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星々を統べる神 其の零

 誰もいなかったはずの山頂に突然現れた少女。どうやらプレイヤーのようだが、いつ現れた……?


「こんな美少女を目にして、いきなり飛びのくだなんて失礼だとは思わない?」


「全く思わないですけどね……」


 自分でキャラクリできるんだ。誰だって容姿を良くできてしまうのがゲームだ。容姿はさほど重要じゃない。彼女の背は俺よりも小さい。とはいえ、初対面だし、年上っぽい気がするから敬語で話すが――――――


「む。敬語使うの禁止ね?」


「え?」


「駄目だからね」


「あー、わかった。これでいいか?」


「うむ。よろしい」


 なんだこの人……。エデン・ヒストリアを始めてから初めて会うタイプの人だ。プレイヤーネームは――――――


「スピカ、ね。星の名前か」


「正解~。星の中だと一番かわいい名前だと思うの、スピカ」


「んで、いつからここにいた?」


「私が来たのは、君が空中をピョンピョン飛び回って落っこちた時だよ。焦ってるのは見ててなかなか面白かったね」


 てことは、グロリアスと戦ってる途中ぐらいか?イカロスのことも知られてると考えた方がよさそうだな。あんまし人に見せたくなかったんだが仕方ないか。


「それで、なんで話かけてきた?」


「なんでって……。有名人や美少女がいたら話しかけるでしょう?普通」


「そんなことないと思うけどな」


「嘘だね。君だってそうだなあ……。夜神星歌とか見かけたら話しかけたくならない?」


「なんないかな?」


 夜神星歌ってアイドルだっけ?アイドルの事はあんまり知らないんだよなあ。モリベ辺りは詳しかった気がしたけど。


 というか、そんなに有名になるようなことしたか、俺?うーん、案外してるのか……?そんなに掲示板とか見ないから、自分の知名度とか知らないんだよな……。


「俺ってそんなに有名なの?」


「君が思っているよりはずっと有名だよ?リオンに勝利、空を翔けて空兵龍を落とし、今度は指名手配!」


「最後のは不名誉だな」


 指名手配に関しては完全に不本意なんだよな……。ライシオンの野郎、許さん……。


「面白くていいと思うけど」


「こっちは面白くないんだよ。いつ獣人が殺しに来るかわかんないんだ」


「そう?大丈夫だよ。しばらくのうちは、ね」


「なんだそう言い切れる?」


「私がそう思うからだよ」


 よくわかんないこと言うな……。とはいえ、妙に説得力があるから不思議だ。本人のカリスマとかそういうのがあるんだろうか。


「それにしても、なんとなくここに来てみたら君と会えた。今日はラッキーだ」


「ラッキー?」


「いつか会ってみたいと思ってたからね。そうだ!フレンドになってよ」


 フレンドになってと言われてもなあ。会ったばかりなんだよなあ。


「どうして迷ってるの?こんなにかわいい女の子とお友達になれるっていうのに」


「見た目なんて関係ないだろ。ゲームなんだし」


「ほとんどリアルそのままなんだけどなあ~」


「へえ。本当なんだったら確かに美少女かもな」


「それで?なってくれる?」


「まあいいよ。ほら」


「わあ、ありがとう」


「これでいいか?」


「うん。そうだ、お礼にいいこと教えてあげる」


「いいこと?」


「ジャラーク渓谷に行ってごらん。きっといい出会いが待っているよ」


「いい出会い、ね」


「信じてないでしょ?まあ別に、信じるか信じないかは君次第だし」


「信じてみるよ。どうせまだ寝るつもりもないし。それじゃ、俺は行くよ」


「うん。またね」











「ふふ。思ってたよりも楽しい人だったなあ」


 夜火が去った後の極光山でスピカは一人つぶやく。


「彼も私と()()らしいけど、ぱっと見じゃわかんなかったな~」


 プレイヤーネーム「スピカ」。出身・出自――――――






――――――異端者






 彼女もまた、夜火のように制限をかけられている。


「結局、彼の顔はネットでしか見れなかったな~」


 彼女の目には無数の光だけが映っている。それは世界中に、そして一面に広がる魔力の光。それらを見る力を与えられた代わりに彼女の目には魔力の光以外が何も見えていない。そんな彼女でも、空だけは魔力が薄く、しっかりと見ることができる。


 現実でも、ゲームでも星空を見ることが好きな彼女にとって、星がよく見えるこの山はお気に入りのスポットだ。だからこそ――――――


「――――――邪魔しないで欲しいな~」


 スピカを囲むように集まるグロリアスたち。魔力に視界を奪われていても、彼女はこれまでの経験で濃淡などから周りの状況を把握することができる。


「全く。無謀な勝負は挑まない方がいいよ?」


 次の瞬間には、グロリアスたちに何かの光が衝突し、その体が消滅する。


「ふう。まあこんなところかな、ってもう。まだ来るの?」


 極光来鳥グロリアス。しかし、他のグロリアスと同じように極光来鳥もまた一瞬で撃破される。


「これで落ち着いて星が見えるかな?」


 山頂で寝転がり、空を仰ぎ見るスピカ。


「彼とはきっとまた会える。ゲーム(こっち)でも現実(あっち)でも。ふふ、楽しみだな~」






 「星神」スピカ






 彼女の正体を夜火が知るのはまだまだ先の話である。

スピカの視界。斉木楠雄のΨ難のオーラの話が近いんじゃないかなと思ってます。

其の零ってことはまあ、そういうことですね。


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