活き活きとしていた。


 なんだ?


「シュウイチが、わが夫が命を懸けてまで仕事をすると決めたのだ私は何も言うまい。私は私に出来る事で全力で手助けさせてもらおう。」


「黙っていて申し訳ありませんでした。」


「別に怒ってなどおらん。エミリアなど分かっていながら覚悟を決めてそなたについて行くと決めたのだ。私に出来る事があるならば遠慮なく何でも言ってくれ。」


「ダンジョンに関してでしたら何なりとお申し付けくださいませ。」


 頼りにしています、二人とも。


「なんだか私が悪者になったようですわね。」


「この世界に来なければ三人には出会えませんでしたからね、そういう意味では感謝しています。」


「私個人としては申し訳ないと思ってはいますが、商店連合としては別です。契約した以上しっかりと結果を残していただきますわ。」


「そのためにもこの企画は何としてでも成功させますのでご理解とご協力をお願いいたします。」


「確かにこの企画が成功すれば私としても良い経験になります。不本意ながらお手伝いさせていただきますわ。」


 よし。


 これで企画は通ったも同然だ。


 次はどういう風にこの企画を進行していくかだな。


 まずは競技コースと競技ルールの決定。


 これがなければそもそも始まらない。


 次に競技がしっかり行なわれているか不正がないかという監視体制の確立。


 不正が行なわれて順位が変わってしまうのは一番許されない事なのでここはしっかりとしておきたい。


 そしてなにより競技に参加してもらう目的となる商品の決定。


 目玉商品であるダマスカスの剣は決まっているがそれだけでは足りない。


 せめて3位ぐらいまでの賞品と参加人数にもよるが参加賞的なものも出せれば一番嬉しい。


 銅貨50枚の参加費として15~20ぐらいのものがもらえればまぁまぁだろう。


 薬草が15枚だしこんな程度でいいかもしれないな。


 仕入れ値を抑えれば一組で利益が銅貨30枚。


 100組で銀貨30枚分。


 正直赤字だがその辺りは宣伝経費だと思えばいい。


 100組参加して10組でも来てくれるようになれば十分だ。


 あとは残りの90組のうち半数以上がダンジョンのことを話してくれればそれだけで十分元が取れる。


 口コミに勝る宣伝なし。


 SNSのような媒体が存在無い以上、人から人に伝わる宣伝は非常に効果が高い。


 悪評は広まりやすいのが常だが楽しかったという体験談もまた広がりやすい。


 今回はそれをターゲットにした企画と言ってもいいだろう。


「具体的にどうすればいいんでしょうか。」


「まだ草案も出来上がっていない状況ですのでそこから考えて行きたいと思います。私の頭には大まかな考えはまとまっていますが、それを皆さんに伝えて形にしなければなりません。その作業を一緒にしてくだされば大丈夫です。」


「ならばまずは何をしなければいけないか書き出すのがいいだろう。騎士団でも複数の事案が出た場合には書き出して優先順位をつけて処理しているぞ。」


 タスクマネジメントという奴だな。


 そして同時に行うのが情報のトリアージ。


 何をどういう風に行うかその順番を決めつつ重要度にあわせて処理していくと作業は非常に効率的になる。


「そうですね、ではまずこの催しを行うにあたって必要なものを書き出していきましょう。」


「競争というぐらいだから規範作りが重要だろう、何をしていいのか何をしてはいけないのかそこがなければそもそも競技としては成り立たない。」


「ダンジョンの整備はどういたしましょう。罠の配置や種類なども含めて通常のモノから非戦闘的なモノにしなければなりません。具体的な種類を教えてください。」


「商業的に行うなら金銭管理も重要ね。協賛金を得るならば声を掛ける商店並びにギルドの候補を挙げてもらうと助かるわ。それと支払い金額が決まったものがあるのなら順番に書き出してもらえればあとは私とエミリアが管理できるわ。」


「参加者の管理はいかがいたしましょう。滞在されるのであれば住居と食事の手配をしなければなりません。それにかかる費用と準備は早めにしておいたほうがよろしいかと思います。」


 出るわ出るわ。


 自分では気付かなかった部分も含めると決めなければいけないことがあまりにも多い。


 これはタイミングを誤ってしまっただろうか。


 まぁはじめてしまったものは仕方ない。


 横流しの件もこっちの件もどちらもやり抜けばなんとかなる。


 二兎を追い掛けるとなんとやらだが、人数がいるからきっと何とかなる。


 がんばろう。


 その後二度支配人がお茶を入れに来てくれたタイミングまで打ち合わせは白熱した。


 一度、支配人が音もなく現れたが状況を見てそのまま退散したのには気付いた。


 しかしながら二回目にきたのには全く気付かなかった。


 それぐらい集中していたのだろう。


「そろそろお帰りにならなければならないお時間となりましたがいかがなさいますか?」


 二回目のお茶を持参した支配人に言われ全員がピタッと静止した。


「そうでした、今日は戻らなければなりませんでしたね。」


「今からでしたら日暮れまでには間に合うかと思います。」


 昼の中休みの鐘がなったような気がする。


 昼過ぎには出るといっていたはずなのにそんなに話し込んでいたのか。


「早急に決めなければならないことはありますが明日までにというわけではありません。今日はこのぐらいにしておきましょう。」


「三日後の面談には私も駆けつけよう、博士たちの護衛は私に任せてくれ。」


「助かります。一応念の為にサンサトローズに不審者が増えていないか確認だけしておいてくれますか?」


「あら何か面白いことをしようとしているの?」


 別に面白いわけではないんですけど。


「それに関しては明日またお伝えします。」


「いいわ、後でフェリス様のところに行くからその時に聞くから。」


「お加減はもうよろしいのですか?」


「朝よりかは大分マシになったわ、心配かけたわねエミリア。」


「無理だけはされないでくださいね。」


「これだけ面白いことしてるのに、無理しないのはちょっと無理そうね。」


 面白いと思ってくれるだけありがたい。


 他の仕事もあるだろうからこっちのことはこっちで粗方決めてしまい、必要な部分の決裁だけもらうようにしておこう。


「それでは皆さん気をつけて戻ってください。シルビア様はまた三日後に、メルクリアさんは明日またお願いいたします。」


「ニケ殿の件は任せてくれ。なにか急用が出来た場合は遣いを出そう。」


「じゃあ私はお先に失礼するわね。」


 メルクリアは立ち上がると窓のほうに歩き始めた。


 すると眼の前におなじみの黒い壁が現れ、手を振りながらその中へと消えていった。


「転移魔法は非常に高度な魔法だと聞いたことがあります。あの方は何者なのでしょうか。」


「見た目以上にすごい人ですよ。」


 具体的なことは言うと大変な目に合うので濁しておく。


「馬車の手配は出来ております。皆様次回のご来店を心よりお待ちしております。」


「なにからなにまでいつもありがとうございます。」


「これぐらいはいつものことでございます。どうぞお気をつけて。」


 支配人の手配した馬車にエミリアとユーリと三人で乗り込む。


 シルビア様はこのまま徒歩で騎士団へ戻るそうだ。


「では三日後に。」


「開店には行けぬがしっかりがんばってくれ。」


「ありがとうございます。」


 いつまでも手を振るシルビア様に窓から手を振りサンサトローズを出る。


 ユーリの荷馬車と違い風が当たらず非常に快適だ。


 揺れはまぁお察しください。


「いよいよ明日開店ですね。」


「準備しなければいけないことが山ほどありますので目が回りそうです。」


「ダンジョンのほうはお任せください、盛大にお出迎えさせて頂きます。」


 いや盛大じゃなくていつも通りで大丈夫です。


「せっかくの休息日でしたが今回もお休みできませんでしたね、二人とも申し訳ありません。」


「とても充実した休息日になりました。素敵なものも買っていただきましたし。」


 そう言って左手の薬指に光る指輪を見つめるエミリア。


 ユーリは自分の首輪(チョーカー?)にそっと触れる。


「さぁ明日からはもっと大変になりますよ。開店に面談に催しと体がいくつあっても足りませんね。」


「そのわりには御主人様は非常に楽しそうに笑われますね。」


 あれ、今笑ってた?


「確かにシュウイチさんは大変になればなるほど笑顔が増えますね。けして悲壮な顔は見せないでいつでも前向きに取り組まれます。そんなところが好きになったんですけど。」


 最後は何を言っているのか聞き取れなかったけど二人が言うなら間違いないんだろう。


 えー、大変になればなるほど笑い出すってなんか危なくない?


 こいつ笑ってやがる。


 とかいわれてるのかなぁ。


 まだ腐って落ちたくないです。


 がんばります。


「顔だけでも笑っていないと元気が出ませんから。心の中ではあたふたしていますよ。」


「そのようには見えませんが。」


 内心ビビリのチキンです。


 けどこっちに来てから随分と大胆になったとは思う。


 昔の俺ならすぐに止めたり投げ出したりしていただろうけど、きっと命のやり取りを嫌でもしてきたからだろうな。


 アリに始まり盗賊を討伐し精霊のお願いを叶え次は魔石横流しですか。


 これで普段なにしてるんですかって聞かれて商人ですって行っても絶対信じてくれないよな。


 変な通り名までついちゃってるし。


 今度コッペンに訂正して貰うとしよう。


 けどこれだけ自分が変われたのはエミリアやシルビア様やユーリ、それに俺と関わってくれた多くの人のおかげなのは間違いない。


 その人がいなかったら今の俺はないわけで。


 もう元の世界にいた情けない自分ではない。


 今はいろんな人に頼りにされる新しい自分がいる。


 その期待に応えられるように全力で今出来ることをやろう。


 もちろん俺一人の力では無理なのでみんなの力を借りまくるわけですけど。


 他力本願100%男ここに極まれり。


 これからもいっぱいお世話になります。


「帰ったらゆっくり休んで明日に備えましょう。」


「今日の湯沸しは御主人様の番でしたね、どうぞよろしくお願いいたします。」


「がんばってくださいシュウイチさん。」


 ゆっくり休ませてはくれないようだ。


 がんばろう。


 とりあえず明日筋肉痛で働けないとか情けないことにならないように気をつけよう。


 うん、大丈夫。


 きっと大丈夫。


「まかせてください。」


 気持ちだけは前向きに。


 明日からが異世界に来た自分の本当のスタートだ。


 イナバシュウイチ 31歳 既婚!


 みんなのためにがんばります。


とてもキリの良い終わり方になりましたが終わりません。

ですが次からが本当のスタートになると思います。


新しい企画も出ましたがこの章はあくまで横流しがメインですので、

そちらをがんばって解決しようと思います。

おかしいなぁ、もっと短く済ませるはずだったのになぁ。


プロット通りに書けない下手作者ですが見捨てずお付き合いください。

よろしくお願いいたします。


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