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復刻というだけあって簡易化されており、以前の物と違って降下からスタートではなかった。
ヨシナリの視界が「思金神」のユニオンホームから一面の闇へ。
センサーは風の音だけを拾う。 そこそこの時間が経ってはいても激戦を繰り広げた場所なのだ。
少しの懐かしさがある。 暗いだけあって頼りになるのは目視以外の探知項目だ。
レーダーにはしっかりと味方の位置が表示されている。
事前情報通りに何もない場所に全員が固まって配置されていた。
マルメル達の反応もしっかりと確認できているので、まずは合流を――
そんな事を考えているとウインドウがポップアップ。 特に何か操作をした覚えがないにも関わらずだ。
――何だ?
そんな疑問が浮かんだが、表示された内容を見てさっと血の気が引く。
Warning!と赤く光る文字。 ボスが出現したとき等に何度か見かけた表示だ。
反射的にシックスセンスの感度――特に動体関係を最大にする。
同時に遠くにぽつりと光る何かが見えた。
他に気付いた物も居たらしく、あちこちで発砲のマズルフラッシュが瞬く。
速い。 レーザーや無数の弾幕を掻い潜って何かが突っ込んで来たのだ。
僅かに遅れて金属音。
迎撃に出た誰か――識別を確認するとベリアルが唐突に現れたエネミーに仕掛けに行ったようだ。
「いきなりかよ!」
「視界、開けます」
ヴルトムが叫び、フカヤがパスパスと照明弾を連射。
本来なら敵を呼び寄せるので余り推奨されない行動だが、こんなイレギュラーな状況なのだ。
まずは何が起こっているのかを多くの人数に知らせる事が重要と判断しての事だろう。
空が明るく照らされ、現れた何かの姿が明らかになるのだが――
「うっそだろ」
思わず呟く。 それは見覚えのある機体だったからだ。
悪魔のような形相が特に目を引く人型機体。 以前の防衛イベントで現れた機体だ。
頭部のデザインは同じだったが、装備構成が変わっていた。
推進装置取り払われており、短剣を両手に一本ずつ。
周囲の重力変動から光学系の推進装置から重力制御に切り替えたのだろう。
何かしらヤバい敵が現れると身構えてはいたのだが、開始数秒で現れるのは想定外だった。
ポップアップによる警告がなければ犠牲者が出ていたはずだ。
「貴様か! 我が闇に抗うというのなら何度でも深淵の底へと沈めてやろう」
敵機の両腕が霞むがベリアルは驚異的な反応で両腕をブレードに変化させて受けるが、手数も武器の強度も相手が上だ。 一撃、二撃と受ける度に押し込まれ、ブレードが砕かれるがそれで充分だった。
「最初から突っ込んで来るなんていい度胸してるやん」
「テメエには前にやられたからなぁ! ここで借りを返してやるぜ!」
「多勢に無勢だが悪く思うなよ!」
ふわわ、アドルファス、カカラが即座に仕掛けに行った。
カカラが弾幕を張ってベリアルへの追撃を止め、アドルファスがドローンを展開して退路を塞ぐ。
挙動を制限した所でふわわが斬りに行ったのだが、敵機は紫電を纏った短剣で正面から受けて立つ。
太刀による上からの大上段の振り下ろしを短剣で受け止めた敵機はそのままふわわともつれるように地上へ。 あの短剣から放たれる紫電は敵機をスタンさせる機能があったはずだが、ふわわの強化装甲が発生させる磁界によって届いていない。
地面に激突する直前に敵機が蹴りを放ち、ふわわが躱す為に僅かに下がる。
両者とも着地。 同時にタヂカラオがエネルギーリングを連射し、回避先を狙ってポンポンとまんまるが援護射撃。 爆発的な加速で直進して掻い潜るが、読んでいたマルメルとアリスが十字砲火。
敵機はふわわの磁界に似たフィールドを発生させてマルメルの突撃散弾銃の弾丸を逸らし、アリスのレーザーは短剣を立てて斬った。 短剣を立てて斬った!?
ヨシナリは思わず二度見してしまう。
「レーザー斬るとかありかよ!?」
マルメルが悲鳴を上げるのを聞きながらヨシナリもアシンメトリーで銃撃。
実体弾をばら撒く。 こいつの反応はふわわと同等かそれ以上だ。
下手に狙ってもかすりもしない。 ならばら撒いて動きを制限した方がいいと判断したからだ。
初手で厄介な相手が出たと思ったが、その反面メンバーの損耗がゼロの状態で仕掛けてくるとは舐めているのだろうかとも思ってしまう。
――いや、違う。
前に戦った相手の中身が同じならそんな思考形態ではないはずだ。
最初に抱いた印象は格下をいたぶる傾向にあるサディスト。
そんな奴がこんな状況で仕掛ける? あり得ない。 絶対に何か狙いがあるはずだ。
――何だ? 何を狙っている?
逆の立場なら分断を狙うが、この状況でそんな真似ができる訳がない。
なら何だ? 相手の挙動から少しでも情報を集めろ。
分からない事だらけだが嫌な予感だけはどんどん強くなる。
「ヨシナリ君。 アレ、前に言ってた奴やんな?」
「そうです。 防衛イベントの時に出くわした奴です」
ふわわの質問の意図が分からなかったがそのまま応えると彼女は訝しむような様子で疑問を口にした。
「なーんか、本気やないかんじやなぁ」
「――と言いますと?」
「積極的に仕留めようって感じがしないんよ」
すれ違い際に次々と味方機を切り刻んでいる敵機にあれでかよとは思ったが、納得もしていた。
ヨシナリの感覚的にも本気でやっていない訳ではないが、引っかき回す事を主な目的としている印象を受ける。 だからこそ分からないのだ。 敵の意図が。
「あいつの相手はランカーに任せて下がりながら援護! 序盤から数を減らされてたまるかよ!」
ヴルトムが銃撃しながら味方に後退を指示していた。
良い判断だ。 下手に突っ込ませても被害が拡大するだけだ。
ここは戦えるメンバーに任せて――不意に気が付いた。 後退する以上、ある程度の密集が起こる。
敵の狙いはこちらを一網打尽にする事か? 正解と言わんばかりに上空に無数の反応。
いきなり現れた所を見るとこちらの索敵範囲を読んで外から撃ち込んで来たのだ。
「ミサイル! 手の空いている奴は迎撃!」
ヨシナリの警告が飛ぶ前にアリスとまんまるのレーザーが空を薙ぐ。
僅かに遅れてカカラとアドルファスも上空に弾をばら撒く。
手が塞がった味方の穴を埋める為にニャーコとシニフィエが前に出た。
最も厄介な敵機はベリアル、ふわわを軸にユウヤ、ケイロンがフォローに入っている。
あのベリアルですらいつまでも打ち合っていられないのだ。
それだけの人数をかけなければ止められなかった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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