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全員参加かは微妙なのだが、ヴルトムの見立てでは300前後は集まるとの事なので推奨人数には届かないが、それだけいればクリアは可能のはずだ。
それにタヂカラオ達も何人か連れて来るとの事でもあるが、どう頑張っても400には届かない。
「400かぁ、サーバー対抗戦をやった後で何を言ってるんだと思うけど大人数ってなんか緊張するなぁ」
「まぁ、今回は俺らの仕切りで集める形になるからちょっと緊張するよなぁ」
言いながら互いにフィギュアを操作して戦闘を続行。
ヨシナリの操作機体が市街地のビルを盾に器用に銃撃するが、アルフレッドが砲撃で頭を抑えに来た。
「――にしても何でまたこのタイミングで復刻戦に手を出そうと思ったんだ? 例のワールドレイドってのが近いからそっちの準備に力を入れるんだと思ったぜ」
「これも準備の一環だよ。 例のワールドレイドって想像するに侵攻戦、防衛戦の延長で、それをサーバー単位でやるって感じだと思うんだ。 だから、やっといて損はないよ」
これ動かし辛いなと思いながら他の機体を操作して支援射撃。
「サーバー対抗戦でもウン千万規模の人数が来てたのに今度はその人数相手にエネミーを繰り出すのか。 やべぇなぁ」
「流石に負荷が高いのか交代制って形だけどな」
「あぁ、そう言えば入れ替えでやるんだったっけ?」
アルフレッドの砲撃で抑えつけられている間にマルメルが数を減らしに来る。
ヨシナリはあぁくそと思いながらどうにかリカバリを図ろうと機体を後退。
「そうそう。 最初のサーバーが入って途中で次が入って少し後に最初に入ってた所が離脱。 んでその後に最後の一つが入って――って感じだな」
ツガル達との話でも触れたがスコアアタックに近い形になるはずだ。
「まぁ、今の所は情報もあんまりねぇし、似たようなミッションで予行演習って感じか。 ならさ、侵攻戦の復刻はどうよ? どう攻めるんだ? 前みたいに地下から崩す感じになるのか?」
「いや、マップの規模がかなり縮小されてる関係で地下の穴が塞がってるらしい。 だから、今回は正攻法だな。 中枢への直通の施設を落としてそのまま攻め込むって感じになると思う」
「前の時ってそれが面倒だったからショートカットを狙ったんじゃなかったか?」
「それもあったけど、本音を言うと他の連中を出し抜きたかったってのもあった」
ヨシナリの言葉にマルメルは笑う。
「いやぁ、全員出し抜いて中枢に一番乗りは気持ち良かったなぁ」
「だろ? 次のイベント戦でも似たような事ができるなら是非ともやりたいものだな」
しばらくの間、互いに操作に集中して無言。
ただ、マルメル側はアルフレッドの支援があるのでヨシナリ側が劣勢だ。
「そういやさ。 Bに上がったぜ」
「マジ? やったなぁ。 ジェネシスフレームまであと一歩って感じだな」
「ワールドレイドの後がいまいち読めないから何とも言えないけど、どっかでランク戦に集中してAへの昇格を狙いたいな」
「そっかー。 ヨシナリもAが射程に入ったかぁ。 割と最初から一緒にやってる身としては来る所まで来たって感じだなぁ。 上がったらすぐに作る感じか? ってか金あんのか?」
「作るまでだったら何とかなるよ。 後は修羅の巷で戦って這い上がるさ」
ヨシナリが笑って見せるとちょうど操作フィギュアが全滅した。
切りがいいなと立ち上がる。
「今日はログアウトか?」
「いや、もうちょっとランク戦やったらそのまま落ちるよ。 復刻戦も頼むぜ?」
「あぁ、またぶちかましてやろうぜ相棒!」
マルメルに応と答えてヨシナリはランク戦へと移動した。
エンジェルフレームがレーザーライフルで薙ぐような銃撃。
対峙するオビディエンスフレームは最小の動きで躱す。
操作しているプレイヤー――ホーコートは淡々と、そして無機質にバトルライフルで応射。
大きな挙動な旋回ではなく、小刻みに噴かす事で次の動作を読み辛くするテクニックだ。
エンジェルフレームの移動先を読んでバースト射撃。 被弾しながらもどうにか捕まえようと肉薄する。
ホーコートは特に慌てた様子もなくマシンピストルにスイッチ。
相手の攻撃動作に合わせて引き金を引く。
至近距離で吐き出された銃弾がエンジェルフレームを穴だらけにして試合終了。
「うーん。 やっぱりBランクまでなら普通に勝てるわねぇ」
それを見ている女――ロッテリゼが一人。
他に可視化されたウインドウには様々なグラフなどが表示されている。
確認しているのはホーコートの戦績だ。 ランク戦の戦績は決して悪くない。
C以下のプレイヤーには勝率七割、B以下は五割、Aは一割から二割。
――微妙ねぇ。
これが普通のプレイヤーならそこそこ以上に見込みがあるのだが、このレベルのMODを入れてこれだとあまりいいとは言えない戦績だ。 ベースの質が悪すぎる事もあって盛りに盛ってこの程度。
最低限、あのメンバーに埋もれて消えない程度の総合力にはなったかもしれないが、まるで足りない。
プレゼンの効果はあったのかなと他のメンバー――特にヨシナリの数値を見ると不思議な事に下がっていた。
それだけではなく「星座盤」全員のシミュレーションの数値が下がっている。
1%以上あったマルメルですら半分以下になっていた。 これに関しては本当に理解できない。
MOD使用に関しては察しており、罰せられていない時点で運営が容認している事は明らかだ。
――にも関わらず興味、関心を抱かないのは彼女には解せなかった。
この高度な文明社会で人は利便性を求めるのは当然だ。
なら、MODを使う事に何の抵抗があるのだろうか?
家電と同じだ。 飲み物を氷水に漬けるより冷蔵庫に放り込んだ方がいいに決まっている。
「さっぱり分からないわねぇ……」
『それはあなたが共感性に欠けるからではないのかな?』
不意に聞こえた声に振り返るとシルエットだけのアバターが一体。
姿ははっきりしないが、声を聞けば誰かは分かる。
「あら? アメリアじゃない。 わざわざどうしたの?」
『それはこちらのセリフよ。 君の担当はインドサーバーだろう? どうして日本サーバーのユーザーデータのアクセス履歴に君の名前が残っているのかな?』
「権限的には問題ないはずよぉ。 MODのテスト運用とデータ収集の一環かしら?」
アメリアはちらりと可視化されたウインドウを一瞥。
ホーコートの戦闘履歴や各種数値が表示されている。 それを見て小さく鼻で笑った。
誤字報告いつもありがとうございます。
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