冒険者 ヨナス
……あー、その、はじめまして。はじめましてじゃないですけど、なんていうかこう、普通にご挨拶できる状態では、はじめまして。ヨナス隊のリーダーやってる、ヨナスです。取材っていう話は、副長から聞いてます。
そうだ。念の為ですけど記者さんのパーティは、計画書を提出されましたか?
(〈冒険者〉たるヨナス氏――いや、年齢的に言ってヨナス君と呼ぶべきだろう――がそう言うと、私をここまで連れてきてくれた別の〈冒険者〉が苦笑いしながら彼の心配性を咎めた)
おいおいヨナス、俺たちがそこで手を抜くわけねえだろうが。
あのヘッピリ・ヨナスが、ずいぶんなご心配をするようになったじゃねえの。
そ、そりゃあ、そうですけど! 万が一ってことがあるじゃないですか。
僕たちだってついこの前、その「万が一」で死にかけたんですよ?
知ってるよ。俺に言わせりゃ、あれは「万が一」なんかじゃなく、必然だったけどな。
上を目指すのも結構だが、次に同じミスをしたら今度こそお前ら、死ぬぞ。
……はい。肝に命じます。
上を目指さないってのも、それはそれで困りものだけどな。
ともあれ計画書は提出済みだし、〈砂川中洲〉の避難所にも一声かけてある。記者さんはまるっきり〈大迷宮〉の素人だが、それも込みで装備を整えてきた。ついでに言うと、すぐそこにまで警備隊も来てる。「万が一」すら起こらねえし、起こさせねえよ。
さすがっすね。とっつぁんがガチで協力してるっての、マジだったんすねえ。すっげえカネかかってるじゃないですか。
で、ええと、記者さんはいったい何をしに来たんです?
(言うまでもなく、私が彼らに会うために〈大迷宮〉に踏み込んだのは、取材のためだ。
だがこうやって改めて「何をしに来たのか」と問われると、その問いも実にもっともだなと思わざるを得ない。普通に考えればヨナス・パーティでなくても話を聞ける相手には事欠かないし、わざわざ〈大迷宮〉の中で話を聞く必要もない。
でも私は、〈大迷宮〉の中で、彼らから話を聞くべきだと思った。それで伯爵にわりと無理を言って、この場をセッティングしてもらったというわけだ)
ははあ。僕たち〈冒険者〉が、〈大迷宮〉の中で何をしているのか、ですか。
いやまあ……その……構いませんけど、何で僕たちに、それを?
記者さんを引率してきたヴィシュニック隊とかのほうが、何かを実演するにしたって、絶対に良いと思うんですが……? 腕前も経験も、僕たちと先輩がたじゃ、まるで話にならないくらいに差がありますよ?
(ヨナス君の言葉が謙遜ではないことは、私の背後で周囲を警戒しているヴィシュニック・パーティの様子からも伺えた。こうやってただ道端で話をしているだけであっても、ヨナス隊の面々とヴィシュニック隊の面々では、装備から小さな所作まで、何から何まで天と地ほどの差があるのだ。
私は〈大迷宮〉取材こそズブの素人だが、戦場を取材することはこれまで何度かあった。その経験から言えば、ヨナス隊がようやく新兵を脱した程度であるとすれば、ヴィシュニック隊は熟練兵の群れだ。
けれど、だからこそ私はヨナス君たちの話を聞きたいとも思った。それはおそらく、彼らならばまだ、私にも理解できる話をしてくれるだろうと思ったから……なのかも、しれない)
グダグダ言うな、ヨナス!
記者さんがお前らをご指名で、とっつぁんもそれを許可してるんだ。それともお前は伯爵様のご命令に逆らうつもりか?
(うまく理由を説明できずにいる私の代わりに、ヴィシュニック氏がヨナス君を叱りつけた。あまり望ましい展開ではないが、仕方あるまい)
そんな、滅相もない!
いくらブーケリッツ伯爵がとっつぁん呼ばわりされることをお許しくださる寛大な方だと言っても、最低限はわきまえろよ、ヨナス。
あとなあ、考えてみろ。俺たちが狩りの手本を見せても、記者さんじゃあ俺たちが何やってるかなんて、わかりっこない。お前らくらいの手際の悪さが、丁度いいんだよ。
ぐ……ま、まあ、そうっすね……先輩がたに言われると、ぐうの音も出ません……
分かったら記者さんのご要望のとおり、まずはここで何をやってんのか説明しろ。
それからご要望があれば、実演だ。そのつもりで説明するんだぞ?
(なんだか記者としての仕事を全部代行されている気がする。
おそらく私は、この〈大迷宮〉という環境に、まだ緊張しているのだろう。そのせいで、記者としての基本的なことができずにいる。思い返せば初めて戦場に赴いたときも、状況に圧倒されるばかりで、まともに仕事ができなかったものだ。
そんな私の葛藤を置き去りにするかのように、ヨナス君は説明を始めた)
僕たちが〈大迷宮〉でやっているのは、基本的には「狩り」です。
〈大迷宮〉には迷宮獣が出没します。場所によりますが、出る場所では「どこにこんなにいるんだ」と思うくらい、たくさん出ます。
その迷宮獣を殺すと、死体から〈魔石〉が取れます。だいたいの迷宮獣は肝臓のあたりに〈魔石〉を持ってますんで、それを集める感じっすね。1匹につき、最低でも1個。運が良いと3〜4個くらい持ってるヤツもいます。
迷宮獣によっては肉とか毛皮とかが高く売れるんですけど、肉はすぐ痛む上に重たいし、毛皮は傷つけないようにするのが大変だしで、僕たちみたいな駆け出しは基本的に〈魔石〉しか狙いません。
(「ブーケリッツの魔石狩り」は、帝都でも有名になりつつある産業だ。
〈魔石〉は高効率かつ扱いやすい燃料として人気が高く、木炭や石炭とは比べ物にならないくらい価値あるものとして珍重されてきた。
その〈魔石〉が大量に採取できる土地が、ブーケリッツ大洞窟というわけだ。その産出量は他の地域を圧しており、〈大迷宮〉が開発されてからこのかた、帝都では〈魔石〉の相場が大きく崩れて投資家が何人か首を吊ったとさえ噂されている)
〈魔石〉は小さくて軽いのに、高値で取引されてます。そうっすねえ、いま僕が背負ってる背嚢いっぱいに〈魔石〉を詰め込んだら、いろんな必要経費を抜いたとしても、4人が1ヶ月くらいは遊んで暮らせるくらいに、儲かります。
もちろん「どれくらい派手に遊ぶか」にもよりますけど、毎日宿の近所で定食を食って、夜はちょっと飲む程度なら、1ヶ月はいけると思いますよ。
もっとも、あくまで狩りが理想的に進んだら、って話ですがね……
ええ。そうですよ。理想的じゃないときのほうが多いです。
だって考えてみてくださいよ。1週間ほど〈大迷宮〉に潜ったら、次の1ヶ月は確実に遊んで暮らせるんだったら、帝国じゅうから〈冒険者〉志願の連中が集まって来ますって。つうか今頃、帝国の軍隊が〈大迷宮〉で狩りをしまくってるんじゃないですか?
この仕事はそこまで確実じゃないし、そこまで甘くもないんすよ。
僕たちはよく〈冒険者〉っていう仕事のことをギャンブラーに喩えますけど、なんのかんのでこの喩えが一番ピッタリくるなと思ってます。結局、自分の命を掛け金にして、あまり分が良いとは言えない博打をしてるのが、〈冒険者〉なんです。
んー、これ以上の話は、実際の狩りの様子を見てからのほうが分かりやすいと思います。ああ、大丈夫ですよ。命がけって言いましたけど、僕たちが狙ってる獲物が相手なら、死ぬことはまずありませんから。
(私が背後を振り返ると、ヴィシュニック氏は小さく頷いてヨナス君の言葉を肯定した。
だからというわけではないが、私はヨナス君が先導するに任せて、彼らが見定めた狩場へと向かうことにした)
ご存知かと思いますが、このあたりは〈白の砂川〉と呼ばれてます。名前の由来は、見ての通りっすね。地下水脈沿いに真っ白な砂浜が続いてる様子を、迷宮狩人たちは長年「白の砂川」と呼んできたそうです。
不思議なことに〈大迷宮〉の中でだけこの砂はピカピカ光るんで、このあたりじゃあ灯りを持つ必要がありませんし、砂を灯りにすることもできます。僕たちも〈大迷宮〉に来たばかりの頃は、ここで取れた砂を灯りがわりにしてました。〈魔石灯〉に比べるとやっぱいろいろ不便なんで、今じゃあ僕たちもさすがに〈魔石灯〉を使ってますが。
あと、このあたりの水はそのまま飲めます。気温も穏やかだし、地下水脈で釣りをすれば結構な大物が釣れたりもします。要するに、めっちゃイージーな地域だってわけです。
もちろん、イージーだからって舐めたら死にますけどね。
さて――このあたりです。そこにちょっとしたシダの茂みがありますんで、その後ろに隠れてください。匂いがアレですけど、それは我慢してください。
(ヨナス君が指し示した緑の茂みに近づくと、何とも言い難い刺激臭がした。かろうじて「圧倒的に強烈なハッカの匂い」と表現することもできるが、「饐えきった汚物の匂い」と表現するほうがより状況を的確に表現している気がする。
そしてそれはけして、気のせいではなかった。ヴィシュニック氏がうんざりしたような声を出す)
分かっちゃいたが、相変わらず腐った小便の匂いがしやがる。
俺がもっと深い場所で狩りができる〈冒険者〉になろうと本気で思ったのは、この匂いに耐えられなかったからだわ。思い出したよ。
正直なことを言うと、僕たちも同じです。ここは狩場としては超ウマいんですが、さすがにキツイっす……3日もここにいると、服どころか体全体からこの匂いがするようになるんすよねえ……
だよなあ。
俺もさ、今のお前らよりも駆け出しのころには「砂川の便所草で狩ってる〈冒険者〉はお断り」とか「女にモテたきゃ砂川には行くな」とかさんざん言われて、「何を女々しいことを言ってやがる」と息巻いたもんだよ。
実際にここで狩りができるようになってからは、1日でも早く、もうちょっとマシな狩場を目指したくなった。
とはいえ夢を壊すようで悪いが、ここ以上に稼げる狩場なんて滅多にないってのも事実でな……〈青水晶〉ですら、ここより稼ぎは悪いぜ?
げ、マジっすか!?
残念だがマジだ。〈青水晶〉最大の利点は、ここと違って洗濯代が余計に取られねえってことだよ。命を賭けるには、ちょいとアレすぎる。
ま、その先で〈青水晶〉での経験が活きてくるってこともあるから、一概に全否定はできんのだが……と、そろそろお客さんが来るな。俺たちは黙って見てることにしよう。記者さんも、静かにな。
(ヴィシュニック氏はそう言うと、彼の仲間たちと一緒に、数歩後ろに退いた。ヨナス君たちは背負っていたマスケット銃に急いで装填すると、口と鼻を分厚い布で覆い、悪臭を放つ草むらの只中に伏せる。
そのまま5分も待たないうちに、白く輝く砂浜の上を腹ばいになって進む、巨大な影が現れた。にわかには信じがたいが、トドやアシカの類だ。数は、5匹。どことなく間抜けな鳴き声をたてながら、灰色をしたトド(?)の群れは白い砂浜の上を這いずっていく。
ヨナス君たち4人は忙しげにハンドサインを交わし、銃の狙いを定めた。そのずっと後ろで、ヴィシュニック氏たちも小さく身をかがめている。直前に注意された通り、誰一人として声をあげようとはしなかった。
やがてヨナス君が左手を小さく挙げ、再び構えに戻る。そしてそれからきっかり5秒後、4人が構えたマスケット銃が轟音とともに銃弾を撃ち出し、トドの群れの先頭と最後尾の合計2匹に命中した。おそらくは2人1チームで、2頭の標的を狙ったのだろう。発射された弾丸は、そのすべてが狙ったターゲットを見事に捉えたようだった。
撃たれたトドはばったりと倒れ、それ以外のトドは悲鳴をあげながら、身体に似つかぬ素早さで闇の中へと逃げていった。
それからしばらく、誰もが身じろぎひとつせずにいたが、やがてヴィシュニック氏が膝立ちになると、小さく手を叩いた)
良い腕だ。やるじゃないか、ヨナス。
ぁざます。
(くもぐった声で返事をしながら、ヨナス君たちは茂みから立ち上がる。
それからヨナス君は懐から鮮やかなオレンジ色に染め抜かれた布を取り出すと、頭上でそれを振り回しながら倒れたトドのもとへと駆け寄っていった。その後ろに他のパーティーメンバーも続く)
……あのオレンジの布は、「〈冒険者〉が移動してます」っていうサインだ。
なにせここは狩場で、他の〈冒険者〉も狩りをしてる。人間と迷宮獣を見間違って誤射ってことも、まったくあり得ないわけじゃあない。
自分たち以外にも〈冒険者〉がいる場所で狩りをするってのは、遭難の危険性を下げるにあたっては有効だが、そういう場所ならではの事故も起こり得るってことだ。
これも〈冒険者〉がなるべく単独パーティで狩りをしたがる理由のひとつだな。遭難は怖いが、本気で稼ぎたいなら、自分たちだけで独占できる秘密の狩場を見つけるしかない。
(ヴィシュニック氏が解説してくれている間にも、ヨナス君たちは手早く2匹のトドを解体していった。頑丈そうなナイフで腹を裂き、内臓に深々と手を突っ込んでしばらく手探りしたヨナス君は、やがて飴色をした石をひきずりだした。〈魔石〉だ。もう1頭のトドからは〈魔石〉が2個見つかったようで、一行がガッツポーズをするのが見えた。
〈魔石〉を回収した彼らは立ち上がると、自分たちが殺した2頭のトドの周囲で円座を組み直した。あれはいったい?)
おー、真面目な奴らだなあ。
あれは通称〈儀式〉、正式にはたしか……そう、〈鎮魂の儀式〉だ。
詳しいことは知らんが、迷宮獣の魂は不滅なんだそうだ。だから迷宮獣を殺して放置しておくと、その魂は迷宮獣の死体に残ったままになる。死体に残ったままの魂は、とてつもなく邪悪な魂へと変化することもあるが、その大半は空気のように薄まってしまって、再び迷宮獣の姿に戻るまでに一万年ほどかかっちまう。
だがちゃんと〈儀式〉をすれば、迷宮獣の魂は迷宮の一番奥深くに戻って、そこで100年ほどかけて迷宮獣として復活する。だから迷宮狩人は自分が狩った迷宮獣に対しては、感謝と祈りを込めて〈儀式〉をしてる……らしい。
まぁ、魂だの何だの、俺は信じちゃいない。だから俺たちは、あいつらみたいに真面目に〈儀式〉をしたりはしないな。略式の〈儀式〉はするが。
実際、たとえ略式でも〈儀式〉をすると、迷宮獣の死体は腐らずに、だんだん石になって迷宮と一体化していくんだよな。衛生面を考えると、〈儀式〉をしたほうが何かと安心なんだ。
肉や毛皮を持って帰るときはまた別の〈儀式〉があったりして、何かと面倒ではあるんだが……半分以上はマナーの問題ってところだな。〈大迷宮〉で食わせてもらってる以上、〈大迷宮〉の中を迷宮獣の腐乱死体で埋め尽くすわけにはいかんだろ?
(〈鎮魂の儀式〉は10分ほどで終わり、ヴィシュニック氏が言った通り、トドの死体はゆっくりと砂へと変わろうとしていた。
それはどこまでも非現実的な光景ではあったが、不思議とこれはそういうものなのだという思いのほうが強かった。ここには太古から続く、大いなる循環が存在しているのだ。
〈儀式〉を終えたヨナス君たちは再び茂みへと戻ってくると、細長い赤い布を草の一本に巻き付けた。これもまた、〈儀式〉の一環だろうか?
ヨナス君の答えはシンプルだった)
いえ、これは儀式とは関係ないっす。
いま僕たちが狩った砂トドは、仲間が殺された場所には最低でも24時間は近寄りません。正確には、砂トドは砂トドの血の匂いがするところに近寄らないんです。だからこうやって日付を書いた赤いリボンを残しておくと、後から来た〈冒険者〉は時間の無駄をせずに済むってわけです。
お人好しっちゃあお人好しなルールですけど、でもほら、この匂いっしょ? こればっかりはお互い、協力しあうべきだと思うっすよ。
ちなみに砂トドは、音にはあんまり敏感じゃないです。ただどういうわけか、人間の話し声には敏感っす。あと何より、匂いにはめっちゃ敏感です。なのでこういう場所で待ち伏せしないと、まず狩れません。
このあたりのノウハウは、最初は迷宮狩人の人たちに教えてもらったそうですけど、今じゃあ〈冒険者〉の先輩から後輩に引き継がれる知識になってますね。砂トドの待ち伏せポイント――要するに十分に大きな便所草の茂みのことですが、それも全部で100カ所くらいあるのを、先輩たちに教えてもらいました。
100カ所っていうとめっちゃ多く聞こえますけど、ここから一番近くにある次の待ち伏せポイントまでは、歩いて15分ってとこですかね。運がよければそこで待ち伏せに入れますけど、先客がいることもあるし、赤リボンが巻かれてることもあるし、待ち伏せしたけどなかなか砂トドが来ないってこともあります。さっき「理想的な狩りができれば」っていう話をしましたが、現実はこんな感じっす。
ああ、もちろん「秘密の待ち伏せ場所」がないかって言われたら、僕たちですら何カ所かそういう候補地は知ってます。でも僕たちは基本的に、そういう秘密は持たないようにしてきました。
だって、そういうのってただ単に危険なだけなんすよ。
例えば僕たちが辺鄙な場所にある「秘密の待ち伏せ場所」に行こうとして、その途中で遭難したら、たとえこのイージーな〈白の砂川〉であっても結構いい確率で全滅します。「普通じゃない場所で狩りをする」ってのは、孤立して死ぬ可能性を無駄に高めるってことでもあるわけで。
そりゃあ、僕たちだって「僕たちだけが知っている、秘密の超ウマい狩場」を持ちたいと思いますよ?
でもそういう甘えを許してくれるほど、〈大迷宮〉は優しくないんす。
僕たちは、それを忘れかけてました。僕たちだってそんな場所で狩りができるだけの実力がついたはずだと、思い込んだんですよ。だから〈青水晶〉に挑んで、死にかけて。改めて、ここではそんな甘えは通じないと思い知らされました。
(己自身に語りかけるかのようなヨナス君の言葉を聞きながら、私は彼らがかつて戦地で会った兵士たちにどこか似ているように感じていた。
個人ないし数名の努力ではなんともならない圧倒的な状況を前に、それでもなお英雄になろうとする者は確実に死ぬし、生き延びようとするならばまずは己の隣に立つ戦友を助けねばならない――兵士たちが口を揃えて語った戦場の知恵は、〈大迷宮〉においても通じるのかもしれない。
その漠然とした仮説を裏付けるかのように、ヨナス君は語り続けた)
僕たちがちょっとやそっと足掻いたところで、〈大迷宮〉はそんなことお構いなしなんですよ。そういうのを相手に賭けをしてるのが、〈冒険者〉なんです。
つまり〈大迷宮〉ってやつは、僕たちよりずっと……そう、ずっと大きいんです。
ずっと、ずっと、大きいんですよ。




