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場所は変わって模擬戦用のフィールド。
そこに七人のアバターが集まっていた。 片方はヨシナリ達、『星座盤』。
残りはツェツィーリエ率いる『豹変』。
ヨシナリは目の前の四人を観察する。 リーダーのツェツィーリエはAランクだけあってアバターをしっかりとカスタマイズしており、長い黒髪褐色肌の美女といった感じだ。
残りも弄っており、ポンポンは背が低くピンク色の髪が目立つ美少女だった。
ニヤニヤとした笑顔を向けており明らかにヨシナリ達を格下と見ている印象を受ける。
ニャーコは猫耳、猫尻尾の猫人間といった容姿、最後のまんまるは人間に近いが背が高く表情にはややおどおどとした気弱なものが浮かんでいる。
アバターなので見えている部分が何処まで正確なのかは怪しいものだが。
「どうも『星座盤』のヨシナリです。 今回はよろしくお願いします」
「『豹変』のツェツィーリエよ。 模擬戦の申し出を受けてくれて助かるわ」
「いえいえ、今日は胸を借りるつもりで勉強させてもらいます」
そう言って握手。
「ルールを確認するわ。 三対三の潰し合い。 片方のチームが全滅したら試合終了」
「問題ありません」
「そう、じゃあ早速、始めましょうか。 あんた達、配置に着きなさい」
『豹変』のメンバー達は返事をすると背を向けて散っていった。
それを見たヨシナリもマルメルとふわわに行こうと頷いて見せる。
移動しながらヨシナリは小さく振り返って『豹変』のメンバーを肩越しに視界に収める。
――明らかに舐めてたな。
リーダーのツェツィーリエは不明だが、他は明らかに格下と見ているのが分かった。
見えている部分はごまかしが利くが見えていない部分は割とごまかせない。
特にポンポンとかいうチビは明らかに下に見ていたのであいつだけは始末したいなと少しだけ思った。
胸を借りるといったが負けるつもりは欠片もない。
――ぶっ潰してやる。
両チーム配置に着き、全員がアバターから機体へと姿を変える。
ヨシナリは特に何も言わない。 もう動きは二人に伝えているからだ。
「ま、気楽に頑張ろうぜ。 ただ、あの露骨に舐めた態度取ってたチビは潰したいな」
「ウチは歯応えがあったら何でもええよ。 ただのイキりは噛み砕いたるわ」
二人ともやる気満々で何よりだ。
そしてマルメルが自分と同じ気持ちだった事がちょっとだけ嬉しかった。
「最後まで自分のプレーを貫こう。 ミスらなきゃ簡単にはやられない。 『星座盤』行くぞ!」
ヨシナリがそう言って締めると二人がおうと応えた。
同時にウインドウが出現、試合開始だ。
「ニャーコは中衛機、まんまるは近距離主体の機体を仕留めに行って。 あたしはリーダーを頂く。 機体スペック、ランクとぜーんぶこっちが上だから普通にやったら絶対勝てる。 ただ、油断は禁物、互いを援護できる距離を常に意識!」
ポンポンはチームメイト二人に指示を出して行動を開始した。 急上昇して上空の目立つ位置へ陣取る。 その間にニャーコはビルの隙間を縫うようにマップの中央へと切り込み、まんまるは盾に使える巨大で背の高いビルの陰に入った。
まずは敵の位置の把握。 レーダー表示は味方機以外は表示されない。
そこそこのステルス装備を身に着けているのだろう。 エンジェルタイプは光学兵器に偏っているので早い段階で位置を捕捉されるのは不味いと理解しているからだ。
――最低限の対策は練って来たみたいだナ。 加点!
まずは一番居場所が分からないと面倒くさい狙撃手を炙り出す。
その為に彼女は身を晒したのだが――
「釣れないナ」
割と狙い易い位置に陣取ったのだが仕掛けてこない。
それならそれでやり方を変えるだけだ。 まんまるの機体の両肩から長い砲身が伸びる。
「チャージは?」
「もう撃てますぅ」
「ぶちかませ」
まんまるは「はいぃ」と気の抜けた返事をすると同時に発射。
極太の光線が二本、戦場を薙ぐよう通り過ぎて無数の爆発が起こる。
レーダー表示を確認。 何も映らない。
Ⅱ型のメインブースターは飛行を可能とするだけの出力があるだけあって、いくらステルス装備で固めても噴かせば必ず引っかかるはずなのだが反応なし。
同時に撃破表示もないので仕留めても居ない。
『星座盤』の初期配置はマップの西側で『豹変』は東。
ニャーコは開幕と同時に中央へ、その先をまんまるの砲撃で薙ぎ払った。
最初の組み立てとしてはポンポンを餌にしての釣り出し。 これは失敗したので次の炙り出しに移ったのだがこれも失敗。 大抵の相手なら慌てて出てくるのだが、どうやらこちらの手を読まれていたようだ。
――思った以上に読みが深いナ。 加点!
中央から西にかけて焼き払ったのに反応がないという事は最初から北か南から回り込むつもりと判断。
「ニャーコ、北か南。 多分、三人固まって襲ってくると思うから警戒!」
ここまで徹底して隠れている以上、執る手は相手の数を減らす事。
隠れていないニャーコ、上空のポンポン、そして今の砲撃でまんまるの居場所も割れた。
なら一番落としやすい位置にいるニャーコを狙う可能性が高い。
ニャーコの機体がマップ中央の広場で停止。 かかって来いと言わんばかりに陣取る。
これだけ誘ってこないなら時間をかけてチャンスを窺うタイプと判断――来た!
Ⅱ型が一機、正面から突っ込んで来る。 間合いに入る前に腰に差した刀を抜いて一閃。
「にゃ!? ちょ、早いって!」
当然ながらニャーコは姿を見つけると同時にエネルギーガンを連射。
敵機は器用に機体を左右に振って回避する。 上手い。
弾速は実弾の比じゃないのに器用に躱している。 一発、二発、三発。
「バカ! よく見ろ! タイミングを取られてる」
敵機はニャーコの引き金を引くタイミングに合わせて回避している。
ニャーコは下がりながらエネルギーブレードを展開。 接近戦に応じるつもりのようだが、嫌な予感がする。
「止めろ! 急上昇、足の速さを活かせ!」
ニャーコの機体が急上昇すると同時に一瞬前まで首のあった場所を刀が通り過ぎる。
「あ、あぶ、あぶなー」
「おいおい、あいつ本当にFランクかぁ? 動きのキレが半端ないゾ」
受けてたら撃破されてたかもしれない。
動きに緩急を付けて受けるタイミングをズラしに来ていた。
Fランクの動きじゃない。 完全にエンジェルタイプのスペックに救われた形だ。
「ニャーコ。 接近戦に付き合うな、絶対に距離を取って仕留めろ! エネルギーの残量は常に意識!」
「わ、わかった」
矢継ぎ早に注視だけしてポンポンは機体を急降下。
僅かに遅れてエネルギー弾がさっきまでいた場所を通り抜ける。
やっと来た。 位置はポンポンから見て北西。 北側に回り込んで来ていたようだ。
位置が分かればこっちのものだ。 まんまるは待ってましたとばかりに射撃地点へと砲を向ける。
誤字報告いつもありがとうございます。
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