ダンジョンマスターに俺はなる!
最初の終わり方に違和感というか納得できなかったので、
終わりの部分を若干変更いたしました。
明日は夜になったら来る。
夜になったら眠たくなる。
寝たら次の日が来る。
でも、寝る場所がないと寝れない。
寝れないと次の日が来ない。
なんてことはない。
ほっといても次の日は来る。
問題は、次の日を迎えるために必要な屋根と壁がある部屋と暖かい布団がないと言うことだ。
現在ホームレスサラリーマンのイナバシュウイチ31歳独身。
この年でホームレスとか勘弁してほしい。
寝るなら暖かい布団の中で寝たい。
野宿できなくもないが、モンスターのはびこる森の中で寝るとか自殺行為だ。
ハーレムを作る夢半ばスライムに消化されるとか御免こうむりたい。
「この廃屋に泊まるわけにもいきませんし、近くに村や町はないんでしょうか。」
これから作ろうとしている村が近くにあるわけもないが、野宿だけは回避したい。
なんだったら馬小屋でも山小屋でも今は許す。
「確か、一刻程先に村があったはずです。宿があるかどうかはわかりませんが一度行ってみても良いかもしれません。もしない場合は半日歩いた先に少し大きな町があります。そこまで行けば宿がありますよ。」
エミリアは優秀だなぁ。
「ひとまず行くだけ行ってみてから考えよう。今からだと街まで行く前に日が暮れそうだから村に行くしか選択肢がないけれど。」
「それでは、私はこれで失礼しますわ。後はエミリアにお任せしますね。」
「メルクリア様、ありがとうございました。」
自分の役目は終わったとさっさと帰ろうとするメルクリア。
いいよな、帰って暖かい布団があるやつは。
「そうだエミリア。この男に何かされそうになったら私を呼ぶんですよ。すぐに首を切り落としに来てあげますから。」
去り際に何物騒なことを言っているんだこの鬼女。
そ、そんなことするはずないじゃないか。
たぶん。
きっと。
メイビー。
「シュウイチ様は大丈夫だと思います。お優しい方ですから。」
ナイスフォローエミリア、グッジョブ。
「男は狼なのよ。気をつけなさい。」
なんでピン〇レディーを知ってるんだよ。
フリフリと手を軽く振りながら前回のようにメルクリアは去っていった。
次に会うのはいつになるのやら。
ついでに、トトラという先輩に敬礼。
無事に生きて研修を終えることを祈ろう。
「エミリア、メルクリアさんの研修はそれほどに怖いものだったんですか。」
さらっとエミリアに聞いてみる。
とたんに身を固め、震えだすエミリア。
「そ、そんなことないですよ。メルクリア様はお優しい方ですから。」
目が笑ってない。
思い出させてはいけない記憶を思い出させてしまったようだ。
「これ以上は、聞かないほうがよさそうですね。とりあえず、村まで案内お願いできますか。」
「畏まりました。街道を進むだけですので、そんなにかからず着くと思います。」
エミリアさん、同じ手と足が出てますよ。
恐怖を植え付け、人の心を凍らせるメルクリア研修。
やはり、あの人を怒らせてはいけないようだ。
気をつけよう。
「先程スライムにも遭遇しましたが街道でもモンスターは良く出てくるんですか。」
話題を変えたほうが良いな。
とりあえずは情報収集だ。
「よく出てくるわけではありませんが、たまにはぐれたモンスターが出てきます。ダンジョンから離れれば離れるほど頻度は減りますが、森の中にも多数のモンスターが生息していますので、よほど開けた場所でなければ何度かは遭遇することになると思います。」
頻繁ではないが0でもないということか。
「強いモンスターが出てくる場合などもあるということですね。」
「いえ、ダンジョンのご説明のときにもお話しましたが、強いモンスターが発生する為には強い魔力を必要とします。街道や森には魔力があまり満ちていませんので、せいぜいコボレートやモフラビットぐらいです。」
コボルトとモフモフウサギか。
なるほど、確かにそんなに強い敵があふれかえっていたら村なんてすぐ潰されてしまうからな。
かけだしの冒険者でも処理できる程度のモンスターぐらいしか出ないということか。
むしろ危険なのはそれ以外かもしれないな。
「モンスターよりもむしろ盗賊の類のほうが危険ということですね。」
「その通りです。モンスターはそれほど脅威ではありませんが盗賊などが街道に出た場合は命の保障がありません。定期的に自警団や騎士団が見回りをしていますが、治安の悪い場所などでは傭兵を雇ったり商隊を組んで通行するようにしています。」
一番危険なのはモンスターではなく人である。
知恵も知能もあり、道具や魔法を使いこなす。
モンスターであれば荷を置いて逃げても問題はない。
しかし、盗賊の類は荷物を持っていってしまう。
徒党を組み数の力で襲ってくる生き物。
本能のみで生きるモンスターよりも下手に理性と知性を持つ人のほうがよっぽど危険である。
どの世界でも一番危険なのは人であることに変わりはないと言うことか。
「ただ、ごく稀にですが強いモンスターが現れることがあります。魔力が森のくぼ地や地中の魔石などに集まり、それを餌に強いモンスターが生まれてしまうんです。オーグやキュプロス、アウラクネや時にはキマイラなどがでた事もあります。」
オーガ、サイクロプス、アラクネ、キメラ。
ファンタジーでおなじみの中級モンスター勢ぞろいだな。
ある程度レベルが上がると知性がついてくるなんていう説もあるが、知性<力のこれらの皆様には余り関係ない話だ。
街道で出会うリアルサイクロプスとかビビッて声も出ないかもしれない。
出会わないに越したことはない。
ダンジョンの運営、商店の経営、村の開発。
ついでに、自分のレベル上げもしておかなければいけない気がしてきた。
あげれるかどうかわ分からないが、自分の身も守れないようじゃ自分のダンジョンでお陀仏なんてことになりかねない。
「一つ質問なのですが、私もモンスターを倒していけば冒険者のように強くなることは可能なのでしょうか。」
ダンジョンの奥深くに潜るのにレベル1のままというのもおかしい。修練を積めばレベルアップするシステムでないと説明が難しい。
「モンスターを倒すと修練値が増えていきます。ある一定数を超えるとリセットされますが、その際に力や体力・知力や魔力、各々が得意とする部分の力が引き出されていきます。私たちはそれを位が上がると呼んでいます。シュウイチ様の世界でいいますレベルアップですね。」
「なるほど、私も修練値を積めばベルアップも可能ということですか。やはり自分の身は自分で守れないといざダンジョンでモンスターに襲われたときに対処できませんからね。」
「そういうことでしたら心配ありません。ダンジョンは管理者の血を覚えていますのでそこで生まれるモンスターはその血の匂いをする人を襲うことはありません。もちろん、ダンジョン以外の場所では襲ってきますのである程度の修練は積んでいて損はないと思います。」
ダンジョンは主人を覚えるということか。
それはそうだな、自分のダンジョンで襲われて死んでしまったら管理者がいなくなってしまう。
管理者がいないとダンジョンは成長できないわけだから、自分の不利益になるようなことはしないというわけだ。
飼い犬に手を噛まれることはないということは安心だな。
あくまで、自分のテリトリーの中ではの話だが。
先ほどのように盗賊や野生のモンスターに襲われたときはどうしようもない。
自分で身を守るか、自らを守ってくれる護衛を雇う必要があるだろう。
「ちなみに、エミリアはどのくらいの位なのですか。」
「私はまだ駆け出しですので30程です。メルクリア様が80ですので足元にも及びません。」
あの幼女レベル80もあるのか。エミリアの約2.7倍。どのぐらいすごいのかはわからないがとりあえず格上であるのは間違いない。
「魔法使いや戦士など何か職業のようなものがあってそれを鍛える感じなのでしょうか。」
「職業というわけではありませんが、成人を迎えると神託を受けます。そして、その神託に応じたギルドに所属し自らを鍛えていきます。私やメルクリア様は魔術師ギルドに所属していますが他にも戦士ギルド、神官ギルド、商人ギルドなんかもあります。」
「全ての人がその信託に従うのですか。」
「いえ、神託はあくまで神託です。自らがなりたいと思うならば他のギルドでも全く問題はありません。あくまで本人が持つ特性上こちらがいいのではないかという指針のようなものですので。ギルドも多種多様にありますから好きな所で自らを極めていけばいいのです。」
お告げは絶対ではなくあくまで道しるべということか。
そうだよな、お前は盗賊ギルドに入れと言われて入る人なんてあまりいないよな。
自由選択性ではあるが、道を外れた場合は自分の努力次第ということか。
「ちなみに私に神託は降りるのでしょうか。」
もう中年なのだが神のお告げとやらはあるのだろうか。
貴方はハーレムマスターになりなさいとか言われないかな。
「異世界から来られた方に神託は降りたことは今はまだありません。皆さん何かしらの目的をもって呼ばれてきていますので、その目的に応じたギルドに所属もしくは所属せず活動されています。」
「ということは、私は商人ギルドに所属してもしなくても自由ということですか。」
「その通りです。この世界の人は必ずギルドに所属しなければ身分が保障されません。つまり、ギルドに入っていない人は国やギルドの保護下に置かれず法の保護からも外されてしまいます。しかし、シュウイチ様のような転生者の方々は召喚した者がその身分と権利を保障します。そうすることで自由に所属を選べるのです。商人だけでなくほかのギルドに所属することでより多くの知識や技術を習得できます300年前にそうなるように法が改正されたと聞いています。ちなみに、シュウイチ様の身分はわが商店連合とメルクリア様が保障いたしますのでご安心ください。」
ギルドに所属しなければ法の権利も得ることはできない。言い換えれば、所属さえしていればそのギルドが自分を認めて守ってくれるということか。アウトローな人々も何かしらのギルドに所属しているのであれば身分の保障があるということだな。
盗賊ギルドに所属していればいきなり殺されることなく法の裁きは受けられるということか。
結局は盗賊なのだからあまりいい裁きは受けられそうにないが。
そういう所に所属することになる場合はたいていが素行のよろしくない場合が多いから、致し方ないのかもしれないな。
蛇の道は蛇。
汚い仕事が必要な場面もあるのだろう。
世の中綺麗事だけでは生きていけないからな。
「メルクリアさんには頭が上がらないということですか。ちなみに、位に上限などはあるのですか。」
「上限があるということは聞いたことはありませんね。各ギルドにはそれぞれ格があって、魔術ギルドですと、『下級魔術師』『中級魔術師』『上級魔術師』。この三つを超えると『魔女』『錬金術師』『魔装師』『賢者』『大賢者』『薬師』など様々な格を極めていくようになります。魔術師の格を極めて初めて1人前になります。複数の格を極めることもできますので位の高い人ほど多くの格を極めた人となります。」
レベル上限はなく、格つまりはランクを極めれば極めるほど強くなれるということか。
まてよ、つまりは一つのギルドに縛られることのない転生者の身分であれば数多くのランクを極めることができるということか。
つまりはそうやって勇者と呼ばれるようになるんだな。
まずは今できるこの仕事を完遂してしまえば、将来は勇者のようになってモテまくることもできるのか。
とりあえずダンジョンマスターになればいいんだな。
よし決めた。ダンジョンマスターに、俺はなる!
そしてその先には・・・
美女たちが待っているに違いない。
頑張れ自分。
輝かしい未来のために。
「シュウイチ様、村が見えてきましたよ。」
邪な妄想をしているうちにどうやら村に着いたようだ。
「泊まれるところがあると良いんですけど。」
「商店を作る際に村長さんへお話を通しているはずですので、恐らくは大丈夫かと思います。」
ダンジョンが出来たので、商店を作ると約束してあの廃墟だからそううまくいくものだろうか。
若干不安は残るが、後は野となれ山となれ。
あ、せめて屋根のある場所でお願いしたい。
そうこうして着いた村はなんと言うか
今にも襲われそうな殺気に満ち溢れていた。




