765
「時間もないので簡単に纏めます。 『星座盤』最大の強みは連携。 強力な単体戦力で複数を抑えつつ、連携を用いて数を減らす傾向にあるので、まずは連携の分断を心がけてください」
霧ヶ峰は『星座盤』の戦い方をある程度は理解していた。
強力な個人を擁している事に目が行きがちだが、その真髄は高度な連携にある。
つまりそこを機能させなければ脅威度は大きく落ちるのだ。
事実として「烏合衆」はそうする事で勝利を収めたと聞く。
チームとしての総合力は「思金神」が圧倒的に上なのだ。
普通にやればまず負けない。 ただ、霧ヶ峰には矜持があった。
「思金神」は日本サーバー最強のユニオン。 勝ち方も最強に相応しいものでなければならない。
目指すは圧倒的な完勝。 だから、格下と侮らずに全力で叩き潰す。
「タカミムスビさん。 分かっていると思いますが、余裕を見せて後ろで見ているなんて事は控えて頂きます」
「はは、分かっているとも。 でも、私の機体は火力があり過ぎるんだ。 下手に撃つと巻き込んでしまうと思うがね?」
「ウチのメンバーにそんな事で落ちる間抜けが居るとでも?」
即答するとタカミムスビは肩を竦めてみせる。
「そうだね。 君達は強い。 普通にやればまず負ける事のない試合だ。 時間も方針も伝え終わったみたいだし、リーダーとして言う事を言っておこうか。 ――勝ちは前提だ。 私は我々に牙を剥く彼らの欲望の強さに期待する。 それを叩き潰す事で我々はまた一つ強くなれるだろう」
タカミムスビはそこで一息。
「――ただ、『星座盤』、彼等は私の理念を体現した存在でもある。 繰り返そう。 勝ちは前提である。 だが、欲望に於いて負ける可能性は大いにあり得る事だけは念頭に置きたまえよ」
「油断するなとかもう少し分かり易く言ってもらえませんかね?」
「はは、すまないね。 なら、霧ヶ峰君。 君が音頭を取りたまえ」
霧ヶ峰はこういった場面は直ぐにこちらに投げるなこいつはと思いながらメンバー全員をぐるり見回す。 癖こそ強いが誰も彼もが強者たちだ。
「タカミムスビさんも言っていましたが勝利は前提。 格下のユニオンに我々が負ける事などあり得ない。 勝ちます!」
メンバーが各々頷き、立ち上がる。 そして試合開始時刻となった。
霧ヶ峰はウインドウを操作してフィールドへと移動。
タカミムスビのテンションが高い事に嫌な予感を覚えつつも意識はこの先の試合へと向かって行った。
ステージは渓谷。
フィールドを横断する形で巨大な谷が存在し、今回は北と南で布陣となる。
「思金神」は北。 「星座盤」は南。 正直、やり易いフィールドと言える。
彼女の機体は城を基調としたやや四角い印象を受ける重量機。
名称は「ブリザード・ミスト」射撃、攪乱に特化しており、中~長距離戦に長けた機体だ。
他のメンバーの機体も布陣が完了しており、背後には最も巨大なタカミムスビの機体「アマノイワト」がいた。 先日にアップグレードを済ませたらしく、一回り大きくなっている。
――そしてカウントダウンが終了し、試合が開始された。
「これで沈んでくれるなよ」
タカミムスビがそう呟いて一斉射撃。
無数のレーザーや実体弾、ミサイルが雨あられとフィールドを縦断し敵機のいる場所へと襲い掛かる。
開始と同時に動きがあったのは敵も同じだった。
始まった瞬間に無数の爆発音がし、煙のような物が一気に広がる。
――煙幕?
霧ヶ峰は内蔵されているセンサーシステム――シックスセンスを起動して解析。
どうも複数の成分を複合させた代物らしく、光学兵器の減衰だけでなく索敵も妨害している。
見えなくなった。 タカミムスビは構わずに斉射を続ける。
正しい判断だ。 アマノイワトの火力は少々の小細工でどうにかできるレベルではない。
このまま圧倒してしまえばいい。
「カタトゥンボ! サニー! 斉射が切れたと同時に斬り込みなさい!」
「指図すんな」
「おっまかせー」
打てば響くといった様子で二人が前に出ると、他がフォローできる位置へとポジショニング。
――どう動く。
正直、並のチームならこれで全滅もあり得るレベルの攻撃だが――不意にレーダー表示に違和感。
一瞬、何かが映ったのだ。 空間情報に変動。 転移――ベリアルだ。
「ベリアルが来た! 転移に警戒!」
ベリアルの転移はあくまで短距離、小刻みに行う事で距離を稼ぐタイプだ。
つまり最初に接敵するのは一番近くに居るカタトゥンボ。
それを理解している彼は早く来いと構える。
彼の機体「ステップトリーダー」は非常にユニークな機体だ。
放電する事で相手をスタンさせて動きを封じるだけでなく、特殊なフィールドを展開する事で影響範囲内に存在する敵機のジェネレーター負荷を高め、スタミナを削る。
その為、接近戦では短期で決着を付けなければかなりの不利を強いる強力な機体だ。
加えて敵機に放出させたエネルギーを吸収する事でスタミナを回復させるという接近戦に於いて力を発揮する。
ランク戦ではベリアル相手に勝率四割以上をキープしている彼なら充分に渡り合える。
――はずだった。
「ベリアル! ぶちのめしてや――」
『ふ、貴様か。 闇の王としてその挑戦を受けてやりたくはあったが、今は貴様に構っている暇はない』
転移先を先読みしたカタトゥンボの動きにはミスはなかった。
ベリアルはエーテルリアクターを用いての攻防を軸に置いた機体というだけあってエネルギーの放出を強いるカタトゥンボとの相性は悪い。 加えて転移の対策も済んでいる。
個人戦ならここからが勝負なのだが、これは集団戦。 そのまま複数で狩ればいい。
霧ヶ峰はそう考えており、他のメンバーもそうするつもりだったのだが、現れたのはベリアルではあったが機体が違っていた。
エーテルに覆われている点はプセウドテイと変わらないが二回り以上も大きくなっており、シックスセンスで観測すれば内蔵しているエーテルの密度がこれまでの比ではない。
カタトゥンボも驚きはしたが、それも刹那。 即座に攻撃に入ろうとしたが、プセウドテイらしき機体の背から複数の腕が突き出るように飛び出し、霞むように振るわれる。
次の瞬間、カタトゥンボの機体は細切れになった。
――何が――
ベリアルらしき機体は即座に転移。 今度は近くにいたサニーの近くに転移反応が現れた。
誤字報告いつもありがとうございます。
宣伝
パラダイム・パラサイト一~二巻発売中なので買って頂けると嬉しいです。
Kindle Unlimited、BOOKWALKERのサブスク対象にもなっていますのでよろしければ是非!
現在、BOOKWALKER様にてコイン50%還元キャンペーン中との事です。
パラダイム・パラサイトも対象となっております。
加えて期間限定で一巻が無料で読めてしまうそうです!
12/28までとの事なのでこの機会に是非!




