068.臨機応変って大事だよね
ご指摘をいただきまして、描写が致命的に欠けている部分を補足修正しました
三人一組が三つ。木々が鬱蒼と生い茂る森の中をまるで平原を行くが如く進む。彼らはとりたてて目立つ人間ではなく、突き抜けた能力を持つ者でもない。
だが森の中を藪をかき分け進む彼らの足は止まることなく一定の速度を保ち続け、何処まで歩いても疲れた様子も見せない。
そんな彼らの後に、多数の男たちが付き従う。
彼らと共に山をのぼりながら、派遣組合組合長補佐の男は感心したように言った。
「大したもんだな」
彼ら山の専門家たちのまとめ役である男は補佐の傍に控えている。
「訓練は欠かしておりませんので。こういう時のための我らですから」
「専門兵の訓練は確かヴェイセルの指示だったな」
派遣組合は地場の組織であるため、小規模であるのならソルナの街が抱える公の兵士に協力要請を出すなんて真似もできてしまう。
今回補佐が頼んだのは、ソルナの街が抱える山岳地用兵士である。
これはヴェイセルがまだオッテル騎士団に入る前、ソルナの街にいた頃に提唱したもので、山中での活動訓練を定期的に行なっている徴兵予定者を一定数常に確保しておく、というものだ。
山岳地以外にも河川での活動を主とする河川兵や、珍しいところでは糧食の管理や行軍予定の調整といったことを担当する後方勤務専門の兵もいる。
こういった訓練を行った者には別途給金が支払われるので出費は嵩むが、いざという時にとても重宝するのだ。
「この間も、川で溺れた子供を河川訓練を受けた者が助けたんだってな。つくづく、ヴェイセルをオッテル騎士団に持っていかれたのが残念でならんよ」
「アイツらも小遣い稼ぎになると喜んでますよ。……補佐さん、その女たち、ウチの連中が殺っても褒賞ってな出るんですよね」
「おう、もちろんだ。だがな、くれぐれも言っておくが余計なことは考えるなよ。殺すんだ。絶対に、殺すんだぞ。あの女の色香に惑わされたら女ごとてめえらもぶった斬るからな」
「へ、へい」
補佐は自らの手下を五十人も引き連れているが、今この場で最も頼りとしているのはこの山岳兵たちである。
彼らは山中行軍にてその優位性を証明しているが、彼らは山中での戦闘のための訓練をしているのだ。山中行軍はその一環に過ぎない。
派遣組合の中でも、気の荒い、もしくは人の言うことをロクに聞けない馬鹿は、組合長のほうに回してある。
そういう凶暴な連中をこそ組合長が好んだせいであるが、補佐からすれば山岳兵を小隊長とする統率された集団のほうがずっと強力であると思えてならないのだ。
この辺り、補佐はそもそもあまり暴力組織の一員らしからぬ人物であるのかもしれない。
そして補佐と同じ判断をする男がこの周辺にもう一人。
『なかなか、どうして。山をよく知っている男がいるではないか』
木の上、気配を消して枝の上に立ち、じっと組合の部隊を観察している、ワイアーム戦士団の戦士、長剣使いである。
長剣使いにとって部下たちとは小間使いである。
なので戦闘において頼りにすることはなく、逆に弱い雑魚敵を散らすていどにしか用いるつもりもない。
強い敵の前に出したら意味もなく死者が増えるだけだと考えており、彼らの矜持が満たされるよう適度な敵をあてがいつつ、強い敵は自身で倒す、といった足手まとい的扱いである。荷物を代わりに持ってくれる奴、といった便利な点が無ければ山中に連れてくることはなかっただろう。
己の剣術以外に興味を向けぬが、無為な人死には避けたいと考える、案外にまっとうな部分もある男だ。
そんな長剣使いからすればこの山岳兵を先導とする集団は、十分な警戒が必要な敵である。なので長剣使いは一人できたのだ。
『多少慣れたていどで、山中の俺を捉えられると思うなよ』
長剣使いが枝を蹴って跳ぶ。
がさり。
音は一つ。人間大の物体が枝を蹴ったに相応しい大きさの音であったが、山中にあってはそれほど不自然な音にも聞こえないし、そもそも組合の連中に聞こえるような距離ではない。
そして二歩目は最初と比べて格段に音が小さくなる。長剣使いの身体は枝葉の隙間を綺麗に潜り抜け、次の枝、次の枝へと迷いなく跳び進む。
最初に、最も勘の良い男を。
長剣使いの跳ぶ音に感づいた男が一人、二人。動きを止めて振り向く。近いほうを先に。
地上に飛び降りざま、長剣使いの剣が閃く。
障害物の多い木々の中にあって、彼の剣筋は斬れる枝葉のみを通って標的の首を半ばまで千切り斬る。
すぐに長剣使いは再び跳躍し、その驚くべき脚力により枝の上にまで跳び上がる。
もう一人の勘の良い男が叫ぶ。
「敵だ! 上からくるぞ!」
意味がわからなすぎて残る者は、それこそ山慣れした者ですら反応が遅れる。
その間にもう一人の勘の良い男を狙う。彼は咄嗟に剣を抜きつつ、長剣使いの位置から隠れるように木の幹の裏に。
彼の真横に着地。と同時に脇の下から真横に向けて剣を突き出す。長剣使いの位置からは男の居る場所が見えないはずなのに、その刃は正確に男の急所を貫く。そしてまた長剣使いは跳び上がる。
だが二度見れば反応できる者も増えてくる。
「猿みたいに上から降ってくるぞ! 弓を使え! まともに斬り合うな!」
山に慣れている、というだけではない。理解できぬ動きにも、その理屈などは考えず可能な対応を即座に選び指示する者に、これに文句一つ言わず整然と従う兵士たち。
『見くびっていたな。ソルナには実に良き兵がいる』
だが、長剣使いが今狙うべきは彼らではない。
それほどの練度を期待できない、補佐が引き連れてきたチンピラたちである。崩せるところからまず崩す。
長剣使いの移動が見えると、彼らも長剣使いの狙いに気付いたのだろう。大声で警告を発する。だが、それでも、チンピラたちにこの動きに対応しろというのは無理があろう。
もう一つ枝を蹴ったら下降に、といったところで長剣使いはなんと、空中にて身をよじり真横に一回転してみせる。
この際、握った長剣を同時に回転させることも忘れない。両刃の剣の刃が長剣使いの二の腕に当たっているが、革鎧で切れるのを防いでいる。
長剣使いの上方よりのしかかるような圧力が、剣の刃を当てている二の腕に重く深くかかっていて、これを逸らすために仕方なく長剣使いは枝への移動を断念し地上への落下を選ぶ。
半回転して着地。空中での突発的な挙動、そして外部よりの衝撃にも、長剣使いは上下を見失うことはなく、足より綺麗に着地。すぐさま跳躍し枝の上に。
『これは……』
ここは、薄暗い森の中だ。日の光も枝葉に遮られ届きにくい。なのに、その女がそこにいるのは誰にでも見えよう。
豪奢に輝く金の髪、背なにしなだれかかる二筋。これが昼なお暗い森の中にあって、驚くほどに目立って見える。
「……お前が、ナギか」
長剣使いと同じく枝の上に立つ不知火凪は、少し驚いた顔で長剣使いを見ていた。
「ふぅん、それできる人、居たんだ。やるじゃない」
全く同じ台詞を返してやりたい長剣使いだ。
長剣使いのこれまでの戦歴において、長剣使いのように木々の上を跳び回るなんて真似ができる者に出会ったことはなく、辛うじて噂にて、エルフがそうするというのを聞いたぐらいだ。
なので木々の上にて空中戦なんてものをやるハメになるのも想定外で。慎重に、しかし臆することのないよう長剣使いもまた枝上にて長剣を構える。
凪は笑って言った。
「貴方、かなりヤるみたいだし。私たちのは後回しにしない?」
そう言って凪が眼下を指さす。
優れた戦士と戦えるのなら望むところであるが、それを外野に邪魔されるのは確かに好ましいことではない。
長剣使いもまた笑い、言った。
「よかろう。途中で間抜けな怪我など負うんじゃないぞ」
「……どうしてこう、木の上跳べる奴ってのはどいつもこいつも偉そうな奴ばっかなのかしら……」
凪、長剣使い、二人は同時に眼下の組合の兵に向かい襲い掛かっていった。
あと、当人自覚はないようだが、木の上を跳ぶ奴の中には当然、不知火凪も含まれているだろうて。
山頂付近の巨岩の上で、偉そうに眼下の森を見下ろしながら、柊秋穂は両腕を組み笑う。
「殺し合いながら、潰し合いながら、登ってらっしゃい。最後に残った一番強い馬鹿を、私が手ずから殺してあげるわ」
そしてすぐに岩下の涼太とアルフォンスに向かって言う。
「なーんて言っておきながらさー、面白そうな敵がきたーとか言って自分はさっさと戦闘に混ざりに行くってどーなのかなー。ねー、どーなのかなー」
文句を言いたくなる秋穂の気持ちは涼太にもよくわかる。でもそれを言うがためにわざわざ岩の上に跳び乗ってまですることか、とも涼太は思うのである。
「アレはもうああいう生き物だと思って諦めろ。それに、途中で変に徒党を組まれても面倒だしな。連中は結局、協力の約束もしないまま山にきた。なら内輪もめを期待するだけじゃなく、個別に蹴散らすことを考えてもいいっちゃいい話だ。そういうことにしとこう」
ひらりひらりと大岩から飛び降りてくる秋穂。いい加減涼太も見慣れたが、それがお行儀の悪い動きにならない山中では、秋穂も凪もその驚くべき身体能力を隠したりはしない。ていうか自分が楽するために当たり前に駆使するようになっている。
すぐ傍に着地すると、秋穂はじっと涼太を見る。
「ほんとに、いいの?」
「おう」
その姿勢のまま、秋穂は涼太の目を見つめ続ける。涼太もまた、これを見返して動かず。
先に折れたのは秋穂であった。
「はぁ、わかったよ。じゃあ、私も行ってくる」
「気を付けろよ」
「…………。」
じとーっと涼太を見たあとで、秋穂は返事もなしに走り去っていった。
残ったのは涼太と、エルフのアルフォンスの二人だ。
しばし無言。
少し間を空けてから、アルフォンスが問うた。
「私が言うのもなんだが、あまりにも不用心ではないか?」
「じゃあ、やるか?」
「やらんやらん。私にとっても、この地で信用できる筋から戦力の紹介を受けられるのに半年もかかっているのだ。そんな好条件そう簡単に手放すものか」
大きく大きく息を吐く涼太。
「そいつは良かった。正直、アンタとケンカして生き残る自信、欠片もなかったんだ」
「はっ、それも何処まで本当だか。だが、何故わざわざこんな真似を?」
涼太は気が抜けた風で、地面に座り込む。
「絶対を保証するものじゃあないが、それでも、殺せる機会があったのに殺さなかった、そういう事実ってのは、お互いがお互いを信じるのに、いい材料になるだろ」
「あまり良い手とも思えんな」
「そう言ってくれるなよ。俺も油断できる相手が一人でも欲しかったんだよ」
涼太はごつごつした山の斜面に寝そべって空を見上げる。
「あー、おっかなかった。勝算はあったが、それでもかかってるのが自分の命となればやっぱビビるもんだな」
「私は逆に警戒心をこれでもかと刺激されているぞ。リョータは口と態度と内心が明らかに乖離しているからな」
「いやおいこらまて。俺今心の底からの正直な感想を口にしてるんだが」
「それを相手に信じてもらう努力を怠っているということだな。せいぜい頑張れ」
「そーいう面倒なのをやらずに済むよーな油断できる相手が欲しいんだよ! 俺は!」
はっはっは、と笑うアルフォンス。
アルフォンスのこの反応を見て、涼太は今後も今口にしたような油断しまくった本音をコイツに漏らしても大丈夫そうだ、と考えられた。
遠目、遠耳の術をアルフォンスの前で使ったのも、こちらが信頼できる相手だぞとアルフォンスに示す目的であった。
涼太は、損得勘定による味方と、そこから更に一歩進んだ感情的な部分にまで踏み込んだ味方とを別のものだと考えていて、アルフォンスとはきっとそういう間柄になれると判断していたのである。
涼太の企みを、もちろん秋穂も事前に聞いていた。
それが無謀かつ見返りのさして大きくないものだとも思っていたが、結局涼太に押し切られてしまった。
いや、勝算があるのはわかるのだが、失敗した時の危険が大きすぎる。
大丈夫だ、と涼太も秋穂も凪も思えるような材料を持ってはいるのだが、アルフォンスが秋穂たちに加わったのは裁判所での騒ぎの後、涼太と秋穂が貴族邸を襲撃している最中の話だ。
こんなもの、普通は罠だと断言してしまってもいいタイミングだろう。
そんな相手に無防備を晒そうというのだから、秋穂の不機嫌も納得のいく話だ。
「ほんっとにもう。涼太くんってば、私がどれだけ心配してるかぜんっぜんわかってないんだから。どうしてこういう無茶なことするかなぁ」
おおきな岩を跳び越す秋穂。
前方にある鬱蒼とした森にも、秋穂の足は止まらず。
がさりがさりと大きな音を立ててこの中を進んでいく。
言葉は止まらず、森を歩きながらぐちぐちと文句を呟く。
うろんな気配漂う森の中を不用意に進むのは怒りのせいか。
ななめに行く手を遮る倒木を、わざわざ蹴倒して進む。
「大体、凪ちゃんも凪ちゃんで『いいんじゃない。アルフォンスなら大丈夫だと思うし』じゃないよ。ほんっと、気に入った相手だととことん油断しちゃうんだから。そーいうところ、絶対直さないと……」
不意に秋穂は足を止めると、ゆっくりと周囲を見渡す。
前後左右もわからない深い森の中であるが、涼太の遠目遠耳の術により敵配置をあるていど把握していたので、その近辺についたのなら音を隠す。
そんな秋穂の用心を笑うかのように、彼方から人の声が聞こえてくる。
とても機嫌の良さそうな声。
秋穂が音もなく歩を進めると、声の内容も聞こえてくる。
色々と上機嫌に喚いているがそれらを要約すると、てこずらされた敵をようやく倒せたからここぞとばかりにトドメを刺して楽しんでいる、ようだ。
秋穂の視界の内に声の主が入ったが、やはり予想通りというか。死体相手にげらげら笑いながら剣を突き立てている男がいた。
『……悪趣味』
秋穂は、それと気付かれぬよう、声の主のみに視線を集中させ、それ以外は目に入らないという風を装いながら勢いよく踏み出した。
「あ?」
さすがに荒事慣れしているようで、男は飛び出した秋穂に即座に反応する。
反応されてしまったのならば抜剣を遅らせる理由もなくなった。
男の目が秋穂の剣の柄に向く。
咄嗟の判断で秋穂、剣を抜くのをやめる。男は自身の剣を攻撃ではなく受けに回してしまっている。
振りかぶる動きがないのなら、剣はそれほど怖い武器ではない。秋穂は無手のまま男の間合いの内へと飛び込み、左拳を脇腹に。
右前の構えであった男は、この拳をかわせぬとわかった瞬間、右前から身体を返し、胴の中央で受ける。
それでも、秋穂の踏み込んでの拳である。大地を深く踏み込み、衝撃で木々が揺れ動くほどの反作用より生じる拳の剛打に、男は斜め下に潰れるようにしながらごろごろと転がっていく。
「かっ! がはぁっ! はっ! あっがあはっ!」
呼吸も難しいのだろう。大地を転がり進みながら、奇妙な呼気を吐き出し続ける。
震脚を強くしすぎたせいか多少出遅れたが秋穂は転がる男の後を追う。
小細工は無用、とばかりに秋穂は男の真正面からまっすぐ最短距離を走り、トドメの一撃を突き出す。
『!?』
突き出した拳が男を貫くと同時に、真横から腕を斬り落とされる光景が見えた。
驚き腕を引く。さすがに腕一本と拳打一発では割に合わない。
足を止めた秋穂の目には、顔を歪め片膝立ちで秋穂に向かって剣を突き出す男の姿が。この姿勢で秋穂の腕を真横から斬り飛ばすのは本来ありえぬ動きだ。そのはずなのだが、秋穂には確かに見えたのだ。
『……なる、ほど。雑魚じゃないってことかな』
男は腹をなでながらゆっくりと立ち上がり、秋穂を憎々し気に睨んだのだが、その目から突然殺意が消えうせる。
「ん? お前? 黒髪? おいこら、お前、もしかしてブロル殺った奴か?」
男のいきなりの変化に、秋穂は呼吸を外されてしまう。その隙を、といった話ではないのが更に秋穂の困惑を呼ぶ。
「ブロル? ……軽業師とか名乗ってたアレ?」
「おお! ソイツだソイツ! お前だろ! ブロルぶっ殺しやがったの!」
発せられる声の調子から、男はすでに秋穂の一撃からあるていど回復していると秋穂は見た。
完全に回復される前に攻めるべきでもあるのだが、今あの男は時間稼ぎを仕掛けてきている。となれば、時間が稼げるまでは男の持つ情報なりを秋穂に提示し、その興味を引こうとするはず。
ならば乗ってもそれほどマイナスではないと秋穂は判断した。
「そうだよ。貴方は?」
「ブルーノ。ソルナのブルーノだ。よっしよーっし、二つ目で見つけるとか俺運良すぎだろ。うはは、やっぱり俺ぁこういう博打にゃ強ぇんだよなぁ」
やはり殺気は見えない。
小首をかしげつつ問う秋穂。
「えっと、その軽業師くんの友達?」
「そーいうこった。はっははは、すっげぇよな。この、俺が、敵討ちしようってんだからな。笑っちまうぜ。オッテル騎士団もぞろぞろ来てやがるが、俺の知ったことじゃねえ、俺はブロルの敵が討てりゃそれでいいんだよ」
「キミ、友達少なそうだしね。敵討ちの機会も滅多にないでしょ。で、オッテル騎士団はどんだけ来てるの?」
「全部合わせりゃ百は超えるか。お前のところの金髪もアホなことするもんだ、ウチの支部長の話じゃ殺し屋エイターも来てるって話だぜ」
思わず噴き出しそうになるのを堪える秋穂。
「ありゃりゃ、そーりゃたーいへーんだー」
「援軍のアテでもあるのか……まあ、いい。そういうのはもう、どうでもいい。俺も十分、回復させてもらった」
「あっそ。じゃ、頑張って敵討ちしてみなよ。機会は一度っきりだよ」
ブルーノの気配が、重苦しいぬめりを伴ったものへと変化していく。
「殺す、殺す、ぶっ殺す。手足をバラバラに、顔中斬り刻んで、時間をかけて、徹底的に。てめぇは、楽に死ねると思うなよ」
シーラがまとう殺意に似ている。死を無造作にばらまくことに一切の躊躇がない、殺人鬼の気配だ。
秋穂は小さく、強く、呼気を吐き出し小声で呟いた。
「……さーて。こっからしんどいけど、頑張ろうっ」
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