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ショパン「別れの曲」を練習中

さっそく、早起きして練習することにした。

多分、前なら、ジョギングにあててた時間帯だ。

祖父母は、とっくに起きていたけ。


「おや、早いね今日は。ジョギングかい?」

「いや、ピアノの練習」

ばあちゃんは、僕にお茶を入れてくれた。朝の準備の手伝いもしないで、ごめん。


八重子先生に言われた エチュード10-3。「別れの曲」だ

もっとも曲名は後世の人が勝手につけたんだそうで。

ただ、ショパンもこの曲は自信があったらしく、献呈者のリストに

”すごい美しい旋律が出来たんだ”とこの曲を自慢したそうだ。


曲は、静かに始まって、突然、盛り上がって、また元のテーマに戻る。

この盛り上がり部分が、テクニック的に難しいのだろう。

最初の易しい部分も、右の小指が、旋律を受け持つけど、

他の音と上手くバランスをとらなければ、優雅に聞こえない。

情感をこめながらも、どこか抑制しないと中間部の”盛り上がり”の部分が

浮き上がってしまうだろう。


それにしても、「別れの曲」って曲名は、よく思いついたものだ。

先生から先入観を持たないようにと言われたけど、どうしても”別れ”の

シーンにふさわしいと思えてしまう。

ー・-・・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-


やっと自転車登校できるようになった。

途中、通る家家の庭は、早春の花が、こっそり咲いていた。

美術室で、早春の地元の風景を描いている部員がいたっけ。

ちょっと不思議だったんで、覚えてる。


放課後、部活へ行く前に脇坂に相談された。


「顧問には、もう話をしてあるのですが、僕は4月から選手としては

引退したいと思ってます。原点のジョギングをするのもいいし、後輩の

指導に専念してもいいと思ってます。

顧問は残念がりましたが、やはり、受験勉強に本腰をいれないと。」


今までは、本腰じゃなかったんだ・・

もともと選手をやめるのには、未練はないのだろう。でも、

真理亜ちゃんの事が、微妙に影響してるのかな。


「脇坂は、どこでも大丈夫なんじゃない?僕なんかと違って。

僕は崖っぷちだよ。マジあせってる」


「僕は、高校受験で、楽勝と思ってたら思わぬ落とし穴にはまりました。

ここでの高校生活に不満はないのですが、進学に関しては、若干、

情報不足であることは、いなめません。これからは、模試に参加し

講習会もいけるだけ行きます。

そうすると、陸上部の選手をするのは、きついです」


珍しく聞く脇坂のギブアップ宣言だ。

「僕も、レッスンが月に3回になったんだ。釧路2回に東京1回。

部活も土日はほとんど出れないかもしれないから、脇坂がサポートに

まわってくれるんなら、助かるけど。

本当にいいの?」


”絶対、現役で旭川医大合格します。浪人して、札幌の

予備校に通えとか、言われないように”という脇坂の力のこもった言葉だった。

そこまで息子に毛嫌いされる事を、母親と祖父はしたんだ。


ー・-・-・-・--・・-・-・-・--・-・・--・・-・

陸上部は、新入部員が、男子5人女子3人。1,2年で14名、大所帯

になった。残念ながら、中学で陸上経験のあるのは、男子の2名のみ。

曽我顧問は、”いや、かえってやりやすいから”と 大満足そうだ。


最初のミーティングの時、曽我顧問は、

”君たちは成長期にあるから、決して無理をしないように。etc”と

持論を展開して、1年生を驚かせた。もっと厳しいと思ったらしい。


ミーティングの後は1年生の体力測定を行った。

いきなりのメニューについてこれない部員が出てこないように。

劣るものは、それなりのメニューで、徐々に体力をつけさせる。

結果、やはりバラツキはあったが、特別に配慮するほどの差でもなかった。

僕は、正直、ホっとした。


体力測定のあとは、おきまりのストレッチをいつもより念入りに。

特に1年生は一人でも出来るように、2年が指導にあたった。

”いてて、もう無理です”なんて1年の声を聴きながら、曽我はニマニマしてた。

最後は、軽いランニングで終了。


後でわかったことだけど、

”陸上部に入ると、先輩が勉強をみてくれる”

なんて話がまわてったそうだ。確かに去年、1回だけ、追試になった

1年の勉強を見てやったけど。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


八重子先生のレッスンの日。やっぱり釧路は寒かった。

摩周町より南にある街なのに・・


先生のお宅では、エアコンをいれて温かくしてくれてた。

念のため、薄手の手袋をはめてきたけど、手は冷たいままだ。

先生は、そんな僕のため、温かいココアを入れてくれた。

そして、使い捨てカイロをくれた。手を温められるようにとの思いやり。


「手が冷たいまま、いきなり難しいテクニック曲を弾くと、当然、

指の故障につながるから。」

先生は、自分の具合の悪い時でも、手だけは、しっかり気を使ったそうだ。

冬に手がアレると、弾く時に痛かったりする。


今日は、最初にベートーヴェンのソナタ3番をみてもらった。

4楽章が、難敵で、速いテンポで和音で上昇するのが、メインテーマで

出てくる。ここは、あくまで軽くスタッカート。

スキップしてるようなベンちゃんを想像して弾いた


「4楽章は難しいわよね。でも、この和音の上昇は、次のこの小節につながるの。

それを忘れないで弾くことね。あと、ここの18分音符は、もっとクッキリと。

左手が、ゴチャゴチャやってるから、この右手の音で、リズム感だして」

最初から挑戦。って途中でこけた。

3連符が続くところで、つい調子にのって、急ぎすぎて自分の首をしめた。


「そこのfのところ、しっかり出す。ね。後、もっと落ち着いて」

いや、まいった。笑ってごまかしたけど。


最後の3段くらいは、西先生に特訓してもらいなさいと、いわれた。

後、ベートーヴェンの交響曲をよく聞くことと。

つまりは、そういう広がりを持った曲なんだろう。





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