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「ただ、雲の集まり方が早いから完全な格落ち品って感じではないんだよなぁ」
恐らくは規模を落とす代わりに雷雲の形成を早めている感じなのだろうか?
比較対象がダラヴァグプタだけなので何とも言えないが、今回とでは状況が違いすぎる事もあって本当に格落ちなのかの判断もつかなかった。
――まぁ、一度見ているから対処自体は何とかなったけどな。
後の結果を見るとできたとは言い難かったが。
雷は細かく制御された物ではなく、範囲内に落ちるだけである以上は攻撃対象には自機も含まれる。
タカミムスビの場合は純粋な防御性能で防ぐ事で対処していたが、並の軽~中量機体はまともに喰らうと一溜りもない。
規模は小さかった事もあって凌ぐ事は何とかなったが、全機健在で突破できたのはベリアルの力に寄る所が大きい。
「ふ、我が闇の叡智を用いれば小癪な雷霆如き、取るに足りん」
無数の分身を繰り出す事で避雷針としていた。
「なぁ、予選の時から気になってたんだけどどうやって分身を増やしたんだ?」
「解を焦る浅慮は眼を曇らせる。 闇の叡智は自らの力で紐解かなければならない」
首を傾げるマルメルにヨシナリは苦笑。
「多分だけどドローンか何かだろう」
「そうなのか? 分身して普通に動いているように見えるけど……」
「リアクターじゃないけどエーテルの操作の部分だけを限定的に扱える感じの奴で、事前に入力しておいたコマンドの通りにエーテルを操作するって感じだと思ってる」
完全な正解ではないが、的は外していないと思っていた。
根拠としてはまず、分身がしっかりと動いているように見える事。
予選の時も思っていたが、自律行動にしては動作が単調だった。
ツェツィーリエを仕留めた時も攪乱ではなく全方からの刺突だった事もあって、恐らくは出現位置から標的に向かってブレードを形成しての刺突を行え等の単純なアクションしか指示できないはずだ。
数が少なければ二手、三手と動かせるかもしれないが、多用しない点からもそこまで使い勝手の良い代物ではない。
ヨシナリが違うか?と視線で尋ねるとベリアルは楽し気に笑う。
「流石は我が戦友。 良い眼、良い叡智だ。 外してはいないとだけ言っておこう」
「つまりはまだ道半ばという訳だ。 貴公の叡智、その結実を待つとしよう」
未完成だから今は秘密という事だろう。 つまりこれから仕上げるのだ。
まだまだ止まらないベリアルの進化に負けていられないといった気持ちになる。
「そう遠くない内に貴様にも披露するとしよう。 我が闇の叡智、その新たな領域を、な」
「なるほど、その時に備え。 俺も叡智を蓄えるとしよう」
クネッとポージングするベリアルに合わせ、ヨシナリもクネッっと身をくねらせた。
「あのーお義兄さん。 そろそろ続きを……」
「あぁ、ごめんごめん。 続きを見ようか」
映像ではタカミムスビがこの形態では勝てないと判断したのか変形を開始した。
分解した外装が剥がれ落ちて本体が出現するが、サーバー対抗戦で現れた時とは全くの別物だ。
以前は通常のトルーパーを巨大化させたかのような人型だったのだが、恐竜のような巨大な頭部に両肩のウエポンコンテナ。 ブレード状の伸縮可能な爪、枝分かれしたブレードの付いた尾。
「分かってたけどこれだけやってほぼノーダメージってマジで納得できねぇ」
タカミムスビの姿にユウヤはやや忌々しいといった様子でケイロンは表情が不明だが、黙って注視している点から思う所はあるようだ。
周囲に展開された反射板が位置に着いたと同時に全身からレーザーが飛び出した。
空中で乱反射したレーザーが全方位に散ったヨシナリ達に襲い掛かる。
「事前に知っててもヤバさが伝わって来るな」
「そうだな。 対策を練ってこれだからサーバー対抗戦で見れてなかったらここで負けてたかもな」
光学兵器は高威力で取り回しも容易と扱い易さが目立ちはするが、防ぐ方法が最も多い種類の攻撃でもある。 全員が事前に用意しておいたスモークを使って減衰を狙う。
大抵のレーザー攻撃は無視できるレベルまで減衰させる事が可能なのだが、タカミムスビのそれは大抵に当てはまらない。 喰らっても死なないレベルまで落とすのがやっとだ。
次は喰らわない為に必要な事。 距離を取る事と反射板を減らす事にある。
少なくとも反射板を背負わなければ後ろから飛んでは来ない。 防ぎつつ、距離を取って反射板を落として数を減らし、反射のパターンを可能な限り減らすのがベストかは何とも言えないがベターな選択ではあった。
ついでに視界を塞いで多少の目晦ましにもなる。
マルメル、ケイロンが積極的に弾をばら撒いて反射板を削り取りにかかり、空いた部分を突く形でヨシナリ達が突っ込む。
判断としては反射板の再配置まで多少の隙が出来ている事と、スモークが効果を発揮している間に少しでも本体の情報を集めつつあわよくば削りたいといった思惑があったからだ。
最初の形態もそうだが、巨体であるという事は火力、装甲に優れはするが反面、細かな動きにかける。
懐に入れば簡単にはやられない。
加えてシックスセンスで監視しておけば大抵の攻撃に対しては反応できる。
そんな考えは慢心だったと気づかされるのは数秒だった。
恐ろしい事にタカミムスビはヨシナリ達の接近に合わせて空間転移してみせたのだ。
「……これは完全に想定外だった」
「いや、まぁ、確か転移って質量依存でエネルギー喰うんだろ? あのサイズで消えるのが想定できねぇとか仕方ないって」
マルメルのフォローがありがたかったが、兆候は見えていたのだ。
だが、自分の思い込みが足を引っ張った。 転移するにしても飛ばすタイプだと思ったのだ。
まさか丸ごと転移するとは思わずに反応が遅れた。
致命傷こそ避けたが、爪による斬撃で胴体にダメージ。
焦りからアシンメトリーにエーテルを大量に注ぎ込んでのフルオート射撃。
追撃は防げたが銃が駄目になってしまった。
アマノイワトのウエポンコンテナの一部が解放。 無数の束ねられた銃口が顔を出す。
回転して凄まじい数の弾丸を吐き出し始めた。
これは躱せないと判断したベリアルが死角となる足元へと短距離転移。
判断自体は間違っていないが、完全にタカミムスビの術中だった。
何故ならそこは遠隔操作が可能な無数の尾の攻撃範囲だったからだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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