表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/210

それぞれの母

「え?今日って、勉強会だった?」

青野は、初めて聞いたって顔だ。


ちゃんと話を聞いてなかったな。青野。

”明日、脇坂と山崎と一緒に、ウチで、泊りがけで英語の勉強会をするから、

青野もこないか”

そう僕が誘った時、”おう、行く行く。明日な”と軽く返事して、用事があるのか

急いで教室を出て行ったんだっけ。


「せっかくポテチとか用意して、わくわくして来たのに、勉強か・・」

部活も引退した青野は、ちょっと退屈気味だったらしく。

”お泊り会”を楽しみにしてたらしい。


まあ、でも結局、勉強半分くらいで、後はたべっただけになったのだけど。


夕食は、ばあちゃんは、おにぎりとジンギスカンにしてくれた。

もう少し、暖かい時期なら外でBQもよかったんだけど。


「やっぱ、北海道人はジンギスカンだよな。旨いし安いし。

牛も鹿もいいけど、子羊肉が最高」


ちょっとまて、鹿?


「青野の所では、鹿の飼育もしてるんですか?」

脇坂が、真面目に聞いてる

「いや、鹿肉はもっぱら、近所のハンターのおじさんからのもらいもの。

鹿を飼う人もいるけど、”りゅうつうけいろ”ってやつ?

それがキチっとしてないので、安定した経営にならないんだ。

野生のシカ肉は、今いちなんだよな」


脇坂が、なるほどと聞いてる。彼も道産子だから、話が通じるんだな。

僕は、最初、冗談かと思った。


「北海道で羊を食べる習慣があるのは、開拓に入った時、羊毛もとれて

肉にもなる羊が、家畜として奨励されたんだそうだよ」

じいちゃんも、話に加わり、北海道の食肉事情の話にはながさいた。

そういえば、僕が北海道にきて、シャブシャブが夕食にでたとき、

肉がラム(子羊肉)だったので、本当に驚いた。


ー・-・-・-・-・--・-・-

夕食後、さっそく勉強 の準備はした。

山崎は、脇坂のもってきた タイム誌英語版 の文章をみて、ウヘ~

って顔をしてる。僕はなんの用意もしてない青野に、前に作った

学校のテスト対策用のプリントをそろえた。


「じゃあ、最初、CDをつかって聞き取りテストをしよう。

これは、英検用。まず、小手調べに4級から。

順にレベルアップしていこう」


当然ながら、青野は3級のリスニングでも四苦八苦してた。

当然だよな。学校の授業だけではリスニング力はつかない。

リスニング問題文の説明を僕がしたあと、2年の時からのテツト用プリント

を、青野に挑戦してもらうことにした。


3人で、まず、高校卒業程度の英単語と熟語の、問題を出し合い。

それから、脇坂と山崎は、さっそくタイム誌の日本語訳に挑戦。

僕もやったけど、単語がわからないのが多すぎて難しかった。


青野がねをあげた

「だ~無理無理。俺は英語に嫌われてるんだ。さっぱりわからん。

休憩休憩。コーヒーいれくるわ」

じゃ、僕もと、一緒に台所に向かう。


居間では、じいちゃんとばあちゃんが、TVを見てた。

「美里ちゃんは?もう寝たの?」

「なんだか、今日の食事が大勢で楽しかったらしく、はしゃいでたからね。

疲れたんだろう。もう、ぐっすりさ」


青野が、神妙な顔をしてる。

山崎兄妹がウチにいる経緯は、簡単には話してある。

家族が多く仲が良い青野家だから、山崎の状況は想像できないだろう。


勉強してるはずだった脇坂と山崎は、なんだか意気投合してる。

それぞれの母親の悪口だった。


「僕の母は、見栄っ張りのくせに、自分では何もしません。

その性格は僕の嫌いな部類にはいります。父にその事を話すと、

”それは母親に知られないようにしないとダメだ。お前を産んで

くれた事だけは、感謝しないと”と、諭されました」


脇坂が、母親を嫌ってるのはうすうすわかってた。

性格的にあわない親子って、絶対いると思う。脇坂は母親と相性が悪い。


「性格か・・俺の母親は、甘ったれだな。誰かに依存せずにはいられない。

まあ、そんな性格がわかったのは、俺が高校生になってからだが。」


山崎は言わないけど、山崎母は、それだけじゃない。

美里ちゃんを育児放棄した。家計を放置した。

お前が怪我した時も、信じられない言葉の連続で、

僕は、いたたまれない気持ちになったっけ・・ 


「俺のかあさんは、性格はとにかく口うるさい。

”野菜を残さず食べろ””はやく風呂に入れ””明日早いからもう寝なさい”

口をひらけば、小言ばかりでイヤになる。俺はもう子供じゃないんだから。

早くひとりぐらし したい、小言から逃れたい」

青野は、ひとしきり母親の悪口を言い、せいせいした顔をした。


僕と脇坂と山崎は、一瞬、顔を見合わせて、爆笑した。

山崎が、青野の背中をバンバン叩きながら、

「いやいや、おまえのかあさん、最高だ。ははは」

山崎は、まだ笑ってる。脇坂は、あまりに笑うと悪いと思ったのか、

腹筋で笑いをこらえてる。


もし、僕が青野だったら、やっぱり青野のように母親の事をわずらわしく思う

かもしれない。それでもちょっとだけ、うらやましかった。

僕のかあさんは、音楽については 桁違いにうるさいけど

(前にかあさんのバイオリンの伴奏をやった時、だいぶダメダシされた)

僕の今の生活には、一切、口を出してこない。

ばあちゃんへの遠慮があるのだろ。


家族や家庭というと、普通は青野の家のような感じなのだろうか。

そうでない僕や脇坂、山崎は、何か性格に問題がでてくる とかあるのだろうか


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ