085.愛などいらぬ、いやマジで
オッテル騎士団正団員ヴェイセルがボロースの街に呼ばれたのは、ナギ、アキホ両名に関する報告の件であると思っていた。
団長オッテルは不在、だが、その周辺を固めている商人系騎士(騎士位を認められてはいるが、その活動は商人と大差ない)である中年の男が、ボロースに着くなりヴェイセルに接触してきた。
「オッテル団長の勘気がとけた。我らも随分と骨を折ったものだが、なに、お主ほどの力量の持ち主を、いつまでも野に置くわけにもいくまいて」
この男もまた、ヴェイセルをボロースより追い出した男の一人である。
それがこうした歩み寄りを見せているのだから、ヴェイセルのボロース復帰は既定路線なのだろう。
ぴんと来たヴェイセルはこの場では従順な顔をみせ、お世話になりましたと殊勝に頭を下げながら、最近のボロース事情を調べに動く。
オッテル騎士団内にはヴェイセルがもたらした利益を享受することで恩義を感じている者がいる。そんな者に密かに接触しヴェイセル復帰に関する話を聞くと、彼はとても憤慨した様子であった。
「ヴェイセルさんが差配した山林の高額きのこの採集、塩田開発、貝の養殖、全部、売り上げが激減しています。あいつら! ヴェイセルさんの忠告を悉く無視して、せっかくの事業台無しにしやがったんですよ!」
きのこ採集はヴェイセルがいなくなるなり狂ったようにきのこを取りまくった結果、翌年からいきなり収穫量が激減したとのこと。当たり前のことだが、その当たり前を理解できない者は多いものだ。ましてや新規開発事業となればなおさらで。
一地方で細々と食されてきたきのこを高級食材として売り出し定着させたのはヴェイセルであるが、これを引き継いだ馬鹿がやらかしたという話だ。
塩田開発は手順の簡略化を行なった結果作られた塩の品質が下がり、しかも塩田自体にも深刻な汚染が広がったため、低い品質の塩しか作れず塩作成にかかる手間も大きくなってしまった。
貝の養殖に至っては、まだ研究途上にもかかわらず大々的に養殖を広めた挙げ句、海の色が変わる異変により貝が全滅し、責任者は研究機関に責任を押し付け逃亡したとのこと。
これにはさしものヴェイセルも顔を覆って言葉もない模様。三年かけて立ちあげた事業を全部台無しにされたのだから無理もない。
これだけの事業をたった三年で次々立ちあげるヴェイセルも相当なものだが、とはいえ三年という月日は決して短くはない。
ヴェイセルはボロースに呼び戻された理由を察し、絶望的な気持ちで問うた。
「もしかしてこれ、全部俺になんとかしろって話か?」
「……おそらくは」
「今すぐソルナに帰りたい……」
ヴェイセルからこれらの利権を取り上げ好き放題していた連中は、密かにヴェイセルに接触しこれらへの解決を依頼したかったのだろうが、追放されたとはいえヴェイセルは騎士団正団員の地位を保ったままであり、この立場があれば団長オッテルに直接連絡をつけることも可能で、ヴェイセルに知られれば団長にも伝わってしまうため、これまでヴェイセルには一切報せはこなかったようだ。
ヴェイセルは決して権力闘争に無力なわけではないが、若くして大きな成果を挙げた彼に対する嫉妬やっかみは老若問わず多く、彼らによる悪意の波に飲み込まれてしまったのである。
ともかく現状の正確な把握からだ、と事業の現在に関する情報収集を依頼する。まだ命令は受けていないが、命令されてから動くようでは優れた人材であるといった評価は望めまい。
命令された時には、少なくとも事業改善の目星か、もしくは事業改善の余地なしという言葉に説得力をもたせるだけの理由を説明しなければならない。
ヴェイセルは彼の下を辞すると、また別の商人のところに出向く。
ボロースでは老舗の商会であるが、ヴェイセルが組織改革の骨子を提案し、これを商会に相応しい形に改善し運用することで大きく効率化を進めており、ヴェイセルには大きな恩を感じている店だ。
この商会の老会長は表向きはヴェイセルに対し中立を保っているが、目立たぬ形でなにかと便宜を図ってくれる数少ないヴェイセルの信頼できる味方である。
その老会長からヴェイセルは聞き逃せない話を聞いた。
「レンナルトがナギとアキホに仕掛けたですって!? しかも兵を率いて追撃に出たと!」
ドルトレヒトでの一件をヴェイセルはここで初めて聞けたのである。
焦るヴェイセルに老会長はその意図を正反対に受け取った。
「む、もしかしてそのナギとアキホとやら、お主の差し金であったのか? 確かにレンナルトが相手では、腕だけが自慢の力馬鹿なぞ物の数ではなかろうが……」
「あ、いや、そうではありません。あの二人の相手はレンナルトには荷が重すぎます。報告書にも書いたのですが、私でもアイツらには手出しできませんから」
「なんと、そこまでの強者か……ん? では何故レンナルトが仕掛けたことを厭うのだ? その二人組にレンナルトを殺させてしまえば話がはやかろう」
「あー、それはー、確かにそうではあるのですが……」
歯切れの悪いヴェイセル。付き合いの長い老会長はその可能性に気付いて眉をひそめる。
「……お主、また悪い癖が出たか? 裏切者レンナルトに情けをかけているのではあるまいな」
「そうやって簡単には割り切れぬものなのですよ。一応、私が手間暇かけて育てた人間ですし」
「お主が追放されたときアレがさんざお主を罵倒し嘲笑したのを忘れたか。ああ、忘れたのだろうなぁ……本当にお主ときたら……」
ヴェイセルはとても言い難そうにしながら口を開く。
「老、できれば、その、あの馬鹿に、大至急手紙を届けていただきたいのですが……」
「お主はなあ……そういうところ直せと何度も言うておるだろうが。そういうことしているから、此度も馬鹿共の尻拭いを押し付けられるのだぞ」
「いやぁ、それでも、ほら、きのこも塩も貝も、必死になって取り組んでる連中もいるのですから、さすがにほっとくというわけにも……ああ、あと紙とインクいただけますか? 今すぐ書きますので」
勝手にせい、と投げやりに言って、老会長は従者に用意をさせる。
この老会長ならば、軍事行動中の部隊の居場所を特定し、これに最速で手紙を届けさせるなんて真似もできてしまうのである。
手紙を書きながら、しかしヴェイセルの冷静な部分はレンナルトの生存は難しいとも考えている。
『街で仕掛けて生き残ったってんなら、あれからレンナルトも随分と成長したということだろう。あの二人に本気で狙われたら絶対に生き残れんからな。俺の知る以前のレンナルトなら無理だが、一度凌げた成長しただろう今のレンナルトならば、最悪の事態になる前に手を引く判断もできる、かもしれん』
しかし、とヴェイセルは嘆息する。
『わかっていたことだが、アイツらには絶対に手を出すなと報告したというのに、だーれも信じてくれないんだもんなー』
それは多分、レンナルトの追撃失敗の報告を聞くことになろうとも、変わらないだろうとヴェイセルは知っているのである。
やはり、緊張はする。
秋穂は木の幹の裏に立ち耳を澄ませる。
足音、近くに一つ。遠くに多数の人の気配。この一つは恐らく定時巡回だ。
見つからぬように静かに仕留める。できる自信はあるが、さあ行くぞという瞬間は緊張するものだ。
足の運びに注意し音を立てぬように。膝に葉が当たり、かさりと微かに音が聞こえる。
音を立ててしまったことではなく、そんな小さな音すら気になるほどに静音を保っていることに満足する秋穂。
背後から、剣を寝かせて肋骨にぶつからぬように、一息に刺し貫く。
刺した剣をそのままに敵兵を引きずり木陰に寝かせる。敵兵の持つ剣を奪い、元々使っていた剣は少しでも滴る血の量を減らすために刺したまま放置。
もう何度も何度も敵を刺してきたので、何処を刺せば一撃で仕留められるかもよくわかっている。知識は持っていたが、実行を伴わない知識はどうしても融通が利かなくなる。
刺し込む場所が多少ズレても、胴の内にある内臓を確実に損傷させられれば望んだ効果は発揮してくれると、何度かの実践により知った秋穂である。また肋骨に沿う形に刺せばより狙いやすくなることも。
武術としての技術とは別に、確実に人を殺傷する工夫を身に付けている秋穂だ。
時折、それがひどく後ろめたく、恐ろしく思えるのだが、そういった工夫を無邪気に誇る相棒の存在が、秋穂の救いとなってくれている。
一人殺しただけで、敵兵士は警戒を始めた。
『これだから強い軍隊ってのはもうっ』
楽はさせてもらえない。秋穂は位置を移動しつつ、一番外縁に配置している小隊に攻撃を仕掛ける。
「黒髪がっ!」
そう叫んだ声と同時に、秋穂の剣が兵の首を捉える。
側面から仕掛けたのだが、別の場所にいた兵士が踏み込む秋穂を見つけたのだ。
そのまま踏み込み、更に別の兵を狙う。だが、兵士たちは一斉に秋穂から離れるように動き始めた。それも一方向にではなく放射状、八方に向かって。
二人目は逃がさず仕留めたが、次の敵を見定める前に、敵の攻撃が始まる。
『弓っ!?』
彼らは皆、短弓を手にしていた。
近接戦闘をいっそ清々しいほどに放棄している。その迷いの無さは、これが指揮官による絶対命令だと秋穂に教えてくれた。
そしてこれがまた有効なのだ。
障害物の多い林の中であるが、八方に散った兵士たちがあちらこちらから射掛けてくるのだ。どの敵に対しどの遮蔽がどこまで有効か、全てを把握して動くのはおそろしく神経を使う作業になる。
それに弓ならば秋穂が距離を空けても射線さえ通っていれば攻撃ができる。
もちろん同士討ちの可能性もあろうが、きちんと狙って撃っていればそうそう誤射なぞしないものだ。
秋穂も即座に対策を打つ。素早く動く目標に射撃を当てるのは難しい。だから、走る。
身を低くし、藪や茂みを弾きながら駆ける。矢を見て避けるは諦める。死角からの矢はもう走って狙いを外させる以外に手はない。
左方、後方、上方、ひゅんひゅんと矢が飛ぶ音が恐ろしくてならない。
駆け抜けざまに剣を振り、その一刀のみにて確実に屠る。難しくはないが、一度斬るためにかかる労力を考えれば失敗をしている余裕はない。実戦の最中であるというだけでない緊張感が伴う。
『こういう時、凪ちゃんの力みすぎることはあっても緊張で力が出せないってことのない性格が羨ましくなるよ』
秋穂の標的になったとわかるや脇目もふらず逃げ始める兵に追いすがり、胴を横より斬り裂く。
すぐに真横から矢が飛んできた。首を後ろに下げてかわす。斬った兵士が倒れきる前に、その身体を回り込むように遮蔽にしながら移動する。この兵はもう死体も同然だが、彼に当たるような矢を射ってはこなかった。
少し進むと多少開けた場所になる。敵は秋穂をここに引き寄せ、遮蔽の無い状況で矢を射掛ける算段だと見抜く。
その思惑に乗る形で秋穂は開けた場所に向かう。誘い込むように、一番近くにいる兵がその開けた場所に向かって必死に走っている。これを追う秋穂は、開けた場所に飛び出す直前、すぐそこに立っていた木に、駆け寄る勢いそのままに全力で肘打ちを叩き込んだ。
それはさながら大戦斧の一撃。
木の丈は五メートルを超え、幹の太さは一メートル弱。そんな木の幹がただの一撃で半ばまで削り取られる。秋穂が抉った方向に向け、木が倒れてくる。これを両腕を広げてうんしょと受け止める。
「せーのっ!」
勢いよく、林の開けた場所にこの木を振り下ろした。
開けた場所であるからして、五メートルを超える木であろうと振り下ろすに十分な空間がある。誘うように逃げていた兵はこの一撃で圧し潰された。
大地を大きく跳ねた木を、今度は右方へと振り回す。秋穂が開けた場所に飛び出すなり矢を射掛けてやろうと構えていた兵が吹っ飛ばされる。
こうしている間に矢を射れば、なんて真似はできない。秋穂が大きな木を振り回しているのは、これを盾に用いているという面もあるからだ。
次に左方に木を振り回すと、木の裏に隠れていた兵が、隠れた木ごとなぎ倒される。
『リネスタードに置いてきた流星錘、持ってくればよかったかもしんない』
魔術により強化された流星錘なんていうレアなシロモノ、今後二度とお目にかかれないだろうが、投擲するなら短剣で十分という理由で置いてきたのは秋穂自身である。
そして短剣は、実は補充していないせいで残り本数が心もとなく、この後に控えているだろう強敵との戦闘の予備武器として取っておきたい。
結局、地道に潰していくしかないのである。そして、秋穂が地道に堅実に殺して回る選択を取ると、レンナルト側は対応が極めて難しくなる。つまりこの選択で正しいのだ。
仕方なくレンナルトは賭けに出る。
切り札の一つ、アルベルティナの猛者二人をそれぞれ凪と秋穂に当てるのだ。
レンナルトは既に、行方不明となったアーレンバリ流の二人を諦めている。ならば真っ向から抑え込める可能性があるのはダニエラとヴィルマルのみだ。これをぶつけるのなら、極めて優位な状況を立ち上げてからでなければならない。
もしこの二人が倒れるようなことがあったならば、レンナルトの勝率は著しく低下してしまうだろうから。
だが、今、賭けに出なければ最後の切り札を使う前に終わってしまう。レンナルトは待ち伏せさせていたダニエラとヴィルマルに、待ち伏せ場所から出ての迎撃を指示した。
ダニエラがこれまで過ごした時間の大半は、燃え滾るような憎悪と共にあった。
そういう性質なのか、はたまた生まれながらの呪いであるのか、ダニエラは子供のころからとてもとても嫉妬深い人間であった。
だがそれでも、逆にその嫉妬深さを原動力に自らを磨き上げ、女の身でありながら近隣に勝る者のない騎士としての技量を身に付けられた。
自身よりも劣った者ばかりの中でなら、ダニエラは平穏に過ごすことができる。そうなるために、ダニエラは自らを徹底的に鍛え上げた。
自身の嫉妬深いという変えようのない性質を、逆に利用してみせたのだ。そうできる自身を、ダニエラは誇らしくさえ思っていた。
だが、そんなコントロール下にあると思っていた自らの性質は、実はダニエラにもどうにもしようのない衝動であったと気付かされた。
恋愛が絡んだ時に。
婚約者ができてしばらくすると、ダニエラは自身にも嫉妬の憎悪が抑えきれなくなってきた。
決して愚かではないダニエラが嫉妬という感情に振り回され、遂には常時己の心中に憎悪が根付いているという状態にまでなった。
この世の全てが憎らしくてたまらない、この世の全てが恨めしくて仕方がない。何故、という問い掛けに意味はない。誰がどう言おうともダニエラの心中はそうなってしまっているのだから。
ダニエラは嫉妬を乗り越え、周囲の全てが己以下という平穏に辿り着いたことのある人間だ。だからこそ、平穏を渇望し嫉妬の憎悪で周囲を燃やしてまわる。
だが、恋より生じた嫉妬は、どこどこまでいっても平穏なぞ望むべくもなく、ダニエラは常に心に溢れんばかりの憎悪を抱えたまま生きるを余儀なくされる。
そんなダニエラに、救いがあったのだ。
アルベルティナという天使が、ダニエラより嫉妬の心全てを消し去ってくれたのだ。
人を、世界を、憎み続けるのはとても苦しいことなのだ。そんな世界に、二度と足を踏み入れたいとは思わない。
鬼女ダニエラは、だから、アルベルティナと共にあるのだ。
ヴィルマルにも、それが正しくないことだとわかっている。友を、家族を、大切にしたいという気持ちもあるのだ。
だが、思春期を迎える頃には、ヴィルマルにもどうしようもないほどにその衝動は膨れ上がっていた。
それでも、だ。抵抗はしたのだ。
剣を学ぶ者として、自らを鍛える過程で辛さや苦しさを堪えるなんてことはずっとやってきている。ヴィルマルは周囲の剣友同様に、自身もまたどれほど魅力的な女性がいようと心中荒れ狂う衝動を抑えきれると信じていた。
だが、恋が全てを台無しにした。
それ以外の全てを投げ打ってでも、と思えるほどの恋に出会ったヴィルマルは、友も、家族も、愛する者も、全てを文字通り投げ打つことになりながらもその恋を叶えた。
恋する相手から想われる可能性すらヴィルマルは投げ打ってしまっていたが。
そこから崩れていったヴィルマルであるが、抵抗はし続けていた。周囲の誰一人そうは思わなかったが、ヴィルマルは少しでも衝動を抑え込もうと様々な工夫を凝らしてきたのだ。
その全ての試みにおいて、男子の急所より滲みだす醜悪な衝動がヴィルマルの抵抗を蹂躙していった。
ヴィルマルは全てを失った。しかし失ってなおヴィルマルの衝動は止まることはなく、ヴィルマルのベッドでは常に悲鳴と苦悶のみが刻まれ続けていた。
心身共に疲れ果て、何もかもを諦め衝動全てに身を委ねようとしたその時、ヴィルマルはアルベルティナに出会ったのだ。
ほんの一曲。ただそれだけで、ヴィルマルはかつて子供のころにそうであった、性衝動なんてものに惑わされない穏やかで平穏な日々を取り戻すことができた。
数年ぶりに感じたそれは、これまで感じたどんな絶頂よりも、幸福で満ち足りたものであった。
男の中の男ヴィルマルは、だから、アルベルティナと共に行くことを決めたのだ。
アルベルティナの魔術は極めて特異な発動形式を持ち、また用いる者も少ない魅了の魔術を使う。
魅了の魔術に代表される他者の精神を操る系の魔術は、習得が極めて困難であり、また自在に操るのはより難しい、長い研究を必要とするものであった。
実際、アルベルティナもこの魔術を自身の意思で自在に操っているとはとても言い難い。
だがこの魔術自体は昔からあるもので、もちろん対策も存在する。
単純に魅了の魔術で放たれる魔力以上の魔力を対象が有していれば、魅了に限らず精神操作系の魔術は効果を発揮しない。また強固な意思を持つ人間には効果が薄いと言われている。
つまるところ程度の問題というわけだ。より強い魅了の魔術には、魔力を持つ者にも効果を及ぼすことがあるし、抵抗するための手段がより強ければ、魔術は効果を発揮しない。
平静を保つために用いられたアルベルティナの魔術以上の何かがあれば、アルベルティナの魔術は効果を失う、わけだ。
ダニエラは凪を、ヴィルマルは秋穂を見た。初めて見た。
「あ、ああ、あああああ! なんで!? どうしてまた! 私はもうアルベルティナに救われたんじゃなかったの!? なのにどうして! あんなにも美しい女がこの世にいるのよ! どうして! お前みたいなのがこの世で息をしているのよ! 今! すぐ! その綺麗な顔を炎で焼き潰してやるわ!」
「おっ! おまっ! おまええええええええ! なんでだ! なんでそんな! 綺麗な顔してんだよ! 抱き心地良さそうな身体してやがんだよ! 嘘だ! 俺はもう欲しくなんてねえ! 女なんざいらねえんだよ! なのにどうして! こんなにも欲しがっちまってんだよおおおおおお!」
誰も予想しない形で、この地での戦闘は第二幕を迎える。




