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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 並んだ的が撃ち抜かれて次々と破壊される。

 場所はトレーニングルーム。 グロウモスは黙々と的を撃ち続ける。

 考えるのはさっきの戦闘。 彼女からすれば非常に悔いの残る内容だった。


 何故なら最後のタカミムスビとの戦いに参戦する事すらできなかったからだ。

 グロウモスの役目は霧ヶ峰の排除。 その為、最低限の仕事はしたのだが、勝つ為には足りない。

 少なくともあそこは脱落していい場面ではなかった。 


 ――だけど――


 今度はドローンを飛ばし、反射を用いて的を射抜く。 

 撃つ、撃つ、撃つ。 次々とビルの陰に隠れた的をエネルギー弾が射抜いていく。

 何度脳内でシミュレーションしても霧ヶ峰を無傷で処理できるビジョンが浮かばなかった。

 

 どう頑張っても最後の一撃は貰ってしまう。 

 それが分かっていたからこそ、アルフレッドに奇襲を頼んだのだ。

 今の自分では霧ヶ峰に勝つのは難しい。 


 そう冷静に結論を出せたから仕留められたとも言えるのだが、こちらにはアイロニーが居た。

 彼女の修復能力を用いれば生きてさえいれば何とかなったかもしれないのだ。

 大破ではなく、何とか中破に抑えられれば――いや、下手に守りに行くと警戒される。


 思考とは裏腹にグロウモスの手は無機質に引き金を引き、的を次々と破壊していく。

 なら、アルフレッドを行かせずに正面からの撃破を狙うべきだった? あり得ない。

 あれはグロウモスを仕留めたと思った霧ヶ峰の意識に生じた隙を物理的に衝かないと成立しない。


 霧ヶ峰とのマッチアップは前提である以上、相手を変えるといった「たられば」は意味がない。

 何度繰り返しても霧ヶ峰を生きて仕留めるビジョンが浮かばなかった。

 

 「――はぁ」


 溜息を吐く。 

 今度はドローンを二つにして的を狙うが、エネルギー弾は的から僅かにズレた位置に着弾。

 ダメだった。 最終的に自身の技量不足、機体のスペック不足に落ち着いてしまう。

 

 前者は少し長い目で見なければならないが、後者に関しては分かり易く強さを盛れる。

 彼女は既にBランク。 このまま勝利を重ねればAランク――ジェネシスフレームが見えてくる。

 ジェネシスフレーム相手に既存機で戦うのは常にスペックの不利を背負い続ける事になるのだ。


 その辺りを改善しないと常にスペック差で負けたと自分に言い訳を許してしまいそうになる。

 ヨシナリの手前、そんな格好の悪い事は出来ない。 

 何故ならヨシナリからするとグロウモスは愛しい対象。 つまりは偶像に近いのだ。


 恋愛という物は本当に奇怪なもので、一度でも患ってしまうと「恋愛フィルター」なる謎の美化現象が発生するらしい。 最近、読み始めたラブコメ漫画で見たので間違いない。

 ヨシナリはグロウモスに対して絶対的な信頼を預けている。 


 惚れている度数で言うなら4000%ぐらいだろう。 そんな彼女が無様を晒すとどうなるか?

 ヨシナリはきっとこう思うはずだ。 「あれ? 思ったほどじゃなくね??」と。

 そうなるとグロウモスに対しての関心が若干ではあるが薄れるのではないか?


 だが、4000%という絶対的な数値は簡単には揺るがないが、その心にできた僅かな隙間からゴキブリのように侵入し、居座って自分の物へと変えようとしているのが泥棒猫と呼ばれる人種だ。

 奴らの恐ろしい所は瞬間的な快楽と浮気、不倫という禁忌を冒す緊張感によるスリルを用いて対象を後戻りできない領域へと誘うのだ。 


 ヨシナリと言えど生物学的には雄なのだ。 泥棒雌猫のフェロモンに血迷うかもしれない。

 エロ漫画で死ぬほど見たシチュエーションだ。 泥棒猫共は揃って同じ事を言う。

 

 ――身体は正直だ、と。


 想像してグロウモスの理性が沸騰するのを感じる。 スコーピオン・アンタレスを二連射。

 エネルギー弾は二機のドローンを反射して的を射抜いた。 それを見て思考が止まる。 

 当たった事もそうだが、それ以上にある事を思いついたからだ。 


 「フヒ、ど、泥棒猫共め。 侵入する隙間なんて絶対にあげなぁい」


 そう言ってグロウモスは射撃姿勢を変えた。


 

 ユウヤの散弾砲が火を噴く。 狙ったエネルギー式の散弾は標的を捉えられずビルを破壊。

 舌打ちして背の大剣を一閃。 敵機を捉えたかと思えば既に背後。

 背後からの刺突を腕で受ける。 そこに居たのは影のような機体――プセウドテイだ。


 「煉獄の化身よ。 精彩に欠けているな。 気に病んでいるのか?」 

 「それはお前もだろうが」


 電磁鞭を一閃。 ベリアルは転移で躱して近くのビルの上へ。

 結局、敗因を考えてもテンションが下がるだけだと判断し、ベリアルを誘ってこうして模擬戦を行っていた。 センサー系の感度を上げて転移の兆候をすぐにキャッチできるようにする。


 ベリアルの姿が消失。 大剣をハンマーに変形させ、下から掬い上げるように振り上げる。

 転移先を捉えたがベリアルはすり抜けるように回避。 

 戦い方を組み立てながらも考えるのはさっきの戦いについてだ。 


 ニニギを撃破できたのはいい戦果と言えるが、個人戦ではなくユニオン戦である以上はチームが全滅したので負けなのだ。 そう負け、敗北。 

 しかもタカミムスビには明らかに余裕があった。 つまりは舐められた上でも敗北だ。


 「悔しいか? 俺もだ」

 

 見透かしたようにベリアルの言葉に何も返せなかった。 その通りだったからだ。

 

 「あぁ、あのクソ野郎のニヤケ面に一発喰らわせたいのもあるが、大見え切って無様に負けた自分自身に腹が立ってしょうがねぇ」

 

 紛れもない本音だった。 

 タカミムスビに対して腹が立っていないと言ったら嘘になるが、真っ当な勝負である以上は敗北の責任は当事者であるユウヤ達自身の物だ。 


 これでも優勝を視野に入れた強化も行ったのだが、まるで足りていなかった。

 性能差の暴力で圧倒されただけと慰めたい所ではあるが、タカミムスビはインドのカンチャーナと違いしっかりと自身の機体を使いこなしていた。 


 ――言い訳の余地はない。


 「なぁ、厨二野郎」

 「なんだ。 戦友よ」


 ユウヤは散弾を二連射しつつ距離を取るがベリアルは転移を絡めた旋回で回避。

 

 「どうすれば勝てた?」

 「ふ、何故負けたかを論ずるよりは有意義、か」


 ベリアルがエーテルの弾をばら撒くのを大剣を盾に防ぐ。

 肉薄し、ラッシュをかけて来るプセウドテイの爪を受けた後、拳で反撃。

 受けに回るとそのまま押し切られるからだ。 


 「――俺にも分からん。 だが、はっきりしている事もある」

 「何だそれは?」

 「答えは戦いの中にしかないという事だ!」


 まぁ、そうか。 結局の所は仮想とはいえ、体を動かさないと見えない物ある。

 余計な考えや沈んだ気持ちを追い払う為にもここは目の前の戦いに集中する時だろう。

 ユウヤは雑念を追い払い目の前の戦いに意識を傾ける。 今はこの戦いを楽しむべきだからだ。

誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
ヨシナリからの重い期待に応えないといけないモスさんも大変ですね(遠い目)
モスちゃん視点は毎回笑ってしまうんよな 途中までは本当にまともなのになぜか急アクセルで明後日の方向にぶっ飛んでいくのはもはや芸術 しかもヨシナリに対するアンジャッシュが最終的にはモスちゃんのモチベと向…
「どうすれば勝てた?」「答えは戦いの中にしかない」どっちも格好良い! それぞれの矜持というかICpwへの向き合い方が現れたセリフ それに比べてグロウモスの恋愛フィルターときたらww それでも新たな戦い…
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