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ただ、狙ってくるタイミングさえ分かれば裏をかく事は可能。
エネルギー弾を回避。 追撃で飛んで来たミサイルをバレルロールで躱しながら変形。
そうする事で相手の予測位置よりもやや手前で止まり、思惑を外せるのだ。
キマイラの強みは変形時の直線加速と思われがちだが、ヨシナリに言わせると真髄は可変システムにある。 変形する事で一気に減速、制動をかける事で相手の意図しない挙動で惑わす。
これの良い所は変形してから即座に攻撃に移れる事だ。
――かなり練習したけどな!
バレルロールで回避からの変形。 そのまま攻撃へ移行の動作は体に染みつくまで練習した。
アトルムとクルックスは抜き撃ちに適している事もあって初見なら簡単に躱されないと自負している。
バースト射撃。 敵機は慌てて回避に入ったが、一発被弾する。
これでいい。
エネルギーウイングを用いた旋回はかなりのスピードで行う事もあって一度でもバランスを崩すと立て直しが少し難しいのだ。 慣れているプレイヤーだと揺らぎは小さいがそうでないと露骨にバランスを崩す。
目の前のBランクは後者だったようだ。 本来なら綺麗な弧を描くはずの軌跡が大きく乱れていた。
挙動を制御できていない証拠だ。 こうなれば後は楽勝。
敵機は大きな減速を強いられるので、そこを狙えばいい。
特に高機動機は耐弾性能は高くない事もあってアトルムとクルックスでも充分に仕留められる。
二挺拳銃によるバースト射撃の連打で敵機は瞬く間に穴だらけになり、そのまま爆散。
試合終了。
リザルトを確認すると――Bランクへの昇格を示すウインドウがポップアップ。
ヨシナリはふぅと息を吐く。 ようやくだ。
あと一つでAランク。 ジェネシスフレームに手が届く。
良しと拳を握るとそのままユニオンホームへと戻る。
ランクアップした事もあって少し機体を見直そうと思ったからだ。
ホームのリビングに出るとマルメルがアルフレッドと戯れていた。
何をしているのかと思ったらテーブルに巨大なジオラマが広げられており、トルーパーのフィギュアがいくつも配置されている。
「おっす、何をやってるんだ?」
「おーっす。 いや、アルフレッドと動きの擦り合わせをな」
「擦り合わせ?」
「おう、こいつ凄いんだぜ! まぁ、見てろって」
マルメルがウインドウを操作すると11機のソルジャーフレームのフィギュアが敵味方に分かれて再配置される。 装備構成から「星座盤」のメンバーを意識した作りなのが分かる。
アルフレッドが可視化されたウインドウをタッチすると支援機らしき機体が後方へ移動。
それを見てヨシナリの脳裏に理解が広がる。
どうやらマルメルはフィギュアを使ってアルフレッドの行動傾向を俯瞰的に見ようとしているのだ。
フィギュアは実機ほど正確な動きはしないが、簡単なポージングや挙動を取らす事は可能だった。
アルフレッドが動かした機体は狙撃仕様――恐らくはグロウモスをイメージした機体に張り付いている。 マルメルはその後、条件を変えてアルフレッドにウインドウを操作させていた。
グロウモスが居ない場合、撃破された場合等々。
「へぇ、面白いな」
「だろ? こうしてアルフレッドが見えない所で何をしてるかの参考にするんだよ」
マルメルはアルフレッドを膝に乗せて撫でながら笑って見せる。
こうして見るとアルフレッドの挙動は分かり易い。
まずはグロウモスの補佐に入って情報支援、または彼女を狙う敵機に対しての牽制。
これは高速戦闘が難しいという事もあるが、搭載されているシックスセンスを活かす為でもある。
面倒な情報処理を代行する事でグロウモスの負担を軽減しつつ、いざという時には彼女を守る役目も担う。 グロウモスが居ない場合は戦場から少し離れた位置での火力支援に軸足を移す。
「こうして見ると堅実な動きだな。 ――にしても急にどうしたんだ?」
「いや、俺なりに思う所があってさ。 後ろの動きをもうちょっと意識したいなって思ってよ」
マルメルはウインドウを操作。 ジオラマの配置が初期に戻る。
「ほら、俺ってこれまで後ろをあんまり意識してなかったかなって思ってよ。 グロウモスさんとかアルフレッドとかの動きをもっとしっかり知っておくとまぁ、役に立つかなって」
マルメルなりに思う所があったのか、呟くようにそう口にし、ウインドウをアルフレッドの前へと持って行った。 ぺたりとアルフレッドが可視化したウインドウに触れると戦闘が開始され、フィギュアがやや硬さのある動きで動き出し始める。
ヨシナリは何も言わなかったがいい傾向だとは思っていた。
自発的に頑張っているマルメルを見ると自分も頑張ろうといった気持ちになれるからだ。
「そういや、ポンポンとかと打ち合わせだったんだろ? どうだった?」
「ん? 別に面白い事はなかったぞ。 全員、事前に参加するって所で話は決まってたから、タヂカラオさんから『思金神』がクリアした時の情報を共有したって感じだな」
「あぁ、そりゃやってるよな。 前の時みたいにヤバい奴が出たって話はあったのか?」
ヨシナリはウインドウを操作。 敵側の機体を操りながらあぁと頷いて見せる。
「やっぱ、規定人数以下なのがトリガーっぽい」
「マジかー。 って事は出る可能性が高いって事かよ。 『大渦』入れても500いかねぇだろ?」
「あぁ、他も仲間を連れて来るって話だけど、一番参加人数が多い『大渦』も350ぐらいっていってたからなぁ」
マルメルもウインドウを操作。 味方側を操作してアルフレッドを援護し始める。
「ってか増えたなぁ。 前って100ちょっとぐらいじゃなかったか?」
「ほらあそこって初心者をターゲットにして勧誘かけてるから頭数は簡単に増えるんだよ。 ――まぁ、定着するかは微妙ってヴルトムも言ってたけど、組織として大きくなっていくのはやってて気持ちいいってさ」
「へー、大した物だなぁ。 俺はそんな人数管理できる自信ねぇよ」
アルフレッドがぺちぺちとウインドウを叩いて操作速度を上げる。
マルメルは小さく笑うと膝に乗せたアルフレッドを撫でまわす。
「まぁ、お陰で簡単に頭数を集められるんだ。 ありがたく手を貸してもらおう」
実際、ヴルトムは上手くやっている。
去る者を追わないスタイルで出るのも入るのも気楽、気軽を売りにする事でハードルを下げるのだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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