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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第二章

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ドキ!男だけでの作戦会議(ポロリはないよ)

 男三人でテーブルの上に広げられた地図をにらむ。


 よかった、ビニ本とかじゃなくて。


 まるで中学生の集まりみたいになるところだった。


 全員オッサンだけど。


「昨夜の作戦後ウェリスたち敗残兵の処遇を話し合いました。部下はすべて10年の条件付き勤労奴隷へ落とすことで決まりました。通常であれば死罪の所ですがウェリスに強制されていたという事情に考慮して刑を軽減しております。」


 命は助けるという約束は守られたようだ。


 条件を満たせばまた普通の身分に戻ることができるのであろう、そう考えると非常に寛大な措置だと思う。


「それで、ウェリス本人はどうなったんですか。」


「盗賊本拠地の場所や兵の配置などの情報提供ならびに襲撃の参加を条件に15年の従軍奴隷として当騎士団に従事するという処罰となりました。同じく通常であれば死罪ですが、シルビア様の恩赦という事で刑を軽減しております。」


「つまりはこれから15年馬車馬のように働けば命ばかりは助けてくれるってことだ。」


 十分すぎる条件だろう。


 本当はあの場所で首をはねられているはずの身だ。


 ウェリスの場合は勤労よりもこの場所でもう一度自分を見つめなおす方がいいのかもしれない。自分がどういう過ちを犯したのか、その原因になった人物がどれだけ偉大かを知るいい機会になるはずだ。


 シルビア様としても自分の手の届く場所に置いておけば安心なのだろう。


 騎士団としては不名誉な事象だが、いい見せしめになるのかもしれない。


 騎士団に抗い裏切るとこうなるぞという良い見本だ。


「十分すぎる恩赦だな。しかしこれでうまい酒が飲める可能性ができたわけか。」


「それを上の2人が許してくれればの話だがな。」


「貴方は騎士団の従軍奴隷の身です、あまり自由があるとは思わないでください。ただ経験と統率力は私としても評価しています。そちらの部分でしっかりと従事していただけるのであれば考えないでもない、ということですよ。」


「厳しいことだ、せいぜいつぶされないように頑張るさ。」


 あれだけのゴロツキを従える器があるんだ、そちらの道を伸ばせば十分貢献できることだろう。


 俺と違って秀でてるところが多いこの二人が羨ましい。


 ただのオタクにはなかなか無理な話だ。


「それで、ウェリスが提供した情報をもとに騎士団はどういう作戦を考えているんですか。」


 最終目標は盗賊団の拠点の破壊と殲滅だ。


 二度とこの町周辺で悪さができないよう叩き潰さなければならない。


「砦の場所と規模についての情報を得て現在斥候部隊が現在地と状況を確認しています。夕刻には戻ってきますのでその情報をもとに殲滅作戦を開始する予定です。」


「休息日最終日で警備は手薄になっているが明日になったらまた通常通りの警備にもどる。可能であれば今晩のうちに襲撃をして片を付けたい。中には砦の管理をしている騎士団上がりのグランドとエルという二人が部下たちを指揮している。休息日で町に出てきている奴を除けば80人はまだ残っているだろう。」


 80人か、かなりの大人数だな。


「砦の防御機能はどうなっていますか。」


「城壁は4m程、中央に門を設置して上から弓で狙えるように作られている。この谷間の入り口を封鎖するように城壁を作っているから他の場所から中に侵入することは難しい。崖の上は狭くなっていて上から攻撃することも侵入することもできない場所を選んで砦をつくったからな。」


 そういって指をさしたのは町から少し離れた渓谷の入り口だ。


 入り口は狭く、奥に行けば行くほど広くなっている。


 奥には水源があるのだろうか、湖のような絵も描かれている。


「300年前までは町の近くまで水を湛える大河が流れていたのですが、その後干上がってしまい今は高い渓谷を残すだけとなっています。しかし奥は大河の名残で地底湖が残り自給自足するには十分な広さを残しています。日当たりはよくないでしょうが籠城されると陥落させるまでにどれぐらいの時間がかかるか。」


「冬の節から準備を続けていたからな、膨大な量の物資がため込んである。城壁は完成し、木材で住居も建設中のはずだ。農村から出てきたやつも多く食糧問題も解決に向かっている。あの二人は本当にあそこに自分たちの国を作るつもりでいるのさ。」


「つまりは、その国を作らせないためにも残された時間は今日しかないという事ですか。正直こちらが非常に不利な状況という事ですね。」


 話だけを聞けばかなり大きな砦のようだ。


 外にいる人間が戻って来ればより難攻不落の砦となるだろう。


 その砦を攻略するために残された時間は12時間ほど。


 正直無理ゲーなんじゃないだろうか。


「騎士団はどれだけの戦力を投入する予定でしょうか。」


「町の治安維持に最低限人数は残さねばなりません。だせて50名という所でしょう。資材に関しては領主様より演習としての許可を賜っていますのでそれなりの武装は持ち出せます。」


「あっちの武装は弓や槍などが多いが中に入れない以上戦う事すら難しい。上から狙い撃ちされるのがおちだろう。それを想定して膨大な数の矢を準備しているからな、夏の節ぐらいまでは打ち続けることができる量があると思うぞ。」


 まずは難攻不落の門をどう開けるか。


 開けた後、砦内へ進行し敵を殲滅する。


 それを成功させる壁は高く大きい。


「城壁を破壊するのは正直難しいようですね。」


「この町の城壁よりも分厚くより高くしてある、門も破壊するのは難しいだろう。時間をかければ可能だが正直できないと思った方が賢いな。」


「何かしらの方法で中から開けるしかないという事ですか。では普段はどうやって中に入るんでしょう。」


「資材や食料を搬入する場合のみ開門し、それ以外はほぼ開くことはない。あるとしたら攻めて出るときぐらいだろう。」


 つまりその門が開くことはほとんどないという事か。


「資材や食料の搬入はどういうふうにしていますか、顔認証や合言葉などはあるんでしょうか。」


「合言葉はないが、俺がいないと開かないようになっているし搬入できる部下も決められている。今回は食料と酒などの物資を買い込んで搬入する予定だったからそれに隠れて侵入するというのも難しいだろう。」


 開いたのと同時になだれ込むというのも難しそうか。


「ウェリスが中に入った後自分で開けに来ることはできないのでしょうか。」


「ウェリスには単独での砦への侵入は認めていません。まだ裏切らないという保証があるわけではありませんので。」


 確かにそうだ。


 口約束だけしてまんまと砦へ戻る可能性もある。


 他の部下の命など、自分の命に比べたら軽いと思っているかもしれない。


 まぁ、こいつに限ってそれはないと思うけど。


「しかし、ウェリスにしかあの門は開けられないんですよね。」


「そのようですね、そこが騎士団としても意見が分かれているんです。シルビア様は信じておられるようですが他の兵の中には反発している者も多く正直難しいと思います。」


「俺としては信じてもらうしかない。あいつらの命を犠牲にしてまで生き残るつもりはないと言ってはいるんだが昨日の今日だ、信じてもらうのは難しいだろう。」


 なんせ昨日の今日だ。


 昨日命を懸けて戦いあった相手をすぐに信じろというのは土台無理な話だ。


 首輪でもつけてしっかり管理できるなら別だが、砦に騎士団の兵士がいくわけにもいかない。


 面が割れておらず信じてもらいやすい職業でなおかつしっかり手綱御握れる人間か。


 うーん、そんな都合のいい人間。


 いるよなぁ。


 1人だけ。


 問題はそれを許可してもらえるかどうかだけど。


 絶対怒るよなぁ。


 次こそは許してもらえないような気がする。


 さてどうするか。


「仮に潜入できたとしてそのあとはどうするつもりですか。まさか門を開けて乱戦なんてバカな事は考えてないですよね。」


「そこが問題ですね、80人全てを相手にするとなると騎士団にも犠牲は出ますし正直割に合いません。地の利が向こうにある以上こちらとしては危険が多すぎる。」


「半分とは言いませんがせめて3分の1ぐらいは人数を減らしたいところですね。」


 籠城戦は相手の3倍の兵力が必要である。


 向こうが80人なら240人。


 50人なら150人。


 ただし、こちらは精鋭集団で相手は半分素人ってことを考えると50人に対して80人いれば何とかなるか。


 あくまで机上の空論だけどあながち外れてはいないと思う。


 相手の数を減らしつつ他にこちらが有利になる作戦を考えなければならない。


「騎士団上がりの2人が砦を回していると言いましたね。残っている80人全員がその二人に従っているのでしょうか。」


 ウェリスのような一種のカリスマのある人間が率いているのではない。


 騎士団上がりというステータスだけで上に立っているだけなのだとしたらかく乱することができるかもしれない。


「俺の部下も向こうに残っているから全員がしたがっているわけではないな。信じて従っているのが50人、他の30人は仕方なく付いて行っている感じだ。そこ以外に行く場所がなくて食い物目当てに残ってるってやつらが多いな。」


 もしその30人を戦力外にすることができるのであれば可能性は少しだが上がってくる。


「ウェリスの部下は何人残っているんですか。」


「14~5人ってところか。もともと俺が始めた盗賊団にあいつら二人が乗っかって来てから話が大きくなってきたんだ。昔から俺についてきていたやつらとは考え方が少し違うんだな。」


「なら、貴方の命令ならその人数は最低寝返ることができるわけですね。」


 もし寝返りが可能であれば相手65人に対してこちらも65人になる。数だけ見ればイーブンだ。


「そうだな、事情を説明すればついてくる奴もいるだろう。全員がっていうわけにはいかないかもしれんが他のやつ同様に命を保障してくれるのであれば可能性はある。」


「それは保証しましょう。こちらに付けば命は取らず、刑の軽減も考えると宣伝すればいいのです。」


「それでも寝返るのは30人、相手にはまだ50人残っています。それにこのためにはまずは門を開けて騎士団が戦いに参加できればという条件が前提です。寝返った人数だけでは他の連中に潰されるのがおちです。」


 80人のうち30人が寝返っても結果は見えている。


 50人が寝返るなら話は別だが、大抵寝返る側は装備もなく不利な場合が多い。


 条件が悪すぎる。


 準備する時間も少なすぎる。


 行き当たりばったりでしなければならないのでは作戦の成功率もたかが知れている。


 こういう時はどう攻める。


 考えろ。


 数あるSRPGをクリアしてきた俺にはできるはずだ。


 無名の人物から三国を統一したことだってあるじゃないか。


 火計か、水計か、兵糧攻めか、どれも時間がかかりすぎるな。


 もっと簡単でなおかつ効果が絶大なものはないか。


 難攻不落の砦を攻略する方法だ。


 過去の偉人はどう戦った。


 何かヒントはないか。


 思い出せ。


「何とかして門さえ開けば寝返った人と共に戦えるんですけど。」


「武器さえあればなんとかなるかもしれないが、門が開かないんじゃ無理だ。」


「しかし、貴方を送り出すわけにはいかないんですよ。」


「俺以外に奴らが開ける方法はないぞ。なんなら一緒に来るか。」


「騎士団副団長が行っても逆に刺激するだけですよ。」


 そうなんだ。


 その門さえなければ話が早いんだ。


 砦の防御のうち90%はその門が占めているといってもいい。


 門さえ攻略できればあとは些細な問題なんだ。


 血は流れるが騎士団の統率と火力があれば十分に殲滅できるだろう。


 強固な門を開けるには


 1、昇って強行突破

 2、潜入して極秘開城

 3、買収して裏切り行為


 この三つが考えられる。


 正直1は論外。


 なら2か3か。


 買収できるかは不透明だが、ウェリス派の人間なら不可能ではない。


 ただそうでない比率が多いわけだし可能性は低めだ。


 となると2か。


 でもなぁ、入るって言っても難しいみたいだし。


 ウェリスと一緒に入るしかやっぱりないか。


「私が一緒に行けば騎士団としては問題ないんでしょうか。」


「イナバ様がですか、確かにそれでしたら団内の否定派も納得するでしょうが昨日といい危険なことばかりをお願いする形になります。乱戦になるわけですし無事で済む保障がありません。」


「それに一緒に来てどうやって扉を開ける。守衛を倒すことも出来ないお前が来たところで何の意味もないぞ。」


「それには考えがあります。問題はそれを誰がするかという事です。」


 思い出した。


 難攻不落の城塞を攻略した過去の方法。


 内部から進入して瓦解させる究極のウイルス。


 そう、トロイの木馬だ。


「それはどういうことですか。」


「この作戦にはウェリスの部下も重要になります。裏切る可能性がなくほかのメンバーの信頼も厚い部下はいますか。」


「怪我をしてないやつで一人いるがどうするんだ。」


「今回は食料物資を砦に運ぶ予定だといっていましたね。」


「その予定だった。夕方にも運び込んでその夜は酒盛りになるのがいつもの流れだ。」


 まさにトロイの木馬作戦と同じ流れじゃないか。


 一度戦うわけではないので実際は違うが、中に潜入するという意味では同じだろう。


「ウェリス達には予定通り物資を搬入してもらいます。ただし、酒と食料のみ武器類はなしです。その際に私が同行し騎士団にばれそうになったがこいつのおかげで助かったという感じで中に入り込みます。そうすれば私が一緒でも怪しまれないでしょう。出来るだけ入り口から意識を離したい所です。物資の保管場所はどこですか。」


「入り口から少し入ったところに倉庫を作っているからそこに運び込むようになっている。」


「私とウェリスは物資搬入後奥で注意を引き、一緒に潜入した部下に他のウェリス派に事情を説明し寝返るように仕向けます。その後守衛を無力化し開城してしまおうという作戦です。」


「しかしそんなにうまくいきますか。一緒に潜入する者達に武器を渡しことはできませんよ。」


 もちろんわかっている。


 裏切る可能性のある物にわざわざ武器を与える人はいないだろう。


「そこで、物資の中に一人隠れてもらいます。本当は複数名が理想ですが物資の関係上難しいでしょう。」


「どこに隠れる。」


「酒樽の中に。」


 窮屈な思いをするがそこは我慢してもらいたい。


「なるほど、そこなら検品の際に怪しまれることもないし上物だと話しておけば手も触れられない。いい作戦だ。」


「ありがとうございます。その後寝返り交渉は部下に中に隠れていた者が守衛の無力化を。ロープか何かを上からたらして外からも進入できれば開門は早期に可能かと思います。」


「開門には門上部の機構を用いている。少し力は要るが3~4人いれば可能だろう。」


 不可能ではなさそうだ。


「それで、わざわざ一緒に来る理由は何だ。」


「お目付け役が必要ですからね、そのついでに今回の首謀者の顔を拝んでやろうと思っているのですよ。」


 ウェリスを信じていないわけではない。


 しかし、相手もなかなか頭を使うようだからウェリス一人では不安だというのが本音だ。


「今の流れだと不確定要素はありますが何とかなりそうですね。いや、むしろそれしか方法がない。相変わらず素晴らしい作戦を考えますねイナバ様は。」


「それしか私には出来ませんからね。他の荒事は後の皆さんにお任せしますよ。」


「荒事は俺たちの専門だ。そうなったときには尻尾を巻いて隅で隠れているんだな。」


 是非そうさせてもらうつもりだ。


 でもなぁ、誰が一緒についてくるかだな。


 そもそも許してもらえるかもわからないし。


 あとはトップの意見を待つだけか。


「ひとまずはこの辺りを軸に話をつめていきましょうか。」


「部下のほうにも話を付けたい、人選は任せてくれるな。」


「そこは信じるより他はないでしょう。」


「ここまでして裏切るようならそこまでの男だったという事ですよ。」


「ひでぇいわれようだ。」


 むさ苦しい男の作戦会議は続く。


 出来るだけ女性二人には休んでもらう必要があるからな。


 もう少しだけ休んでいてもらう。


 しかしあの二人にいったい何があったんだろうか。






たまには色気なしもいいかなと思いました。


でもやっぱりつまらないので女性キャラは偉大だと思います。

次は復帰予定ですのでお許しください。

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