ピアノソナタ 告別
飛行機に乗り遅れ、月曜日に北海道の家に帰って来た。
学校は休んだ。(行けない事もなかったけど、6時間目の授業だけうけるのも・・)
僕は、さっそくPCでベートーヴェンについて、軽く検索してみた。
ベートーヴェンと作曲家は、ハイドンに見いだされてから、やっと
音楽家の道も軌道にのったようだ。
(母は早くに死亡、父は後年、アルコール依存症になって失職。
ベートーヴェンは、そんな父のかわりに、家族と家計の面倒をみていた苦労人だ)
彼には、パトロンが3人いた。
今までの作曲家は、貴族等に雇われてる形だ。
パトロンというと、ピンとこないけど、後援会(本人を援助する会費あり)って
ところかな。そのなかで、ルドルフ大公は、最後まで(もっとも彼自身、早世する)
ベートーヴェンの援助を続ける。
ルドルフ大公は、ベートーヴェンから作曲を指導してもらい、自分も曲を書き
残してる。ルドルフ大公は、皇帝の弟という立場で、ナポレオンが侵攻して
きた時、安全のためウィーンを出ることになる。
その時に作曲されたのが、ベートーヴェンのピアノソナタ告別
今回の課題曲だ。
ベートーヴェンに関する逸話は、自称秘書のシンドラーの創作の部分もあり、
他にも陰謀で”変人説”をながされたらしいとか。
正直、”どれが本当なんだ?”っていうほど、いろいろあった。
ただ、ルドルフ大公に対しての友情は本当で、弟子のために作曲した曲は
これしかない。
1楽章が告別で、最初の右手の3つの音に告別という言葉のドイツ語があてはめ
られてる。そのメロディが、何度も繰り返し繰り返しでてくる。
”別れ”の曲だけど、悲しい曲調ではない。
本人は、”悲しいけど、又、会えるから悲しんではいけない”
みたいに、思っていたんじゃないか。
僕は、ネットの動画でひろったピアノソナタ”告別”を聞き比べて、そうかんじた。
せっかく入れてもらったアイスコーヒーも、だいぶ氷がとけて薄くなってる。
僕は、楽譜を見ながら、ずっと考えてる。
2楽章には、”不在”意味の題名がついている。
これは、寂しという気持ちを克服しようと明るい音形がでてくるも、すぐ”不安”
を感じさせる音形にかわる
3楽章は、題名は”再会”
当然、喜びに満ちてる曲で、最初は、喜んで走って駆け寄るような感じだ。
気がつくと、もう夕方。
気がついた事を、紙に書き留めておいたけど、実際、考えてる時間の方が
長かったかもしれない。
デスクから立ち上がり、のびをすると、体が鈍ってるきがした。
僕は、ばあちゃんに声をかけ、ちょうど学校から帰ってきた山崎を強引に
さそって、ジョギングにでた。夏の夕方は気持ちがいい。ただし、虫が
出てくる前に帰らないと。
「裕一、お前も強引というか・・・なんかあったの?」
「いや、何もないよ。考え事してて、頭がヒートしたから、体を動かして
冷ますんだ。ああつまり、頭を使った後は、体を動かし、体を使った後は頭をつかい
それが、自律神経のバランスを保つ秘訣なんだってさ」
山崎は、最初、へ~~って顔で僕をみたけど、しばらく考えたあと
「そういう知識、おばさんに聞いたりした?それともネット?」
これは、答えづらい質問だ。僕のいったことは、実は中学校の保健の先生の
話の受け売りだ。あのときは、学校へはいったけど、クラスにはいかず、
保健室登校だった。学校へ行くだけで、その時はたいした進歩で、それでも
不眠が続いて、保健室の先生に相談したんだっけ。
もちろん、適当に答えてもよかったけど、山崎に嘘をつくのもいやだ。
それに、僕の黒歴史を山崎にだけは、いってもいいかなと・・
「うん、この知識はちょっとわけありでね。今夜、音楽室で話すよ。
山崎には知っておいてもらいたい気がするし」
「・・・そうか・・無理しないでもいいぞ・・」




