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進んでいると戦闘による銃声や爆発音が微かに聞こえ、衝撃が施設を僅かに揺るがす。
「やってますねー」
「う、うん。 でも、問題は……」
「はい、何を相手にしているかですね」
テロリストなのか例のクリーチャーなのか。 どちらかで状況が変わってくる。
確実にいるのは間違いないが、ヨシナリとしてはアレが制御されているのかが気になっていた。
情報が少ない事もあって判断が難しい。
「聞きそびれたけどヨシナリはアレについてはどう思う?」
「確かさっき見たテロリストの死体がああなったんですよね」
「そう。 胴体以外の何処に撃ち込んでも効果がなかった」
ガトリングガンの斉射を喰らって生きていた事もあって普通の生き物ではないのは確かだ。
はっきりしている点は胴体に弱点らしき物があってそこを破壊されると死亡する。
何故、このロボゲーにあんなジャンル違いの化け物が湧いてきたのかは不明だが、その手のゲームのセオリーで考えれば想像ぐらいはできる。
「ゾンビ物やあの手の生物兵器がよく出て来るゲームでは何らかのウイルス等による作用で変異っていうのがお約束ですが、俺としては明確に弱点があるのが気になりますね」
「どういう事?」
「あくまで俺の想像って事を念頭に置いて聞いてください。 ――そういう弱点がある系の変異クリーチャーって事前に何か仕込まれた結果あんな感じになるパターンが多いんですよ」
それを聞いてグロウモスも理解したというように頷く。
「つまりあのテロリストは事前に何かされていてそれが原因でああなったって事?」
「はい、それだと片方だけがああなった事にも納得がいきます」
死体は二つ。 襲ってきたのは一体。
他所に行った可能性もあるが、片方だけが変異した事を考えると明確な違いがあってしかるべきだ。
「ならテロリストが用意した生物兵器って事?」
「俺はそう思います。 流石にこの状況でアレが宇宙生物でしたは無理があるでしょ」
そう言ってヨシナリは苦笑。
「まぁ、分かり易いシナリオとしては追い込まれたテロリストが仲間に何らかの処置を施したって感じですかね。 ちょうど出来そうな場所にも心当たりがあるので」
「心当たり?」
「はい、ここの三層が研究エリアとかいう区画でして。 前の防衛戦の時も詳細が不明で死ぬほど怪しい場所でしたよ」
タカミムスビが見せてくれた映像を思い返す。
手術台らしきものに怪しげなカプセル。 謎の血痕を始めあからさまに怪しい実験の痕跡。
イベント戦の時はこの時点から未来の姿だったのだろうか?
――いや、それはない。 そもそも場所が違う。
防衛戦の時はどこかの星だった。 だったらステージの使いまわし?
限定ミッションで限られた人数だけを招いている点からもテストプレイを兼ねているのかもしれない。
だとしたら理解は出来なくはないが、もしかすると今後はあんな感じのエネミーが出て来るのだろうか?
ヨシナリとしてはあまり思う所はなかった。
現状、厄介と感じるのは装備が足りない事だけだ。
本来の機体が使えるのであれば高火力の武器がいくらでも用意できる以上、そこまで怖い相手ではない。
――まぁ、今は怖いけどなぁ。
滑腔砲で一発なのは良いのだが、弾に限りがある。
ボーンヘッドには弾丸の自動精製機能なんて気の利いた物は搭載していない。
大事に使う必要があった。 こうなると少し悩ましい。
今なら味方との合流はそう難しくないので、下がって頭数を揃えるという選択肢もある。
「ここまで来ておいて今更なんですけど、このまま進む事に関してどう思います?」
一人なら自己責任という事で躊躇なく突っ込むが今回はグロウモスが居るのだ。
グロウモスは少し考えるように沈黙したがややあって意見を口にする。
「……ヨシナリはこのイベント、クリア条件は何だと思う?」
「テロリストの拠点の殲滅との事なのでシンプルにここにいる連中が居なくなれば終わるかと」
「ならヨシナリは何処を潰せば効果的だと思ってるの?」
「最下層のパワープラントですね。 だから、こうして向かおうと思ってたんですけど、あんなのが出て来るなら話が違ってきます。 様子からして三層は最悪、連中の巣になっている可能性が高いと思ってるので、通るのは割とリスクが高いと思ってます」
グロウモスはなるほどと頷いた。
――君が傷つく姿を想像するだけで胸が張り裂けそうなんだ! でも、俺にはどうすればいいかなんてわからない! ハニー! 教えてくれ! 俺はどうすればいいんだ!?
つまり目の前のヨシナリはこう言いたいのだろうと解釈したグロウモスは大きく頷いた。
分かり切っている事とは言え、ヨシナリはなんて心配性な男なのだろうか。
いくら自分の事が死ぬほど好きだからと言ってこれは過保護が過ぎる。
口振りからもうやる事は決まっているのだ。
だが、ヨシナリはグロウモスとの愛の共同作業に対しての経験値が足りず、こうして確認作業を行って彼女の反応を見ているのだろう。
分かっている。 グロウモスには全てお見通しだった。
ヨシナリはグロウモスと二人きりの状況で緊張しており、気持ちが上滑りしているのだ。
それはもうツルッツルに。 だから普段なら方針を伝えて納得させる所を意見を求めている。
――分かってる。 もう、全部わかってる。 手に取るように分かっている。
好感度3000%は伊達ではなかった。 恋の魔力というのは恐ろしい。
あの、冷静で優れた判断力を兼ね備えたヨシナリですらこうなるのだ。
グロウモスは恋とは人をここまで狂わせるのかと僅かな恐ろしさすら感じる。
そして全てを分かっているグロウモスがやる事はたった一つだ。
「それでいいと思う。 分かってるから」
心配しなくても大丈夫。 そう言って背中を押してやる事だ。
ヨシナリが恥をかかないように彼女なりに最大限に気を使ったつもりの回答だった。
「結構、ヤバい事になると思いますが本当に良いんですか?」
傷つく君を見たくないんだ? 安全な場所に居て欲しい? 俺が君を守る?
ヨシナリの言葉の裏に隠れた歯の浮くような真意にグロウモスは内心でくねくねと身をくねらせる。
少ない言葉からヨシナリの考えを汲み取り完璧に理解する自分はもはやエスパーではないのだろうかとすら思ってしまう。
もう長々しい言葉は二人の間には不要だった。
だからグロウモスは一言、こういうのだ。
「行こう」
――と。
誤字報告いつもありがとうございます。
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