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「真っ先にグロウモスさんを狙いに来た時点でこっちの構成は割れているのは分かるんだけど、居場所を割るの早すぎるな」
いくら何でも動きが良すぎた。
まさかとは思うがチートの類でフィールドの位置関係を把握しているのか?
非常に怪しかったが、考えても仕方のない事でもあった。
足の速い二機が迂回を完了してグロウモスの所へ。
ベリアルとマルメルがカバーに入るがそれも織り込み済みだったようで、ベリアルに一機張り付いてマルメルは牽制で引き剥がしにかかる。
「うわ、こうして見ると露骨に殺しに行ってるな」
「それだけ相手にとってグロウモスさんが目障りだったって事だろ」
挙動に関しても彼女に対しては満点と言っていい。
スコーピオン・アンタレスで狙うには近すぎる間合いまで寄りながら手数で押す。
苦しくなったグロウモスの援護にアルフレッドがステルスを解いて姿を現した。
「狙ってやがったな」
ユウヤの言う通りだった。 敵機は待ってましたと言わんばかりにアルフレッドに標的を変える。
ニードルガン――それも電流が流れるタイプで命中すると僅かな時間、動きが止まる。
プレイヤーではなくAIであるアルフレッドはこの手の攻撃に弱く、復旧はするがプレイヤーよりも時間がかかるのだ。
――そこを狙い撃ちだ。
ただ、敵の狙いはアルフレッドではなく、庇いに行くグロウモスを処理する事だ。
パーツロストのリスクがある以上、アルフレッドの撃破は見た目以上に重い。
それを理解しているからこそ狙いに行ったのだ。
タイミング的にも身を挺して庇わなければ間に合わない。
だから彼女は迷わずいった。 限界まで加速し、ギリギリのタイミングでアルフレッドに体当たり。
射線から弾いた結果、彼女はバトルライフルのフルオートをまともに喰らって脱落となった。
「アルフレッドを拘束した上でグロウモスさんが間に合う位置で攻撃。 庇わせる事を前提にしてるな」
そのままアルフレッドを仕留めに行こうとするが強引に割り込んだマルメルが追い払う事でどうにか離脱させる事には成功。
「……次からは敵の位置を割るまでマルメルかふわわさんには下がった位置に付いて――いや、俺の方がいいか……」
ぶつぶつと今回の反省をどう活かすかを考える。
正直、ここまで綺麗に速攻をかけられる事を想定していなかった。
基本的にシックスセンス以上のセンサーシステムはほとんどない。
ないと言い切らないのはジェネシスフレームの専用装備には未知数の物が多いからだ。
既存品ではまずないが、装備次第――要は索敵特化のビルドなら単純に範囲で上回って来る事もあって初手で位置を割って来る事もあるかもしれない。
――そういう意味では今回はいい教訓になったか。
敵の装備構成的に納得は行かないが。
明らかにバランス重視の機体構成なのにあの速さはあり得ないだろうとしつこく内心で文句を言いながら個別の動きをフォーカスする。
何処にするかなと見ていると目立たなかった所にしようと戦場からやや外れた位置に向ける。
「タクティカル。 最初は私か」
アイロニーだ。 彼女は試合開始と同時に姿を消してドローンを展開。
奇襲に備えるつもりだったのだが、先述の通り早々にこちらの配置を割って斬り込んで来た事により意味がなくなってしまった。
敵機が真っすぐに突破したのを見て少し慌てた様子で後方のカバーに行こうとしていたが、後方に行くと見せかけた一機が銃撃。 即座に反応して機体を左右に振って躱す。
この反応の早さは流石だった。
「シニカル。 敵機はシックスセンス装備だったのだろうか?」
「……かもしれませんね」
あり得ない。 使っているヨシナリからすれば断言できるレベルでおかしかった。
ソルジャー+がグレネードランチャーを連射。 ポンポンと放物線を描いて榴弾が飛ぶ。
アイロニーは既に捕捉されていると判断し、展開しかけていたドローンを操ってワイヤーアンカーで迎撃。
アンカーが命中した榴弾は弾けて白い液体とも個体とも呼べない何かを撒き散らす。
「グルーやね」
「普通のじゃないですね。 爆発して広がってます。 多分、爆発の範囲内の動く物を絡め取る事を目的とした捕縛用の装備でしょう」
破壊力はないが効果自体はかなりの物だ。 地面に吐き捨てたガムのように張り付いて凝固。
それによりアンカーが巻き取れなくなった。 ドローンは巻き戻そうとしていたが、動かない。
敵機は慣れた挙動でドローンにバースト射撃を浴びせて破壊するが構わずに追加を繰り出す。
それもグルーで動きを封じられるが、破壊で一手使わせようとしたようだ。
アイロニーは敵の思惑を外す為か前に出ようとしたが、敵機は意図に気付いて撃たずに下がる。
障害物がない事もあって彼女の隠形が上手く機能していない。
「タクティカル。 私相手には上手い手だが、アンカーの間合いを知られているのは解せないな」
そう言って首を傾げた。 そうなのだ。
アイロニーは恐らく薬液を充填したアンカー付きの注射器を射出しようとしたのだが、悉く間合いを外されている。
――明らかにアイロニーの攻撃範囲を知ってる動きだ。
それ以上に動体センサーがあれば発見は難しくないとはいえ、アイロニーをあそこまで簡単に発見するのもあり得ない。
「ふん、我等とは違う眼を用いて世界を見ているのだろう」
似たような事を考えていたのかベリアルがそう呟き、ユウヤは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
ここまで露骨だと考察するのも馬鹿らしい。 恐らくは何らかの手段で「星座盤」全員の戦闘記録か何かを参照して先読みしているのだろう。
反応したというよりは最初から知っている奴の動きだ。
――だが、あの連中は甘く見過ぎている。 Aランクプレイヤーはその程度で倒せるほど甘くはない。
「プラクティカル。 随分と私の事を勉強してきたようだが、足りないなぁ」
アイロニーは加速。 地面を這うように進み、指の注射器に薬液を充填して射出。
当然届かず、敵機は念の為にと銃撃で破壊する。
次の瞬間、空気の抜けるような音がしたと同時に腕が丸ごと飛んでいった。
「すげぇ! ロケットパンチだ!」
マルメルが興奮した声を上げる。
何らかの手段で射出したのか見た目以上のスピードで真っすぐに飛ぶ。
敵機はバトルライフルでは止められないと判断して回避に入る。
その間にアイロニーが間合いを詰める事を意識している点は抜かりないが、一つ忘れている事があった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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