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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 ――ハニー! 君だけが頼りサッ!


 ヨシナリが自分だけを頼りにしている。

 グロウモスは向けられる絶対的な信頼に満足しながら下へと続く梯子を降りていた。

 そう、今のヨシナリはこの世の誰よりも自分の事を意識している。


 マルメルよりも! ベリアルよりも! ポンポンよりも! ふわわよりも! 

 自分がナンバーワンだ。 自分がヨシナリの一番なのだ。

 その事実はグロウモスに凄まじいまでの満足感を与える。


 背中の大きなザックにパンツァーファーストが二つと手榴弾が五つ。

 肩にはヨシナリから貰った突撃銃と自分のライフル。 腰には拳銃が二挺。

 ポーチには弾薬があるだけ全部。 ヨシナリは自分の持っていた武器を全て託してくれたのだ。


 もうこの時点で命を預けていると言っても過言ではないだろう。

 命を預けている。 つまりは人生を預けている訳だ。 

 もしやこれはプロポーズなのでは? 実質、結婚かも知れない。


 「ふ、フヒヒッ!」


 思わず笑みが漏れる。 

 ヨシナリはそのつもりだろうがグロウモスにはまだその気はなかった。

 何故なら簡単に同意するとちょろい女と思われて舐められるからだ。


 それはよろしくない。 ここは適度に焦らすのだ。

 いい女の条件はあっさりと肌も心も許さない。 ソースは最近読んだ少女漫画。

 漫画には人生に必要な心構えが全てつまっていると言っていい。


 そんな事を考えていると底が見えて来た。 手を放してそのまま飛び降りる。

 このアバターの運動性能はもう掴んだ。 どの程度まで無理ができるのかも理解できている。


 着地。 周囲の音に耳を済ませながら突撃銃を構えて慎重に進む。

 地図は既に頭に入っている。 

 この細い通路はメンテナンス目的で作られており、五層の下を蜘蛛の巣のように張り巡らされていた。


 目的地はその中央。 反応炉――正確には核融合炉というよく漫画とかで見る凄いジェネレーターだ。

 恐らくテロリスト達はその真下にあるコントロール用のコンソールからアクセスして停止させようと試みている。 


 ――というのがヨシナリの考えではあるが、上の様子を見ると戦闘が始まってからそこそこの時間が経過しているにも関わらず停止する気配はない。


 それが意味する所は何らかの理由で停止ができない状況にある。

 戦闘の物と思われる振動と音が近い。 既に戦場の真上に来ているのだろう。

 降りた深さを考えるならこちらに影響はないと理解しているグロウモスは周囲の警戒にのみ神経を尖らせる。


 そこまで広い通路ではない事もあってここで襲われると非常に不味い。

 グロウモスとしてはコンソールのある広場までは何とも遭遇したくないというのが本音だった。

 不意にアバターの五感が上の戦闘の物ではない音と衝撃を捉え、ピタリと足を止める。


 銃声とプツプツと音声が途切れるのは奥でテロリスト達が何かを叫んでいるからだろう。

 

 ――それにしても何故、テロリストの音声はカットされているのだろうか?


 単純に事実だけを切り取って考えるなら何か聞かれると不都合があると考えるのが自然だろう。

 ただ、ゲームのトライアルイベントの内容でここまでするのは少し気になる所だ。

 もしかすると途切れているように聞こえるだけで音声は存在しないのかもしれない。


 そう考えるのなら理解出来なくはないが、どうにも腑に落ちなかった。

 ヨシナリはゲームのネタバレが多分に含まれているかもしれないからと思っているようだが、グロウモスに言わせれば聞かれて困るような内容を公開するなという話だ。


 目的地が見えて来た。 そっと通路から覗き込むと――


 テロリストの男女が五名が小型のジスルフィドと交戦中だった。

 三人が大きな動きで気を引いており、残りが何とか脇をすり抜けようとしている。

 ジスルフィドは10メートル前後で、アバターサイズだと少し厳しい相手ではあった。


 問題は制御用のコンソールらしき物がジスルフィドの後ろにある事だ。

 そこそこの数の人間を喰ったらしく、複数の上半身が連なったような姿をしている。

 下半身は人数分の手足が生えており、あちこちから背骨か何かを使っているらしい骨の鞭のような物を振り回していた。


 中々にグロテスクな姿だ。 このゲームって18禁だっただろうかと内心で首を傾げる。

 そう疑いたくなるほどに生々しいビジュアルだったからだ。

 パーツを繋ぐジョイントに臓器にも見える肉塊が脈打ち、銃弾を撃ち込まれた場所から血液らしき物が不規則に噴き出す。


 グロウモスはテロリスト、ジスルフィドの順で視線を巡らせ、空間全体を見る。

 テロリスト達はそこそこの数でここに来たようで血の跡や武器があちこちに転がっていた。

 使えそうな物はあるかなと思いながら脳内で動きを組み立てる。 

 

 本音を言えばテロリスト達に適度に削って貰った後、とどめを刺そうかとも思ったのだが闇雲に連射しているだけでとにかくコンソールの前から引き剥がそうとする事に注力しているように見えた。

 どう見ても焦りで視野が狭まっている。 つまりは期待はしない方がいい。


 グロウモスは一つ深呼吸。 アバターには必要ないが、集中力を高める効果がある。

 ジスルフィドの挙動を確認。 囮役のテロリスト達を仕留める為に僅かに前のめりになった瞬間にすっと通路からライフルを構えて発射。 足を撃ち抜く。


 ライフル弾は簡単に貫通し、ぐしゃりと折れ曲がる。

 恐らくは骨が砕けたのだろう。 

 ただ、約十人分の死体が融合しているジスルフィドの足は二十本近くある。


 一本砕いた程度ではバランスを崩すには至らない。 

 だが、前傾姿勢で重たい部分が傾いており、バランスを取るのに必要な部分を集中的に破壊すれば――


 グロウモスは排莢し、間髪入れずに発射。 排莢、発射を繰り返し、瞬く間に五本の足を砕く。


 ――いくら手足があろうとも体勢を崩す事は不可能ではない。


 ジスルフィドは前のめりの状態のまま転倒。 

 グロウモスはライフルを足元に落とすと突撃銃に持ち替えて連射。

 驚くテロリスト達の注目も集まるが、特に構わずにコンソールを指差す。


 察した数名が回り込む形でコンソールへと向かう。 

 ジスルフィドは身を起こすとグロウモスに狙いを定めるべく動き出した。


誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
がんばれグロウモス お前がナンバーワンだ
この作品の新タイトルは 「グロウモス アズ ナンバーワン」  ズバリそうでしょう!
>>マルメルよりも! ベリアルよりも! ポンポンよりも! ふわわよりも!  >>自分がナンバーワンだ。 自分がヨシナリの一番なのだ。 開幕から笑わせてくれますねモスちゃんw 自己肯定感マシマシでいい感…
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