リフレイン
驚く僕の顔を見ながら、おばーちゃんは、話してくれた。
「私の母さんは、この世のものならぬものの見える力があって、いわゆる”拝み屋”だったのさ。私も母ほどじゃないけど、少しそういう力がある。女にだけ伝わるもんだと思ったけど、お前の父さんとお前には伝わったみたいだね。父親から力を引き継いでるって、気がついてもよさそうなものを、知らないばかりに余計な苦労をさせて本当にすまない」
ああ。その事かと僕は安堵した。確かに東京の家をでる一因にはなったけど、音楽の道云々は、自分の未熟さと勘違いにあるのだ。
僕は「おばあちゃんのせいじゃない」と強く言うと二階の自室に駆け込だ。
ピアノの発表会で聞いた先輩弟子の会話と、ピアノの師匠の言葉が、頭の中でリフレインしてる。そして、僕のコンクールでの2度の失態の再現まで、僕の脳はし始めてる。
もう、どうしていいかわからなくて、僕は外に飛び出した。雪がひどくなってるのも構わず、いつもの堤防のジョギングコースの道を、やみくもに走った。当然というか、次の日、僕は熱を出して寝込んだ。
ただならぬ様子の僕を心配した祖父母は、僕を探してくれたらしい。
風邪をひかせてしまったようで、おかゆを持ってきた祖母は、少し咳きをしていた。
「大丈夫かい・苦しいかい?裕一」祖母は心底心配そうに、僕の額に濡れタオルをのせた。
そういえば、東京にいたころは、熱を出した時、心配してくれたのは、お手伝いの照子さんと都築さんだった




