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孤独な受験勉強のはじまり

2月4日に東京。僕は雪のない景色が少し不思議な感じを覚えた。

たった2回、北海道で冬を過ごしただけど。

今は、摩周町も周辺も雪景色。白の世界だった。


こちらのほうが暖かいはずなのに、東京の家は、しばらく誰もいなかったので、

めちゃ寒い。ピアノのある音楽室だけ、かろうじて暖かい。

僕は自分の部屋と居間の暖房を、最強にした。北海道の冬の室内は暖かいんだな。

僕はすっかりそれに慣れてしまったらしい。


ばあちゃんからは、冷凍しておけるような惣菜を、持たされた。

今日は、雪は降っていたけれど、飛行機はちゃんと飛びました。

北海道の空港は除雪体制は、万全らしい。


荷物で、冷蔵庫に入れるものをかたして、お湯をわかしてポットに入れておいた。

すぐ、コーヒーが飲めるよう、音楽室に一式持って行く。

簡単に予備練習で、音階やオクターブなどの基礎練習をした後で、

バッハの受験曲の練習をした。


僕の弾く平均律2集5番、前奏曲は軽快でリズミックな曲だ。

オーケストラの音のように、この曲を弾きたいんだ。

ラッパのファンファーレのように、ホルンの和音のように。

努力はしてるんだけどな。思った通りの音色は出たりでなかったりだ。

橋田は2集でも1番だ。

この間の橋田の演奏は、”その旋律ロマンチックだよね、わかるんだけどさやりすぎ”

って、感をもったけど、あれはあれでいいのかもしれない。

受験用では、ちょっと減点になるかもしれないけど。

バッハは、難しい、何度弾いても、その都度、新しい疑問がわいてくる。


時計を見ると、もう9時半だ。

ここについたのが4時で、練習しはじめたのが5時半だから、さすがに

お腹がすいたかも。今日の夕食は、ばあちゃんの惣菜と、

釧路空港で買った空弁ってやつだ。

僕は、ポットを持って、居間へ移動。

一人で夕食をいただく。バランスはとれてるけど、一人だけの食事って寂しい。

よく考えると、食事の時、”いつも誰かと一緒”は、摩周の祖父母の家に行ってからだ。

東京で育った15年間、記憶のある小4くらいからは、一人の食事も多かった。

その時は、寂しいって感じなかったんだけどな。


食事、10分で終了。携帯でメールチェック。

橋田からメールがきてた。


”芸大受験終了。センター試験で惨敗の分、実技で頑張ったけど、

楽典や新曲はともかく、受験曲は、演奏は緊張した。

弾く前から、周りの受験生が自分より上手く思えて、自信失いかけた。

で、演奏は、試験官の前で、テンション上がりまくって、バッハでやらかして

しまった。前に言われた”やりすぎ”ってやつだ。

試験官、バッハを聞いた時点で”アウト~”って思ったかな。


経験者からのアドバイスー回りの受験生を気にしない事。自分は自分だ。

そのうち、遊びに行くからよろしく”


遊びに来るって、気楽だよな・・。

橋田は邦立のほうは1月に進級試験は受かったってメールきてたし。

決めた。遊びに来たときには、あいつに料理を作らせよう。

そのくらいしてもいいだろう?橋田。


芸大といえば、横田君も受けたはずだ。

彼が東京に出発する前の日に、激賞のメールは送ったけど。

試験がどうだったかは、メールはないな


ー・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

食休みをいれ、オフロに入ったあと、練習再開。


今度はショパンのエチュード 10-4.

”ショパンの曲の中で僕に足りないもの”は、感情をもっといれること、

というより、情感を、もっと出すことかな。

僕がこの曲で感じる事は、”追いかけられてる気分と、はじけた心”かな

今の自分、そのままじゃん。でも、上手くいかない。ちょっとオーバーに

橋田っぽく弾いても、今度は僕自身が、それじゃ納得できないんだ。


まだ2時間ちょっとしか、エチュード練習してないけど、指が限界だったので

休憩。濃いめのコーヒーに砂糖どっさり入れて、ショパンの事を考える。

ポロネーズとかマズルカとか、ポーランドの民謡を取り入れた事から、

ショパン=ポーランドになりがちだけど、本格的に音楽の勉強と活動をしたのは、

彼が故郷をあとにし、パリを拠点にしてからだ。

当時から華やかなパリのサロン文化の中、ショパンの音楽は、アマチュアの

ピアノ弾きに愛されていった。ポーランド的というより、パリっぽい。


そんな事を考えてるうちに、音楽室のソファで寝てしまったようだ。

うすら寒くて目が覚めると午前3時、それからそのままソファで朝まで寝た。

音楽室の温度を高めに設定して、毛布だけ掛けてねた。


朝起きたら、ソファで寝たせいか、体が痛い。温度、高めにしてたおかげで、

風邪をひかなかったのは、不幸中の幸い。

今日から音楽室に布団を持ってこよう。

やっぱ、1日目から、自己管理できないダメダメ受験生になってしまった


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