英語勉強会の計画を立てる
9月の2回目の八重子先生のレッスンにむけ、
僕は ベートーヴェン ピアノソナタ 告別とヴァルトシュタイン
1楽章を、細かくさらっている。夕食後だけど、防音がしっかりしてるので
気兼ねなく練習できる。
ソナタ「ヴァルトシュタイン」は、最初の左手の和音の連打を弾くのに気を遣う。
軽く(でも軽々しくなく)、一定の速度で。大股で歩くかんじか。
左手だけの練習もかかさない。その手を、じっと見ながら弾いてみた。
今は、脱力が出来るようになったと感じた。
中3の時に弾いたエチュード「革命」の時の左手は、力入りまくりで。
音色も音の大きさもバラバラだった。そこを無理したからあんな事に・・
そろそろ集中力が途切れてきたのかな。肝心の左手の音に脳が集中してない。
僕は、ピアノをはなれノビをした。途中、少しいい加減な音になっただろう。
ため息をついて、一休みする。集中力が持続しない。血糖でも下がったのか
ー・-・-・--・-・-・--・-・-・--・-・--・-・-・-・-・-
金曜日に、学校帰りに脇坂と”英語勉強会”の話をした。
自転車を押しながら、校門を出る。脇でちょっと止まって詳しく決める事にした。
勉強会は来週の水曜日、医師の脇坂父は泊まり勤務の日なので、その日に決定。
「必要な、単語や熟語など豆辞書を持っていこうと思います。
後、私用のため、受験2次試験の英語の長文問題集と過去問。
裕一は、センター試験だけでしたね。問題集類はありますよね」
2次試験の英語の長文、医科大学の試験の英語長文は、特徴的だ。
生物関連の記事が多く、単語もその方面に特化してる。
さすがに、僕には、難しすぎるだろう。
「僕は、センター試験用の勉強のみかな。後、ヒヤリングテスト用の
CDを用意しておくから。後、山崎にも 脇坂用の英語長文に
挑戦させてやってほしい。
後、青野も来るよう誘ったんだ。で、彼用に何か教科書から難しくない
問題だしたいけど」
青野は、推薦なので普段のテストの点数が重要だ。まずは、教科書の復習。
確か、青野は英語は若干、苦手だったかな。
脇坂は、ちょっと考えてから
「青野のほうは、その場でなんとかしましょう。前にテスト用に作った
プリントで十分と思います。きっと忘れてるはずですから。
でも、山崎には、さすがに二次試験用の長文は難しいかも」
「そうか、生物に特化してるしね。じゃあNYタイムスの英語版 なんて
脇坂の所にある?」
「ええ、一応ありますが、それでも・・」
「それがピッタリだ。山崎、TOFULでそこそこの点を取らないと
いけないんだ」
脇坂はますます不思議な顔をしたので、仕方ない。
山崎に僕が言った事は内緒ということで、
「内々の事で、どうなるかわからないけど、山崎が父のNY事務所に
就職するよう誘われてるんだ。」
「はぁ?NY?裕一のお父さんの事務所という事は音楽事務所ですよね。
山崎が音楽関係に明るいと思えないのですが。
まずNYの事務所というだけで、とんでもなく難しい職場になりそうですが」
多分、仕事は日本人スタッフも事務所にいるのであまり問題ない。
NYでの私生活のほうが問題かな。
「実はね、ちょっと父の個人的な問題があるんだ。
(字が自筆の楽譜が汚い。PC音痴で覚える気がさらさらない、というは言えない)
だから、本当、内緒にして。本人はまだ”悩んでる最中”だから。
決まったら、その真相を教えるよ。きっとすごく笑える事うけあいだ」
「じゃあ、それを楽しみにしてます」
脇坂は、”なんでもお見通し”の所があるから、こういうのは新鮮かも。
脇坂とはそこで別れ、、高校のある高台地区からとばして降りて行った。
ー・-・-・-・-・--・-・-・--・-・-・---・-・-・-・-
夕食後、さっそく練習開始。
ソナタもオーケストラの交響曲も1楽章が大事。
ただ、このソナタ「告別」に関しては、ベートーヴェンの心理を順に追ってるし、
音楽的に、僕は2楽章が一番、油断できないと思ってる。
音と音の微妙な間。長調からすぐ短調でもない不思議な音になる。
この時のベートーヴェンの心とはいえ、やはり作曲家。新しい試みとも思える。
今までの形式をわざと変えたりと、ベンちゃんらしい。
2楽章をひきながら、この曲の気分は晩秋だよな とか思う。
手をやすめて、窓の外をみても暗闇だった。今日は曇りで闇夜だ。
音楽室の空調が、軽く温かい風を送ってきた。
もうそんな時間?と壁掛けに時計をみると、ちょうど午前12時
をさしてた。
空調の音を覗くと、防音されてる部屋の中は、静かだった。




