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ミサイルの偏差射撃だ。
「これ、よく見たら分かるんだけどばら撒いているように見えて全部きっちり落とす場所を計算してるっぽいんだよなぁ」
俯瞰して見るとそれは顕著で明らかにグロウモス自身を狙いつつ、退路を制限するような着弾位置だ。
「そうなん? その割には隙間が多いように見えるけど?」
「それはアルフレッドを警戒しているからですね」
霧ヶ峰はグロウモスに追従する形でアルフレッドが付いていると思っている事もあって纏めて処理する事を込みでミサイルを撒いている。 その為、やや粗くなってしまっていたのだ。
グロウモスとしてはレーザーで薙ぎ払いたいが、それをやるとレールキャノンによる一刺しが飛んでくる。
その為、機動で躱さなければならなかったのだ。
霧ヶ峰はグロウモスを抑えながら慎重にレールキャノンの砲口を向ける。
狙いはグロウモスに見えるが、微妙にズレているように見えた。
「あぁ、アルフレッドを先に処理するつもりだったのか」
思わず呟くと彼女のレールキャノンが弾体を吐き出し、綺麗にグロウモスの近くを射抜く。
爆発。 グロウモスほどではないが素晴らしい狙撃精度だ。
霧ヶ峰の気が逸れたと判断したグロウモスはレーザーでミサイルを薙ぎ払って押し返す。
それにより霧ヶ峰のミサイルによる爆撃が止まる。
ここが勝負と判断したグロウモスは反射用のドローンを移動させ、霧ヶ峰を狙う。
彼女の周到な所はちゃんと身を隠せる場所にポジショニングしている事だ。
射線を切る為に巨岩の裏に入る。
貫通は可能ではあるが、見えていない以上はギャンブルになるとでも判断した――
「あぁ、マジか」
ヨシナリは霧ヶ峰の本当に意図に気が付いた。
レールキャノンからエネルギーライフルに持ち替えていたからだ。
流石にジェネシスフレームの専用装備だけあってエネルギーの収束が早い。
そして銃口を向けた先はグロウモスが使おうとしている反射用のドローン。
グロウモスが引き金を引くより僅かに早く発射。
霧ヶ峰の放った一撃はグロウモスが彼女を射抜く為に用意したルートを逆行し、綺麗に射抜く結果となった。
「ご、ごめん」
「いや、これは仕方ないですよ。 流石にドローンで反射狙いを読んだ上で位置を割って先に撃つとか凄まじいな」
同じ立場で躱せる自信もなかった事もあって気にしないでくださいと言って頷く。
グロウモスとしてはここで仕留めたかったのだろうが、読みの深さでは霧ヶ峰が一枚上手だった。
だが、周到さでは負けてはいない。 何故ならグロウモスは保険をかけていたからだ。
グロウモスを仕留めて露骨にほっとしている霧ヶ峰に忍び寄る何かが居た。
「あ」
マルメルが思わずといった様子で声を漏らす。 霧ヶ峰が気付いた時には真後ろ。
反応する前にバンと銃声が一つ。 胴体に喰らった霧ヶ峰はそのまま崩れ落ちる。
やったのは人型形態のキマイラループスフレーム。 アルフレッドだ。
そう、グロウモスは最初からアルフレッドを連れていなかったのだ。
タカミムスビの斉射のどさくさ紛れてアルフレッドは峡谷を渡り身を隠していた。
そしてグロウモスの傍に居た動体反応はアルフレッドに見せかけたアイロニーのドローン。
霧ヶ峰はそれをアルフレッドと勘違いして撃破し、索敵能力が落ちたグロウモスを処理できると判断したのだが、最初から彼女の索敵能力は向上していない。
そして霧ヶ峰がグロウモスを仕留めた瞬間に忍び寄って彼女から持たされていた腐食弾装填の拳銃で一撃。 背面に喰らった霧ヶ峰の機体は動力系をやられたのか身動きが取れていない。
アルフレッドはその間に排莢して装填。 しっかりと狙いを定めてとどめを刺した。
「……ヨシナリ。 これはお前の入れ知恵か?」
珍しく口を開いたユウヤにヨシナリ首を振る。
「まさか。 ――最初から狙ってたんですか?」
「で、できれば使いたくなかったけど、相手はかなり上位のランカーだから確実に仕留めたかったから……」
可能であれば自分で仕留めるつもりではあったが、負けた場合を想定してアルフレッドを送り込んでいたのだ。 霧ヶ峰はヨシナリと同じで相手の情報は事前に集めて対策を練る事もあってアルフレッドの事も知っていたはずだ。
ならグロウモスの近くに隠れている動体反応があればアルフレッドと判断するのも無理もない。
実際、霧ヶ峰はアルフレッドと思い込んだドローンの処理を優先した。
グロウモスとしてはその時点で自分の掛けた保険が有効だと証明されたような物だ。
負けるにしても勝ち筋はしっかりと作っていたのは素晴らしい。
「つ、次は自分で仕留める」
「ですね! 頑張りましょう」
フヒヒと笑うグロウモスに頷いてみせ、次へと切り替える。
残りはユウヤとアイロニーになるが――時系列的にユウヤの方がいいかと考えてフォーカス。
ユウヤはアイロニーから借りたステルスヴェールを被ってマルメル達を囮に戦場を縦断。
装備だけでなく機体性能もアップグレードしたのかこうして見ると明らかに以前よりも速くなっていた。 誰を仕留めるか早い段階で決めていたのか動きに迷いはない。
「後衛機を仕留めるって話で纏まってたけど、最後方を狙うのは最初から?」
「あぁ、霧ヶ峰は警戒されてる、篠突はそこの二人が狙ってた。 カタトゥンボとサニーはお前らが始末していたし、キュムラス、凍露は俺じゃ時間がかかる。 そうなると自然と残ったフェーンの処理ってなるだろ」
フェーンというのは「思金神」所属の後衛機で光学兵器主体の後衛機だったのだが、反応する前に一撃で処理していた。 間合いに入ったと同時に大剣で叩き潰す。
マルメルは余りの手際の良さに思わず「はやっ」と漏らした。
ヨシナリも全くの同感だった。
お陰で後ろを気にせず戦えたのだが、余りにも鮮やかな手並だ。
フェーンも僚機の瞬殺とフィールド中央まで斬り込んで来たマルメル達に意識を取られて自分が狙われているという意識が低かったのも大きい。
「まあ、流石に反対側に居た奴がこんなに早く来るとは思わないよな」
ユウヤはそのまま次の獲物――恐らくは本命の相手の下へと向かう。
それはやや後方に居た事もあって比較的近かった事もあって対峙は直ぐだ。
ニニギ。 「思金神」一軍の中ではトップクラスの実力者。
総合力ではタカミムスビの次に強いであろう強敵だ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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