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誰だ、こいつら喚んだ馬鹿は  作者: 赤木一広(和)
第十四章 黄昏前
245/272

245.みんなが嫌いな後始末


 ランドスカープ侵攻軍の中でも退却できた兵は、出兵時の半分、三万以下であった。

 カテガット峡谷を抜けるまでにさんざん追いすがられたのもそうだが、アーサ国内にまでランドスカープ軍は追撃してきており、いち早くアーサ国内に潜入し暴れ回った騎馬隊や、カテガット峡谷をすら抜けてきた追撃隊本隊により、アーサの都市ヘルシングボリが陥落してしまうほどであった。

 この退却をどうにかこうにかやりとげたのは、本陣壊滅時に、逃げる味方兵に踏まれて気絶していた将校の一人である。

 彼は他の将同様に、ランドスカープ軍の追撃がヘルシングボリにまで届くとは思っていなかった。


「そもそもっ、ランドスカープの補給線はあのバカ領主のところで途絶えるって話だっただろうが」


 かねてよりこのカテガット峡谷は、アーサ軍による侵攻に用いるべく準備されていた進路で、アーサによる奇襲を察知し即座に最善を選ぶ、なんて真似ができないよう手配されていたのだ。

 元々ランドスカープとアーサ間の交易路であったここをアーサが閉鎖してしまえば、この土地に価値なぞなくなる。

 経済的にも閉塞し、それでいて、王都圏との交易も不要となるようアーサ側から手を打った。この土地のみで経済的に完結できるようにしておいたのだ。

 後は領主一代分も年月を稼げれば、地元しか見えぬ愚かな統治者群の完成である。はずだった。


「……万全の補給を得た万の軍相手では、そりゃヘルシングボリの防衛なんぞできんわ」


 数ではいまだにアーサ軍の方が勝っている。それでも、敗軍をまとめ退却を指揮したこの男は、今のこの敗軍が攻撃命令に従ってくれるとは思っていなかった。

 中には意気を吐く将もいるが、攻城戦の時からここまでさんざっぱら痛めつけられてきた兵たちは、もうどうにもならないところまで消耗してしまっていた。

 途中、スヴァルトアールブが多数殺されただのといった話も聞こえたが、彼からすればもう知ったことではない。


「どの道、王都に戻れば俺が責任を取らなきゃならん。……はっ、妾腹の俺が五万の軍の責任をとるか。大層な出世だな」


 彼が今考えているのは、王都に帰還し王の前でこの首斬り落とすその瞬間まで、どれだけ一人の男としてかっこうつけられるか、だけであった。






 ハーニンゲ独立領にて、現在馬鹿みたいに増えた仕事を泣きそうになりながら処理しているハッセ・ロセアンは、あがってきた一つの報告書を読んで眉根を顰めた。


「やわらかいパン?」


 ハッセの言葉に、この報告書をもたらした執事は廊下に向かって合図を出す。すると、そちらで控えていた者が室内に台車のついたワゴンを運びこんでくる。

 載っているのは軽食だ。報告書にあったやわらかく丸いパンが複数と、誰かさんが要求したせいで山のように送られてきた砂糖をふんだんに用いたジャム、そして調味料やらちょっとしたおかずやらがある。

 執事は手際よくこのパンにまずはジャムをつけ、ハッセに手渡す。


「え、いや、まあ、食えというのならば構わんが……」


 そして食べてしまってとんでもない衝撃顔を晒したハッセに、執事は次々と別の具材を使ったパンを差し出してくる。

 まずは全てをさておき全部食え、という執事無言の主張に従い全部を食った後で、ハッセはぼつりと呟く。


「お前の私見でいい。どういう話かわかるか?」

「では僭越ながら。アキホ様がハーニンゲでもこのパンを食べたいとあちらに申請し、本来この味に相応しい扱いをされるはずであったパンの作り方を、あちらは断腸の思いでこちらに融通した。ですが、当のアキホ様はこの件にかんして何も言葉を残さなかったことを考えますに、そもそもからしてアキホ様は、このパンの経済的価値に全く気付いていなかった、という話ではないかと」


 全く同じことを考えていたらしいハッセは両手で顔を覆ってしまった。


「……誰か、誰でもいいからこのやるせない現実を何とかしてくれ」

「心中お察しいたします」


 報告書を読むに、このパン酵母というものが肝となる技術であり、これの取り扱いに関して、ハッセの側も完全に秘匿情報とした上で再度ランドスカープ側と交渉する、という方向性に持っていくことになった。

 ハッセほどの男に弱音を吐かせたアキホさんの後始末であるが、ハッセが頭を悩ませているのはこのことばかりではない。

 ハッセが執事に目で促すと、執事は首を横に振った。


「新たな情報はありません。アーサ側は殿下の件に関して完全に沈黙を保ったままです」

「何も言わず、ただ取引だけを絞ってきたというのがどうにも解せん。アーサ国内の情報を隠匿することが目的か?」


 現在アーサはハーニンゲに対し輸出入の大幅な制限を課してきている。だが、昨日秋穂が大暴れした時にアーサの王子が殺された件に関して、アーサ側から一切の発言はないままなのだ。

 ランドスカープからの取引攻勢が激化している中でのこの所業に、アーサと常日頃から取引してきた商家たちは皆この世の終わりのような顔をしている。


「五万が負けたことによほど国内が動揺していると、そういうことか? としても、オージン王が、なあ。どうにも想像がつかん。ああ、それと……」


 それ以上は言わせず、執事が続ける。


「第三報にありました、確定情報です。カテガット砦の攻防戦において、アーサ軍本陣を極少数(二人)で強襲しエッベ将軍を討ち取ったのは、アキホ様とナギ様だそうです」


 クソでかいため息をつくハッセ。


「…………このやるせない現実を、どうにかしてくれる者はいないものかなぁ」







「はえー」


 と、気の抜けた声を出しているのは、リネスタードにてエルフのスキールニルから報告を受けた同じくエルフのイングであった。

 スキールニルは信じられぬと、顔中でそう言っている。


「ナギもアキホも、腕が立つというのはわかっていましたが、まさか、あの、硬骨のスラーインをすら倒すほどとは」

「うーん、私がこれまで見てきた人間の中でも、一番強いかもしんないねー、あの二人。……あっ! そうだいいこと思いついた!」


 うさんくさそうな顔でイングを見るスキールニル。


「いいことですか?」

「そう! 今すぐ連絡しよっと!」


 そう言って術を唱えるイング。とても嫌な予感がするスキールニル。イングが長い詠唱が必要なほどの術を使うというのは、確かにスキールニルにとって警戒に値するものであろう。

 唐突に、イングの前にとても鮮明な大きな絵が映し出される。

 その絵は一人のエルフ、イェルハルドを中心に映し出されていて、映像の端の方に見知らぬ人間が数人うつっている。


『うーむ、人間の作る食事というものは、どうしてこうも美味いものばかりなのか……』


 そう一人呟くイェルハルドは、口にパンをくわえたままでこちらへと振り向く。


『おい、おい、おいっ。イング様おいこらこの野郎。いきなり何をしているか』

「おーし成功っ、ねえねえ聞いてよイェルハルド、実はさー」

『うるさい黙れイング様。スキールニル、お前がついていて何をしている』

「とりあえず付き人のせいにして文句言うの止めてもらえませんかね。イング様の思慮が道端の水たまりていどの浅さしかないのは今に始まったことじゃないでしょう」

『そ、れ、で、も、だ。この、誰がどー見てもイング様にしか使えんよーなクソふざけた魔術を、人間の前に易々と晒させるんじゃあない』

「ここから王都までどれだけ距離あるんだか。誰ですかこの人にこんな馬鹿魔力与えたの」

『愚か極まる人間共だ。ああ、本当に、イング様を見るたび、如何に人間が愚かしい存在かを幾度でも確認させられるな』

「……ねー、二人共さー、そうやって遠回しに私のこといじめるのやめてよー」

『極めて率直にそう言っとるんだがな。ああ、少し待て。おい、お主ら、悪いが少し席を外してくれんか』


 絵の向こうでイェルハルドがそう言うと、突然の魔術に目を丸くしていた周囲にいた人間は、言われるがままに席を外してくれた。

 そしてイングはといえば、ちょっと気分を害した様子で口をとがらせる。


「なによー、せっかく私が面白い話してあげよーと思ったのに」

『ああ、面白い、重要な話であることを切に願う。これだけの大魔術が下らんことに使われたなんて考えたくもない』

「ふふーん、まあ聞きなさいよ。あのね、ドヴェルグの硬骨のスラーインを、ナギとアキホが二人だけで仕留めちゃったのよ」


 ドヴェルグとはスヴァルトアールブの蔑称であり、年経たエルフが好んで使う言い回しだ。


『………………な、に?』

「だからー、ついさっき、スラーインをナギとアキホがアーサに乗り込んでぶっ殺したーって話。スキールニルが向こうの人間と連絡して直接聞いたから間違いないわ」


 絵の中でイェルハルドはスキールニルに目で問うと、スキールニルも頷いて返した。


「事実です」

『そんなに弱くなっていたのか?』

「さて。私は直接見てはおりませんので。ナギやアキホとは手合わせしたのでしょう? そちらの方がその辺は把握できるのではないでしょうか」

『むむ、アレが二人がかりか。確かに、それだとワシもちとしんどくはある。かといって、負けるか普通?』

「イェルハルド様の普通というのがどれほどを指すのかはわかりませんが、ナギ、アキホ、マグヌスの三人で、スラーインの他にスヴァルトアールブ七人も仕留めています。アルフォンスは手を出さなかったようですし……」

『待て。アルフォンスが向こうにいて、それでスラーインと戦おうというのに手を出さなかったと?』

「手を出していたら、生き残っていたとしても私が殺しています。ま、さ、か、イェルハルド様はそれを責めたてるおつもりでは、ないでしょう、ね」

『え、あ、いや、じゃがな、エルフ流暗黒格闘術の使い手が、スラーインを前に怖気づくなぞと……』

「怖気づこうと、勇み狂おうと、エルフが、スヴァルトアールブに、手を出したら絶対にダメですよね。また、戦を、始める気ですか? 森に確認も取らず、個人が、独断で」

『あ、あー、いやー、うむ、アルフォンスも、随分と大人になったもんじゃのー。いやいや、実に頼もしい男じゃ、うむうむ』

「もういいです。今すぐ森から帰還命令を出してもらいますので」

『待て! ワシが悪かったからホント待て! だ、大体だな! 今はそれどころではない! イング様! そもそもあの二人は何故スラーインを狙ったのか!』


 事情の説明をすると、イェルハルドもまたイングやスキールニルと同じように首をかしげる。

 エルフ、それもイングが絡む可能性すらある中で、アルベルティナ拉致を強行する理由がわからないのだ。しかもその作戦に、スヴァルトアールブの重鎮であるスラーインが出張ってくる理由も。

 そして今後の動きも全く読めない。

 イェルハルドが小首をかしげて言う。


『人間をさらって、ふざけんな返せと怒鳴り込まれ、挙げ句剣で無理強いしたら反撃されて殺された? ドヴェルグはコレどーケリつけるつもりなんじゃろな。正直、ワシならあまりの惨めさに首くくりたくなるじゃろうが』


 ぞっとした顔のイングである。


「さすがの私も、今回ばっかりは連中に同情しちゃうかも。そんな話を、しかもやらかしたのがスラーインだなんて言われたら、うわー、うわー、うわー、情けなくてもう種として立ち直れなさそー」

『まったくじゃ。誰がこの件の手打ちを仕切るかしらんが、ひどい貧乏くじを引かされるもんじゃのー』


 スヴァルトアールブが逆ギレするとはどちらも思っていない。何やかやと、エルフはスヴァルトアールブを信頼している。道理を外したままで他者を捻じ伏せるような真似はしない、と信じているのだ。

 そしてそれは、エルフという知性溢れる種族が信じるソレは、真実でもあった。




 スヴァルトアールブが洞窟の中で過ごすのは、土中の鉱物資源を得るためであったが、その過程で何度か洒落にならないものを掘り出してしまったりもしている。

 現在、アーサ国ケブネカイセ山が特級警戒地域となってしまっているのは、スヴァルトアールブが掘りだしてしまったものが原因である。

 そんな幾つかの洒落にならないうっかりを乗り越えてきたスヴァルトアールブだとて、今回の顛末に関してはもう、顔を覆って項垂れるぐらいしかできることはない。

 老スヴァルトアールブがぽつりと溢す。


「人間をみくびるな、と言った。甘く見るなとも、優れた者がいるとも言った。だが、我らスヴァルトアールブに勝る戦士がいるとも思わないし、ましてやスラーインが敗死するなぞと、考えてすらおらなんだわ。普通、スヴァルトアールブが人間に負けるか?」


 褐色肌ですらわかるほどに青ざめた顔のスヴァルトアールブが応える。


「アーサとの交渉ならばいい。経験もある。だがな、ランドスカープにわざわざ乗り込んで、人をさらってきたってどういうことだ。スラーインは何をしておるのだ?」


 また別のスヴァルトアールブも言う。


「アレが何やら画策しておるのは知っておったよ。あまり好ましくない所業に手を出しておろうとも思っておった。だがな、ここまで、ここまでのやらかしはありえんだろう。人間との交流にも長けていたスラーインが何故にここまで愚かしい真似をしでかしたのか」


 スラーインと近い縁戚関係にある一人が、とても嫌そうな顔をしながら言った。


「ランドスカープとの手打ちの交渉にはワシが行こう。人間との交流を続けておった甲斐があるというものよ、あちらの事情を教わりながら交渉の手助けを頼もう」

「いや、無理だぞそれ。ほんの少し前、アーサからランドスカープに戦を仕掛けたところであるからな。アーサの人間を案内人にあちらの国に出向くなんてしたら、それこそケンカを売っているようなものだ」

「少し? 人間ならば一世代も経っていればけろっとしているもんだろう」

「一世代どころか、まだ一月も経っとらん」

「……十年でも一年でもなく、一月?」

「うむ」


 全員が一斉にクソデカため息を吐いた。

 スヴァルトアールブは今回、その重鎮であり人間一人とは比べようもないほどに重要な人物を失った。

 だがその裏で、道理に背いた非道をスヴァルトアールブの側がランドスカープの側にしでかしていることを、スラーインが失われたことで察した。

 隣国からわざわざ出向いてきて、それもスラーインを討ち取るほどの勇者を特攻覚悟で送り込んできたというのだから、ランドスカープの側によほどの理由があった、と彼らは理性的に判断したのである。

 任せきりであったとはいえ、当のスラーインが失われているのだから、彼らスヴァルトアールブ首脳部が本気で調べればスラーインの部下たちが如何に抗しようとこれを妨げることはできないのだ。

 更に別のスヴァルトアールブが言う。


「スラーインの後任は俺がやる。アーサとは、少し距離を置こう。オージン王もスラーインが失われたとなれば納得してくれよう」


 アーサがランドスカープに対し敵愾心を燃やし何かと仕掛けている、というのはスヴァルトアールブ重鎮たちも知っていることだ。

 アーサの王オージンと深い友誼を結んでいるスラーインが、これに付き合った結果が今回の出来事だと重鎮たちは考えたのだ。故に、アーサから距離を置くと。

 そう、アーサとスヴァルトアールブとは、協力関係ではあっても同一組織ではない。そして、両者の架け橋となっていたスラーインは、既に亡いのである。






 カテガット砦傍の領地に代官として赴任した男は、王都圏にいたなら即座に処断されているであろう極めて愚かな領主一族を調べる中で、アーサが仕掛けていた陰謀に気付いた。

 それを見た代官が真っ先に思ったことは。


『よかった』


 であった。辺境とはいえ自国の重要な任務を担っている貴族が、こうまで愚かしいというのは情けなくも恥ずかしくも思えることで、それがアーサの謀略によるものだったというのであればとても快く自らを納得させられるというものだ。

 そして、わざわざ後方支援態勢を確保するために自身を手配し準備を指示した王とヴェイセル将軍の慧眼に改めて感服する。

 両者共、王都圏での活動はここ最近になってからだが、なるほど確かに、いきなり国家の主流に立つだけはある、とこちらもまた納得できる話であった。

 そんな相手の内の一人、ヴェイセル将軍が王都への帰還途上にて、この代官と打ち合わせをする予定となっていた。

 その場で、ヴェイセル将軍からあまり聞きたい類のものではない話を聞かされることになる。


「アーサの対応があまりに不自然すぎる」


 そう言ってヴェイセル将軍が告げたのは、国内をすっからかんにするかの如き五万の出兵や、ハーニンゲに対しランドスカープが進出を試みているというのに、あちらからは一切対応する気配がないこと。

 これらを挙げて、あまりにも不可解なことが連続して起こり過ぎていると言う。


「ヴェイセル将軍にも、向こうの狙いは読めませんか」


 代官がこちらで入手したアーサの工作に関する説明をすると、ヴェイセルも大きく頷く。


「警戒を密にしろ、としか言えん。だが、まあ単純な話だが、こちらで観測できる限りにおいて、五万は最大の動員可能兵数であったはずだ。だが、これを全て用いて攻め込んできたということは、それを国内諸勢力に納得させられたということは、コレ以外にも本土に戦力があるからとは思えんか?」

「それがどのようなものかは……」

「すまん、まるで見当もつかん。そもそもアーサの国力からすれば、あの兵数が限界であるはずなのだ。だが」

「はい。こちらへの陽動、戦力があると見せかける、国全体を挙げてのそんな真似は、さしものオージン王とて成し得るものとは思えません。だから、計算上はないはずですが、あるとアーサ国内諸勢力が納得するだけのものがあるはず、なのでしょう」


 そして代官は少し恨みがましい目をヴェイセルに向ける。


「で、私はもう少しの間、ここに残って警戒していろと」

「本当に申し訳ないと思っているんだが」

「ええ、ええ、そうでしょうとも。将軍を一人でも置いていっていただけると助かるのですが」

「シェル将軍に話は通してある、兵数は三千だ」


 咄嗟に代官の頭に、足りないのでは、といった言葉が思い浮かんだが、軍事のことをこの、つい先日倍以上の兵を相手に圧倒的勝利をもぎとってきた将軍に問うのはあまりにも愚かな行為だと思い至りぐっと堪える。

 そして問うのだ。


「本命は何処だと?」

「アーサに兵がいればの話だが…………本命は、海かな」






 柊秋穂は考えていた。

 アーサとランドスカープで大規模な戦争があり、これがランドスカープの勝利で終わった。

 そしてハーニンゲでもランドスカープ勢力が浸透しているという。

 現状、アーサの威勢は大きく押し返されており、アーサも最早大きな攻勢は難しいだろうと言われている。

 ならばもう、今回のような突発的に顔出した方がいいと思えるような事件は起きにくいということだ。


「なら、今度こそかんぺきに休暇を過ごすというのはどうかなっ」


 そう言われた不知火凪も考え深げに顎に手を当てる。


「そうなのよねー。それに予定してたアーサ行きも、戦争に参加したことを考えると、今の私たちが行ったらもうそれだけで開戦の合図みたいなもんになっちゃうでしょうし」


 アーサ側からすればそんなものずっと以前からそうだったのだが、凪の思考の内では、カテガットの戦以前であればまだアーサ国内に入ってもそれ自体が揉め事になるとは考えていなかった。

 それに凪も秋穂も涼太から経済に関する数字は幾つも聞いている。

 現状、ランドスカープは対外戦争に精を出すよりも、国内をしっかりと整える方がより効率的な発展が望めると二人にもわかってはいるのだ。

 で、と凪は言葉を続ける。


「何処か休暇の候補地とかあるの?」

「それなんだけどねー。ほら、山は行ったしさ、そしたら……」


 凪と秋穂は同時に頷く。


「「次は海っ!」」




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― 新着の感想 ―
アーサからしたら死神以外何者でもない。征く先々で待ち構えている
[一言] ああ、アーサ側の「こっちに来んな!」という叫びが聞こえてくるかのようだ。
[一言] 赤潮の由来が変わってしまうw
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