3年に進級。ショパンのエチュードの特訓
4月になり、僕たちは、3年生になった。
卒業した3年生は、それぞれ就職先た進学先を決め、とっくに
地元をはなれた人が多い。
白井先輩は、看護婦を養成する学校に入学。
林先輩は、酪農の大学に推薦で入った。先輩の実家は酪農と畑作の農家だ。
熱血、朝岡先輩は、管内のホテルに就職。そこでもバリバリ仕事しそうだな。
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僕は、陸上部続けるのが、難しくなってきてる
先生のレッスンが増えたからだ。
八重子先生とは、月のはじめと中ごろにレッスン
西師匠の所は、月の終わりにレッスン。あわせて3回。
八重子先生のレッスンは、(西師匠の指示をうけ)それを練習する
いわば、下稽古。西師匠が曲を最終チェックをする。
ノンビリしてる僕に、先生方がしびれをきらしたのかもしれない。
ベートーヴェンのソナタは、まだ前巻だ。エチュードも半分もいってない。
正直、浪人を覚悟(ただ働きもあるかも)しなければならないかも。
音楽室で、カレンダーで日程を確認する
明日は八重子先生の4月最初のレッスン。
練習を終えて、一息ついてたところなんだ。
もっと練習時間を長くすべきだろうか・・夜も更けている。さすがに
日付をこえた時間まで弾くのは、キツい。
窓から月がよく見えた。
僕は、外を眺めてみる。月明かりで、まだ雪が少し残ってるせいか、
よく見える。ところどころ雪明りは、幻想的というより、
僕は、不気味な気分になった。
山崎は、先にPCの作業を終え、僕一人が起きてる。
夜はよくないか。何か考えが後ろ向きになっている。
朝、もう少し早起きしよう。
朝の庭は、僕にもっと活力をあたえてくれるだろう。
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八重子先生のレッスンは、まず、ショパンのエチュードからはじまった。
10-11.やや易しい曲なのだろうけど、このアルペジオだけで
出来た不思議な曲は、最後の音をミスタッチしやすい。
その最後の音が旋律なのが、やっかいだ。
ただ、大きく音を出せばいいってもんじゃない。
「大体は、そんな曲想でいいです。もっと軽くひけないかしら?
例えば、ハープのように。優雅にね。
左手の親指、クレッシェンドでも強く出しすぎないように。
右の旋律とバランスを考えて」
アルペズオといっても、左右の和音を、一気に下の音から上の音に
左右同時に弾く形だ。それをいろんな形で、僕は練習はした。
今度は 軽く弾いてみると、曲想が上手くでてないとの注意。
再度、挑戦。
「こんなの、かるくポロロンって弾けますよってね。自信たっぷりに、
旋律の起伏をいれながら、弾くのよ」
「軽くですか。。こうですね」
”僕は軽く弾ける。簡単だ。これはハープのかわり”自己暗示をかけながら。
なんとかクリアできた。
次は25-4のエチュード。
裏拍で旋律を弾くという、ちょっとかわった雰囲気の曲だ。
「ああ、この音の流れがね、ピッチカートの音のようになるように。
左はもっと鋭くきって。」
再挑戦・・
「あっと、左手の最初の音で、曲の流れを作るから、その音は
そんなに弱くしては駄目だわ」
難しい。なんとなく、人の会話の裏側をさぐるような曲のようでもあり、
都会の下町で忙しく働く人たちのような曲にも思える。
再々挑戦・・ちょっとテンポが落ちたか・・
「う~ん。これは、次回も練習頑張ってね。曲の感じは
つかめてるから、軽快に弾くことを忘れずにね。
じゃあ、次、エチュードは、あの有名な10-3
タイトルに惑わされないでね」
次の課題がでてしまった。。
10-3は、「別れの曲」で有名だ。もっとも有名なのは、最初の優しい
静な所が主だろう。
ベートーヴェンのソナタは、時間がなくて、暗譜で4番
一通り弾いた。これで西師匠のOKがでるかどうか・・
「うん、なんとかなりそうかな。3番のほうが苦手そうだったものね。
4番は、3連符が多いから流にのりやすいしね。
家に帰って自分の演奏を聞いてみて。結構、細かいところで雑に
弾いてるから。目立たないけどね」
そう、4番はノリノリで弾いてるぶん、理性とんでますってところ
あったかもしれない。反省だな。
八重子先生のレッスンは、結局、エチュードが中心になった。
次はぜひ3番をじっくり見てもらいたいので、エチュード
しっかりしないと。
先生にお礼をいい、家をでると風が冷たく寒かった。
ソナタ4番のように、ノビノビというわけにはいかないな。
僕は足早に駅に向かった。
この町では、雪はないけれど、海からの風が冷たくて強い。
体感温度ってもっと低いかも。
駅前の大通りは寂れているので、よけい寒く感じたのかも。
人通りがまばらだからかな
家にかえり、祖父母の言葉と温かいお茶で迎えられ、ホっとした。
「裕一、顔がひきつってたよ。何かとんでもない課題でもだされたかい?」
「いやあ、釧路は雪がないけど、風が冷たくて寒かった。
陽はところどころさしてるんだけどね。北風と太陽と両方が
きそいあって、北風の勝ちみたいな」
すぐ夕食になった。考えてみると、自分で料理を作った事
ないけど、東京へいくと、自炊しないといけない。
きっと一人暮らしになるだろうけど、浪人することになったら、耐えられなくて、
父の所に進んでただ働きにいくかもしれない。




