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メイドさんは人気者

「あと二十分で終わりか、急がなきゃな」


 文化祭の終了時間が間近に迫っていた頃、俺は急いで一組のやっている喫茶店へと向かっていた。どうしても文化祭が終わる前に、客としてシエラちゃんの様子を見ておきたかったからだ。


「うわっ、まだこんなにお客さんが居るのか……」


 毎年文化祭は終了時間に近付くにつれ、どの教室もお客さんの姿が閑散となってくるものだが、俺が訪れた一組だけはまだ大盛況の真っ只中だった。


「これじゃあ時間内に入れないかもな、せっかく時間を作って来たのに……」


 本当なら休憩時間に訪れたかったが、俺が行くとまたシエラちゃんの魔力が暴走して羽と尻尾が出てしまう可能性があるので、それは自重した。だからこそお客さんが少なくなる終了間近にやって来たというのに、これではせっかくの計画が台無しだ。


「あっ、先生どうかしたんですか?」

「赤井さんか、いや、せっかくだからコーヒーでも飲もうかと思って来たんだけど、この様子じゃそれもできそうにないな」

「そんなこと言って、ホントはシエラちゃんのウエイトレス姿をガン見しに来たんでしょ? もう、先生ってばエッチだなあ」

「こ、こらっ、変な事を言うんじゃない、ややこしい事になるだろうが」

「あははっ、冗談ですって。でもこの状況じゃ、時間までに順番が来るのは難しそうですね」

「そもそも何でこんなに繁盛してるんだ? 何か話題になりそうなメニューとかあったっけ?」

「いや、実はですね、途中で忙しくなってシルフィーナさんにお店の手伝いを頼んだら、シルフィーナさんの事が話題になっちゃってこんな事になったんですよ」

「えっ!? シルフィーナさんに店の手伝いを!?」

「はい。ほら、シルフィーナさんってすっごい美人じゃないですか、それでいて本物のメイドさんだから、男女問わず次々とお客さんが見に来るんですよ」

「確かにシルフィーナさんは美人だし、身のこなしも優雅で品があるもんな」


 不可思議な行列に疑問を抱いていたが、その原因がシルフィーナさんだと知ってなんとなく納得してしまった。しかし納得はできてもそれでこの状況が変わるわけではないので、やはり残念な気持ちは拭えない。


「あっ、そうだ先生、もう不思議研究会の部室は閉めましたか?」

「いや、ここでコーヒーを飲んだら閉めに行く予定だったから、まだ閉めてないよ」

「だったら不思議研究会の部室で待ってて下さい、特別にコーヒーをデリバリーしますから♪」

「えっ? いや、別にそうまでしてコーヒーを飲みたかったわけじゃないしいいよ」

「まあまあ、そう言わずに部室で待ってて下さいよ、すぐに持って行きますから♪ それじゃあ!」

「あっ、ちょ――」


 赤井さんは俺の言葉など一切気に留める様子もなく、沢山の人で賑わう教室の中へと入って行ってしまった。

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