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両者が決着に向けて動き出した。
10。 ヨシナリの姿が霞む。
ホロスコープが高速で回転しながら旋回。
対するタカミムスビは腕で叩き落とそうと狙うがスピードが違いすぎる。
次の瞬間、肘が砕け散り、肩が粉々に粉砕された。 斥力フィールドが全く機能していない。
理由は両手に持っている剣だ。 二本のイラ。
片方は自身の持ち込んだ物。 もう一本はユウヤの物。
9。 投擲。 アマノイワトの肩と足に二本の大剣が突き刺さる。
AIを搭載しているブロックの片方が破壊された。
8。 苦し紛れかタカミムスビが空間転移。 残った反射板の密集している場所へと移動。
残ったレーザーを発射。 反射板の数が少ない事もあって複雑な軌道は描けない。
無数の光がヨシナリを射抜かんと襲い掛かるが、その全てを掻い潜って正面。
7。 ヨシナリに余裕がない以上、最短ルートを来る事をタカミムスビは読んでいた。
反射板の位置を調整。 角度が変わり、正面からではなく囲むような軌跡を描いて襲い掛かる。
流石にこれは躱せずに命中――したのだが、手応えがない。 エーテルを用いた分身だ。
6。 レーダー表示に無数の反応。
ベリアルと違い、転移を絡めない以上はその場にしか残せないのだが高速で移動する事により分身をばら撒いたのだ。 真贋は看破可能だが、僅かに時間がかかる。
5。 斥力フィールドを展開してパリイを狙うが、起動しない。
刺さったままの大剣の所為だ。 引き抜こうにも両腕がないのでどうしようもない。
4。 タカミムスビはならばと切り替え、自分を巻き込む形でレーザーを発射。
纏めて射抜く――前に反射板を破壊されてヨシナリにだけ当たらない。
3。 悪足搔きとばかりに口を開いてエネルギーを充填。
受けて立つと言わんばかりにヨシナリが正面に来ると両腕を振りかぶるように翳す。
ホロスコープの背から突き出るように棒状の物が突き出てきた。
タカミムスビは何だと注視するが、正体は考察するまでもない。
2。 バチバチと放電しているそれはふわわの野太刀だ。
充填は間に合わない。 これは躱せない。
1。 タカミムスビは笑う。 心から嬉しそうに。
「いや、お見事。 本当に素晴らしいよヨシナリ君」
0。
エーテルによる過剰供給によって抜き放たれた斬撃がアマノイワトの頭頂部へと叩きつけられた。
完璧に捉えた。
ヨシナリの渾身の一撃は確実にタカミムスビの脳天を叩き割り、その機体を両断する。
対Sランク用の切り札。 それはパンドラのスペックを限界まで引き出す事によるオーバードライブ。
最大出力はキマイラフレーム基準で1000%という驚くべき数値を叩き出す。
単純に出力が十倍になるのだ。
どこのスーパーロボットだよと言いたくなるが、実際にその通りのなのだから仕方がない。
因みにこの最大出力はベリアルですら滅多に使わなかった程に制御が難しく、敵味方を識別するよような戦い方はまず不可能だ。
使う場合は近くに味方がいない、もしくはアイロニーを残して全滅した場合となる。
元々、依頼していた事でもあった。
彼女の機体「ティピカル・ジャッカル」は腹に様々な化学物質を合成する工場を抱えており、スモークなど用途に応じた物を次々と吐き出しているのはそのお陰だ。
つまり彼女は狙った効果を発揮する薬剤を用意できる事になる。
そこで思いついたのだ。 ホロスコープの限界を突破する方法を。
500%でギリギリ成立する強化のその先を使う為にヨシナリが求めたのは冷却と再生だ。
リミッターを外した状態のホロスコープはキマイラフレームの域を超えた機動性と火力を両立させるが、過剰なエネルギー供給にフレームが耐えられない。
長時間の使用は機体の寿命を大きく縮め、限界を超えれば内側から爆散する。
そのデメリットとの折り合いが付くのが500%という数字だ。
なら単純な話、それを抑え込む事が出来たのなら500以上の出力にも耐えられる。
そんな発想の下、アイロニーに用意して貰った薬剤はナノマシンによる再生と機体の温度を急速に下げる効果のある冷却材とのカクテル。
普通に使ったら即座に機体が凍り付く代物で持続性があるというヤバ過ぎる代物だったのだが、そんな物でも使わないとフレームの熔解を止められない。
後は500%でも完全に使いこなしていない状態でその倍の出力を扱い切れるのかという問題になる。
それに関してはもはやギャンブルに近かった。
500%の感覚からその先の操作感を想定し、タカミムスビを仕留めるまでの動きを組み立てる。
事前にかなり細かく決めておかなければ確実に操作をミスると根拠なく確信していたからだ。
タカミムスビが待っていてくれたお陰でその問題もクリア。
最高加速からの旋回と同時に味方機の残骸の近くを通り過ぎて武器を回収。
そのままラッシュをかけてフィニッシュまで持って行く。
――本来なら使用はどこかで慣らしてからのつもりだったが、あそこまで舐められて使わない訳にはいかなかった。
パンドラ、アイロニーの存在、仲間達の頑張り、そしてタカミムスビの侮り。
そのどれが欠けてもこの結果に辿り着けなかっただろう。
ふわわの野太刀による一閃。 ヨシナリの技量ではアレを完全に再現するのは不可能だが、エーテルでブレード部分の強度を上げれば両断するまで保たせるぐらいは可能だ。
全てが収束した一撃は巨大で堅牢なタカミムスビの機体を完全に両断した。
ホロスコープの倍以上もあるアマノイワトの巨体が縦にズレ、僅かな時間を置いて爆散。
どう見ても即死の一撃。 完全に機体を破壊した手応えがあった。
――勝った! ざまぁみやがれ! 俺達を舐め腐った結果だ!
そんな思考が脳裏に浮かんだが、一瞬後に違和感に気が付いた。
「思金神」の残りはタカミムスビだけ。 つまり彼を撃破した以上、試合は終了のはずだ。
だが、終了のアナウンスが来ない。 どういう事だ?
疑問に対するアンサーは即座に浮かび上がり、嘘だろ、どうして? そんな馬鹿な。
答えに対する疑問が無数に溢れ出す。
『――どんな人間でも必ず気を抜く瞬間がある。 君の場合は今この時のようだがね?』
囁くような声。 それはたった今、叩き潰したはずのタカミムスビの物だ。
確かに手応えはあった。 ホログラムや転移で躱せるタイミングではない。
なのになぜ生きている? いや、今はそんな事は問題ではない。
もう30秒は過ぎているのだ。 機体が限界を迎える前に――
視界のあちこちで何かが光ったように見えたと同時にホロスコープが何かに切り刻まれバラバラになった。
――何が――
ヨシナリの視界が最後に捉えた物は見た事もないジェネシスフレームの姿だった。
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