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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第三章

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もう一つの記憶

 夢を見た。


 暗い洞窟のような場所で少女と話をしている。


 話している内容は思い出せない。


 少女は常に無表情だが親身に身の回りの手伝いをしてくれた。


 一緒に食事をし、一緒に研究をし、一緒に眠った。


 恋人のようでもあり家族のようでもあった。


 時に妻のように触れ合いときに娘のように遊んだ。


 そしてどのぐらいの時間が経っただろうか。


 目覚める前の最後の瞬間に少女が寂しそうな顔をしていたことは覚えている。


 今までのロボットのような無表情とは違う、人のような悲しい表情だった。


 一筋の涙が少女の目をつたった。


 そこで目が覚めた。


 目覚めは悪くない。


 ただ、非常に悲しい気持ちが心の中を支配している。


 あの夢はいったい何を表しているのだろうか。


 普通の夢とは明らかに違う。


 自分の夢ではない、そういう実感があった。


 映画の中に入り込み主人公目線で見せられているような感覚だ。


 物語を最後まで見せられ終幕と共に目が覚めた。


 いつも途中で目が覚めてしまうので最後まで見る夢というのは非常に珍しい。


 その割に記憶があいまいなのは夢を覚えていられないからだろう。


 夢は脳が記憶を整理したり処理したりする中の断片だと言う説がある。


 それでは正夢の証明にはならないがあれもただの偶然と言われている。


 人に未来を見る力は無い。


 もしそんな能力が有るのであれば今頃億万長者になっているに違いない。


 毎週TOTOやロトを当て続ければいいんだから。


「・・・顔洗ってこよう。」


 気だるさと悲しさを吹き飛ばしたかった。


 まだ二人は起きていない。


 外はまだ暗く遠くのほうにうっすらと明かりが見える程度だ。


 おそらく早朝日の出前。


 半刻もすれば少しずつ明るくなっているだろう。


 まだ村人は寝静まり起きている人間は俺ぐらいだ。


 音を立てないように井戸の水を汲み顔を洗う。


 冷たい水が顔にかかり意識がハッキリしてくる。


 悲しさもましになってきた。


 悲しいと言う気持ちはあまり経験が無いのでどのぐらい悲しいかと言われると難しい。


 心の中にぽっかりと穴が開くというか、大事な物をなくしたというか。


 そんな感覚だ。


 不思議と涙は出てこない。


 そういう悲しさではないのだろう。


 最後に泣いたのはいつだっただろうか。


 そうだ、祖父の葬式のときだ。


 周りの親族が全員涙を流しそれを見て泣いてはいけないと勝手に決め込んでいた。


 ただ、母親が棺桶の中の祖父に泣きながら花を手向けているときに涙腺があふれた。


 人は本当に悲しいときはあんなに悲しい声を出せるのだ。


 そう思った。


 あの光景は二度と忘れることはできないだろう。


 でもそんな感じとはまた違うんだよな。


 ほんと何なんだろう。


 水滴を払いのけて正面を見たそのときだった。


 彼女がいた。


 夢の中に出てきた彼女が森の中に立っていた。


「リリィ・・・。」


 思わず彼女の名前を呼んでしまった。


 まて、リリィって誰だ。


 知り合いにそんな名前の人はいないぞ。


 それにあの少女は誰だ。


 突然のことに頭がパニックになる。


 まるで頭の中にもう一人の人格がいるようだ。


 首を左右に振り意識をハッキリとさせる。


 もう一度森を見たとき少女の姿はなくなっていた。


 見間違いだったのか。


 それとも幻覚だったのか。


 もしかしたらまだ寝ぼけているのかもしれない。


 もう一度冷たい水で顔を洗う。


 リリィ。


 名前を呼ぶと心のどこかが暖かくなるのを感じた。


 疲れているんだ。


 そうに違いない。


 昨日あれだけ大変な目に遭ったんだ。


 つかれていても仕方が無い。


 しかし、今日は精霊と会わないといけない。


 相手が相手だけに気を抜いてはいけない。


 シャンとしろ俺。


 アニメでよくあるように頬を音が出るぐらい強く挟む。


 ジンジンとする痛みが頭をより鮮明にさせる。


 わからないことを深く考えるのは止めだ。


 今できることをしよう。


 そう頭を切り替えて家に戻る。


 夜空が少しずつ明るくなってきたところだった。



 その後起きてきた二人に挨拶を交わし朝食を済ませる。


 今日の当番は俺なので、昨日捕ってきたウサギ肉と朝採れの卵で目玉焼きを作った。


 最近は昼食は簡単に済ませて朝食と夕食をしっかりととるようにしている。


 そのほうが1日動き回っていても疲れにくい。


 昼食が少ない代わりに軽食を体感時間3時のおやつの頃に取るようにすると夕食まで空腹を紛らわすことができた。


 おやつって元々こういう為にあったんだよな。


 甘味の時間というわけではないわけだ。


「今日は早めに行こうと言っていましたね。」


「できれば先に商店に寄りたいのですが、昼前頃といっていましたから丁度いいと思います。」


「来ていなくても転居の準備をして待っておればよかろう。」


 相手が相手なのでギリギリは避けたい。


 けしてキスが嫌なわけではないんだが、遅れて無理を言われても困る。


 どうせ明日には新居に移る準備をするんだ、ついでだから自分の荷物をまとめて持っていこう。


 荷物といってもこちらの世界に来てあまり日がたっていないので着替えや日用雑貨ぐらいだ。


 朝食後軽くミーティングのような話し合いを済ませ各自準備に入る。


 スーツケースがあったら便利なんだけど残念ながらそれに代わるようなものがない。


 適当な大きさの木箱に荷物を放り込んでいくことにした。


 貴重品は引越し当日でもいいか。


 あれ、何だこれ。


 貴重品を入れていた箱の中に緑色の小石を見つけた。


 こんな石いつ拾ったかな。


 翡翠のような緑色の綺麗な石だ。


 古い記憶を呼び起こし出所を探す。


 最近ではないけどこの荷物はここに来る前に持っていたやつのはずだけど、どこだったかなぁ。


 最近物忘れが激しくてこまる。


 やはり30を過ぎると脳細胞はどんどん死んでいくようだ。


 昨日食べたご飯は覚えているが三日前となると危うい。


 年はとりたくないものだなぁ。


 思い出せない時は無理に思い出さなくてもいいか。


 大事なものだったら勝手に思い出すだろう。


 石をポケットに入れ作業に戻る。


 箱がイッパイになる前に荷物を詰め終わってしまった。


「さて、あとはエミリアとシルビア様か。」


 その時、部屋のドアがノックされる。


 誰だろう。


「シュウイチさん荷物は明日でも大丈夫でしょうか・・・。」


 部屋を出ると困った顔のエミリアが立っていた。


「荷物多いのかな。」


「あまり持ち込まないつもりだったのですが思った以上に量が多くて間に合いそうにないんです。」


「今日しなければいけないわけではないので大丈夫ですよ。」


 俺は女性を知らないうちに物を増やしてしまう生き物だと思っている。


 もちろん少ない人もいるだろうがエミリアは増やしてしまうタイプのようだ。


「私はあまり持ってきておらんから問題ないが、何がそんなに多いのだ。」


 シルビア様は逆に物が少ないタイプか。


 いや、メインは騎士団だし少ないだけかもいれない。


「服や小物が多くて、それとダンジョンの資料などがまだ整理できていないんです。」


「資料などは向こうに行ってからでも構わんのではないか。」


 確かにその通りです。


 でも慌てる引っ越しでもないし別にいいんじゃないかな。


「今日は重たい資料だけ持って行きましょう。他はまた後日にね。」


「よろしくお願いします。」


 とりあえずまとめさせた資料を含めて木箱が四つ。


 荷車を引いて新居へと向かうことにする。


 明日は一回で済むのだろうか。


 こんなとき引っ越し業者がいれば便利なのにな。


 新居に着いたのは日がまだ高く上がる前だった。


 荷物を搬入するもまだドライアドの姿は見えない。


 少し早すぎたようだ。


 昨日はドライアドに驚いてしまってよく見ていなかったが、どうやら俺の部屋の方が他の部屋よりも大きい。


 一番奥のため窓が大きく天窓もついていて明るい。


 部屋には机と大きなベットが一つ。


 うん、大きすぎる。


 白鷺亭で見たキングサイズのやつと同じだ。


 誰だよこんな大きいの手配したやつ。


 ありがたいけどさ!


 靴を脱いでベットに倒れこむ。


 スプリングなんて便利なものは入っていないが柔らかい布団が体を受け止めてくれる。


 寝心地最高だな。


 このまま寝てしまいたい。


 あ、お昼ご飯の時には起こしてね。


「あれ、もう来てたんだザンネン。」


 寝ようとしたら目の前にドライアドがいた。


 顔が近い。


「おはようございますドリちゃん。」


「おはようシュウちゃん、早く来てくれたお礼にキスしてあげようか。」


「お待たせするといけないとおもってね。」


 あえてキスには触れない。


「別に構わないのに。」


「他の2人も呼んできますから待ってて。」


「早く帰って来てね~。」


 早くも何も部屋を出てすぐですけど。


 二人の部屋のドアにノックをするとすぐに出てきた。


 役者がそろったところで話を聞かせてもらおう。


「ディーちゃんから詳しい話は聞けたのかな。」


「怖がって出てきてくれないからあまり聞けなかったんだ~。黒いブヨブヨした塊が泉の中に入って魔力を持って行っちゃうって。怖いから外に出たくないんだって。」


 つまりひきこもりという奴ですか。


「黒いブヨブヨした塊。たしかに見慣れない魔物と見間違えてもおかしくありませんね。」


「ディーちゃんは怖がって出てきてくれないんだけど、ディーちゃんと遊べないと私も面白くないし。シュウちゃんなら何とかできるよね。」


「詳しい話を聞いてみないとわからないなぁ、黒い塊って言ってもスライムかどうかもわからないし。」


 正直面倒事に巻き込まれたくないというのが本音だが、さすがに断るわけにはいかない。


 でも黒いブヨブヨした塊だけでは犯人の目星もつかない。


 それに対処しろというほうが無理な話だ。


「ディーちゃんと直接お話しできるかな。」


「日が高いうちなら大丈夫じゃないかな。シュウちゃんが来たって言えば顔ぐらいは出してくれるかもしれないよ。」


 話ができれば一番いいんだけど難しいかもしれない。


 事件は家で起きてるんじゃなくて現場で起きているわけだし、一度行ってみたほうが早いか。


「今から行ってもいいかな。」


「それなら私が先に行って話をしておくね。」


「三人で行っても大丈夫かな。」


「二人はシュウちゃんのつがいでしょ、別に大丈夫じゃないかな。」


 つがいって。


 確かにそうだけどもう少し言い方ってものが。


「水の精霊様にも会えるなんて光栄です。」


「どんな魔物でも私がいれば心配あるまい。」


「シュウちゃん愛されてるねぇ。私も惚れちゃうぞ~。」


 そのネタ昨日も聞きました。


「それではまた後で、私達もすぐ向かうから。」


「またね~。」


 手を振るとドリアルドはシュっと消えてしまった。


 森の中は自分の庭みたいなものだしすぐに移動できるだろう。


 転移魔法とかあったら便利なんだけど、残念ながらそんなものにご縁はないわけで。


「精霊に会うのってそんなにすごい事なの?」


 これだけノリの軽い精霊を見ているとありがたみというか、そういうものがどうも感じられない。


「精霊に会うこと自体が珍しいんです。よほどのことがなければお会いすることなどありませんし一生出会わない魔術師だっています。それなのに今度は水の精霊様ともお会いできるわけですからこれは非常に幸運な事なんですよ。」


 どうやら遭遇率もレアらしい。


 そんなもんなのかなぁ。


 芸能人に会えるかどうかみたいなものだと思っていた。


「それだけ神聖な方のお役に立てるのだ。もっと自慢しても良いと私は思うぞ。」


「その通りです。精霊に頼りにされるなんて非常に光栄な事なんですから。」


 いや、ただ解決できそうな人が俺しかいなかったって言うだけだからそういう感じではないとおもうんだけど。


「そんなものなのかなぁ、とりあえず泉の方に向かいましょうか。」


 泉は商店から徒歩30分、村からだと徒歩10分ほどだ。


 道中話に出ていたオオカミに遭遇することもなく無事に泉へと到着した。


「綺麗な泉ですね。」


 まるで絵本に出てくる泉だ。


「村の貴重な水源でな、日照りでも枯れることがないから畑の水がめとしては大切な場所なのだ。」


 枯れずの泉という奴か。


 農業をする人に大切にされてきたのだろう。


 ゴミもないし綺麗な泉だ。


 森の中なのにコンコンと水が湧き出ており、泉の周りには花が咲き蝶が飛んでいる。


 おとぎ話に出てくるような泉だな。


 ユニコーンとか水浴びしてそう。


「おそーい、待ちくたびれちゃったよ。」


 泉のほとりでドリアルドが横になっていた。


 昼寝でもしていたのだろうか。


「お待たせして申し訳ありません。」


「ディーちゃんはやっぱり怖くて恥ずかしいから出てきたくないって。」


「そうですか、それは困りましたね。」


 話が聞けないのでは詳しく調べようもない。


 とりあえず周辺だけでも見て回るか。


「シルビア様は泉周辺の調査を。エミリアは魔法関係の痕跡がないか調べてもらえますか。」


「わかりました。」


「まかせておけ。」


 魔力を必要とする何かがここにきているのは間違いない。


 実際に被害が出ているし村人やウェリスの部下もよくわからない塊を確認しているわけだし。


 問題は何で魔力を欲しているのかという事だ。


 何か特殊なことに使うのか、はたまた魔法使い関係の人が私欲で取りに来ているのかもしれない。


 でも後者なら人の姿であるはずだし、スライムのような形状というのが引っ掛かる。


 使い魔でも使役しているのだろうか。


 泉の周りを歩いてみても変わったところはない。


 オオカミの足跡らしきものが泉近くまで残っていたが、彼らだって生き物だから水ぐらい飲みに来るだろう。


「黒いブヨブヨしたやつは定期的に来ていたのかな。」


「さぁ、ディーちゃんが言うには毎日じゃないみたいだけど。私が見たわけじゃないから知らな~い。」


 聞いた俺が悪かった。


 ドリアルドは暇そうに泉に足を入れてパシャパシャと遊んでいる。


 もうすぐ夏だ、水遊びが気持ちいいだろうな。


 水着とかってあるのかな。


 エミリアとシルビア様の水着姿見てみたいなぁ。


「おやおや、シュウちゃんがよからぬことを考えてるぞ。」


「そんなことないよ。」


 慌てて否定する。


 顔に出ていただろうか。


 それとも気配だろうか。


 さすが精霊だな。


 ポケットに手を突っ込み情報を整理する。


 魔力を奪うなにかは確かに存在するが毎日は来ない。


 それはスライムのような形状をして何かしらの理由で魔力を欲している。


 追い出したり拒否したりできなかったってことはよっぽど怖かったんだろうな。


 情報の少なさにため息をつく。


 先ほど荷物を運んだ時に腰を悪くしたのか少し痛い。


 昨日体を拭いてくれたように、エミリアにマッサージをお願いしたらしてくれるだろうか。


 エッチなマッサージではないのであしからず。


 ポケットから手を出したその時、先ほどしまっていた緑色の石がポケットから転がり泉の中に落ちてしまった。


 石はどんどん深く沈みとたんに見えなくなってしまう。


 思ったよりも深い泉のようだ。


 まぁ、ただの石だしいいか。


 斧だったら有名な女神さまが出てきたりして。


 なんて思っていた時だった。


 突然泉の水が膨れ上がり、水が人の形を形成しだした。


「あれ、ディーちゃんどうしたの。」


 水は形を変え人の姿を形どる。


 ドリアルドよりも年上、女子高生ぐらいの少女の姿を模した水が現れた。


 この水がウンディーヌなのか。


「この石は貴方が落としたの?」


 手には先ほど落とした緑色の石がある。


 まるでおとぎ話のようだ。


 ここは正直に言わないとね。


「それは私が落とした石です、申し訳ありません。」


「貴方がドリちゃんの言っていたシュウちゃん?」


「その通りです。はじめまして、イナバシュウイチと申します。ウンディーヌ様でお間違いないでしょうか。」


 まずは自分から名乗るだったよな。


「私はウンディーヌ。貴方を見たことがある気がするの。」


 いきなり新手のナンパだろうか。


 残念ながらこんなに可愛い女子高生とはお近づきになった記憶はないのだが。


「恐れながら私には覚えがございません。」


私たち(・・・・・)のどれかが貴方を見た気がするの。」


 私たちってどういうことだ。


 ウンディーヌは緑色の石と俺を交互に見つめている。


 カギはあの石だ。


 思い出せ、どこで手いいれた。


 サンサトローズか。


 それとも村のどこかだろうか。


 違うそうじゃない。


 水の精霊がみているということは水のある場所だ。


 水のある場所。


 わかった!


「それは渓谷の奥の泉で拾った石です。もしかしたらその場所でお会いしたのかもしれません。」


 出会った記憶はない。


 あの時は石を拾ってすぐ建物の中に呼ばれて一悶着したはずだ。


 誰とも会っていないと思うのだが。


「あそこにいた()が貴方を見ていたのね。」


「どういう事でしょうか。」


「私たち精霊は1人じゃなくていろいろな所にいるんだよ、別の場所にいても私は私。私が見たモノは別の私も知っているし、別の私が聞いたことは私も聞いている。シュウちゃんにはちょっとむずかしいかな。」


 自分がたくさんいる。


 別の自分が得た経験値は自分の物になるし、自分の経験値は他人の物になる。


 別々であっても全ては同じ一人という事か。


「全ての森や水にいる二人は別々だけど中身は同じという事かな。」


「すごいすごいその通り。さすがシュウちゃん頭良いね。」


 頭はよくないんだけど、理解力はあるつもりだ。


「あの時の貴方は優しそうだった。今の貴方も優しいの?」


「貴方に危害を加えるつもりはありません。お話を聞きたいだけなんです。」


「怖い塊が私の大事なものを奪っていくの。」


「存じております。」


「貴方が私を助けてくれるの?」


 可愛い女子高生におねだりされている気分だ。


 ドリアルドだと幼過ぎるがウンディーヌぐらいだと意外に行けるかもしれない。


 いかんいかん。


 相手は精霊様だ。


「お手伝いできることがあれば仰ってください。ドリアルド様からもお話は聞いておりますので。」


「ドリちゃんが連れてきてくれたのね。」


「だってディーちゃんのお願いだもん。ディーちゃんの困りごとは私の困りごと、だって友達でしょ。」


「私はドリちゃんのお友達。貴方は私のお友達になってくれるの?」


 お友達になりたいわけではないんですが。


 でもお近づきにはなりたいかな。


 いや、まてよ。


 浮気したら命亡くなるんだっけ。


 嫁が二人いる時点でダメか。


「ウンディーヌ様が認めてくださるのであれば喜んで。」


「この石は誰かに渡す予定なの?」


 先ほど落とした石を大事そうに見つめている。


 エミリアに渡そうと思って持って帰ってきたことをすっかり忘れていた。


 今まで忘れていたんだし別に必要ないな。


「渡す予定はございません。よろしければウンディーヌ様にプレゼントいたしますよ。」


「私に、くれるの?」


「おいやでなければ。」


「嬉しい・・・。」


 たかが緑の石一つでこんなに喜んでもらえるとは思っていなかった。


 石だよ。


 そんなにうれしいのかな。


「ディーちゃんシュウちゃんにメロメロになっちゃったじゃん。さすが色男だね。」


 そんなつもりはないんですけど。


 え、そうなの?


 今のやり取りのどこにそんなフラグを立てる場所があったのかむしろ教えてほしい。


「貴方は私の大切なお友達。私のお願い聞いてくれる?」


「私にできる事であればお手伝いさせてください。黒い塊を見た時の話を聞かせていただいてもよろしいですか。」


「怖いけど、貴方とディーちゃんが一緒なら大丈夫な気がするの。」


「シュウちゃんは特別(・・)だから大丈夫だよ。」


 何がどう特別なのか教えていただけますでしょうか。


 何はともあれ話を聞かせてもらえるようになったらしい。


 ウンディーヌの俺を見る目が少し怖いのだが、大丈夫だよね。


 大丈夫だと思いたい。


 ちょっとヤンデレっぽいし。


 背中刺されないように気をつけなきゃ。


「黒い塊がね・・・。」


 ウンディーヌが少しずつ話を始めた。


 これで何かヒントがつかめるといいんだけれど。


 しかし精霊ってみんな幼い外見なのかな。


 ドリアルドは中学生でウンディーヌは高校生。


 あれ、女子高生ってことはもう干支一回り以上年下なのか。


 年をとったなぁ。


 女子中学生と女子高生に囲まれる中年サラリーマン。


 見た目がヤバイ。


 犯罪だな。


 逮捕される奴だな。


 現代じゃなくて良かった。


たくさんのアクセスありがとうございます。

ブックマークもありがとうございます。


まあまだへたくそな文章ではありますがすこしずつ仕上げていきますので、

ゆっくりとおつきあいください。


評価感想いつでもおまちしております。

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