5月のレッスン
八重子先生との5月の2回目のレッスンが始まった。
今回は、いつもショパンやベートーヴェンに時間を取られてるので、
バッハの平均律集から1集のフーガを 見てもらった。
こうやって弾いてると、急にバロックの世界に来た気持ちがする。
先生の音楽室は、ゴテゴテした飾りはない。
それだけに、勝手にイメージがふくらむ。
あるフーガで、決定的に先生と意見の違う所があった。
バッハは、速度についてもだけど、音楽的な指示が楽譜に少ないので、
こういう事もあるのかも。レッスンでうっかりさらい忘れた曲かな。
先生は、往年の名演奏家の曲を聞かせてくれた。
確かに、僕の考えよりは、先生の”リズミック”に弾くって考えの演奏が多かった。
それにしても、レコードか・・・
その中で、ポリーニの演奏を聞かせてくれた。同時に別な演奏も。
まるきり別な曲だった。
「やっぱり、ポリーニよね、さすがと思うし、聞いていてためになる」
それは、僕にもわかる。音の一音一音、神経を張りつめてひいてる。
上手いのはわかるんだけど・・・この曲を勉強中の僕には、ちょっと怖い。
鋭い刃物の上を渡っているような雰囲気がする。
勉強にはなった。すぐ、楽譜を持ちだしてきて、チェックを入れた。
「先生、でもただ聞くだけなら、後の人の演奏のほうが、気が休まります」
バッハの勉強、をしてるうちに、結局、ベートーヴェンのソナタ17番だけで
後の曲は、その時のレッスンでさらえなかった。
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次の日、クラスで脇坂が、妹の真理亜ちゃんの写メを見せてくれた。
いわゆる、スマホで自撮 ってやつ。
函館の私立高校にいく真理亜ちゃんは、バレー部に入ったそうだ。
女子にしては長身の彼女が、満面の笑顔で映ってる。
「運動が好きだとは、僕も知りませんでした。中学の時は、話によると
勉強ばかりだったようなので。
部活が忙しいので、夏・冬の休みは、帰らないそうです。
祖父と母は寂しいでしょうけど、自業自得ですな」
脇坂は、休みは講習会に通うのに、ウィークリーマンションを借りる予定だとか
「よ!二人とも、時間ができたら、陸上部で指導してくれよな。
曽我っちは、どうも放任主義でさ。男子の短距離は、1,2年とも俺が
つきっきり。2年は自分の事でていっぱいなんだよな。
脇坂、長距離組の二人、よろしくな」
青野は、まだ現役バリバリの陸上部だ。大学行くんじゃなかったのか?
「いや~拾う神ありでさ。”酪農家の跡取りは推薦で入れます”みたいな
大学あって、そこに行く事にした。」
僕の疑問に、青野は能天気に答えてくれた。
まあ、僕は指導というより、記録の管理、メニューの管理とかかな。
曽我先生に引き継いでほしくて、探すんだけど、どうも逃げられる。
PCは、本当に苦手らしい。
僕の後をつぐPCに、苦手感のないやつを見つけないと。入力がおもだから、
そう難しいもんでもないんだけどな。
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5月のシメは、東京で西師匠のレッスンだ。
僕は、通いなれた道を通り、家に入る。
めずらしく、母とアリサさんが、音楽室にいた。何か慌ててる
「明日からNYに出張なのよ。春香さんがソリストで上野先生の新曲を
演奏するんだけど、その下準備というか、調整ね。
あわせてみて、ソロとオケのバランスとか再確認したいそうです」
ああの、”山崎が必死になってPCで清書した曲”ね。
再確認っていうけど、きっとまた、リテイクがはいる。
少しなら、楽団の楽譜のほうで、直してもらうけど、多いとこっちに
また、仕事がまわってきそうだな。
「気を付けて。かあさん、迷子にならないように、アリサさんに
しっかりついていって」
母さんは、”迷子なんて、ないから”って顔をしてるけど、
現に、成田空港で迷子になってあやうく、予定の飛行機に乗り遅れる所って話、
何度か聞いたことあるから、僕は母の方向感覚は信じてないし。
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西師匠とのレッスンは、やはり厳しいものになった。
ベートーヴェンのソナタ17番は、1楽章はなんとかクリアしたものの
2,3楽章でとまった。
・2楽章、ただ穏やかにゆっくり弾いてるだけじゃだめだよ。
この低音のフレーズ。どう思う?よく考えて
・和音で動く所は、、一番上の音の動きにきをつけて。
・3楽章、ちょっと速くなってる。前のめりでもいいけど、
そういう時は、後でテンポもどして。
・ここは、左手が旋律。3回和音で4回目に音が違う。空気をかえて
・オクターブでつらいだろうけど、もっと手首を柔らかくして、
パッパーってリズムにのるといい。。etc
僕は、2,3楽章を、どこか、甘くみてる所があったのかもしれない
ショパンは、エチュード、練習してた曲はOKがでた。10-5は、
まだまだかかりそうだ。
そこでタイムアップ。
ソナタ16番は一回 通したけど、
「最初の1pが重要だから、fpの差とリズムに気を付けて」と
指示だけされた。後は自分で研究してね ということかな
時間、、ギリギリで羽田空港にかけていき、搭乗手続きをすませ、
やっと人心地。もう、東京は、夏を思わせる気温だ。
アセをかいたから、向こうについたら冷えるかも。
ぬかりなく長袖のジャンパーは、持ってきてるけどね




