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第123話 論戦・舌戦・俺程度

 チュートリアルこそが俺の戦い方だが、ガガンという男はそれに頼りたくはないそうである。

 この男は、根っから誇り高きバーバリアンの戦士。

 あらゆる状況にぶっつけ本番で挑み、フェアに戦って勝ちをもぎ取るのだ。


「うおらあっ!!」


「ぬおーっ! 光輝神様の祝福を受けた盾が砕けた!!」


「道具が祝福されてようが、お前が祝福されてないんだよ! オラララララララララッ!!」


「な、なんだと!? ウグワーッ!!」


 盾を破壊された神官戦士は、ガガンの強烈な連打を喰らって空中に浮かび上がる。

 スリッピー帝国で教授がやってたパンチとはまた別系統だな。

 一撃一撃が必殺の威力を伴っているのを、無呼吸で高速連打しているのだ。


 おお、神官戦士の鎧が吹き飛んだ。

 そして、ついにそいつは戦闘力を失ってポトッと落ちたのである。

 生きているだけで大したもんだ。


「ひいー」


「ば、化け物」


「奇跡が通じない」


 光輝神の信者たちの腰が引け、後ろに下がる。

 自然と、一歩も下がらない聖女アリスティアが前面に出てくる形になるのだ。


 彼女はうつむき加減だった姿勢をただし、正面からガガンを見つめた。


「わたくしが相手をします」


「ま、待ってくれ! オレはあんたを……」


「わたくしは、光輝神の巫女ですから……! 参ります!!」


 アリスティアが腰に下げていたものを抜いた。

 メイスである。

 それが光り輝いている。俺から見ても何かとんでもない力を持った武器だと分かる。


 本物聖女の装備は凄いなあ。

 そして対するは腰が引けたガガン。


 目当ての女子が敵として立ちふさがってしまったのだ。

 これは仕方ない。


「ガガン、問うのだ」


「な、何をだ」


 俺はガガンの背後に忍び寄り、囁いた。


「光輝神は戦いを望んでいるのか、聞こえてるだろ彼女は」


「そ、そうか!」


 これは宗教の戦いでもあるので、問答という戦い方もあるのである。

 バーバリアンだと、すぐに力と力のぶつかり合いになるし、それでガガンやアリスティアが大怪我したら目も当てられない。

 ルミイがすぐに治すけど。


「光輝神アクシスは戦いを望んでいるのか!!」


「……!! 正義の戦いを、肯定しておられます!!」


「これは正義の戦いなのか!!」


「………!! きょ……教団を守るための戦いは、法皇がお示しになったものです!!」


 俺の目がキラーンと光る。


「マナビが生き生きしてるのだ!」


「俺はこういう、相手の揚げ足を取って論戦するのが好きでな。おいガガン。彼女はこの戦いが正義だとは言えないし、光輝神だってこの戦いそのものを望んでいないことを知っているぞ」


「むうっ!!」


 鼻息が荒くなるガガン。

 これは義憤である。

 聖女アリスティアが、何かを人質に取られ、心の底からは望まぬ言動を強いられていると動物的直感で悟ったのであろう。


 物わかりがいい男は大好きだ。


「アリスティア! あんたは自分に正直になるべきだ!! あんたは教団のために、国のために頑張っただろ! だが、一度のミスでこれだ! こいつらはあんたを聖女として大事にしてない! だが、オレはあんたが聖女で大事にされるべきだって思ってる! だって、あんたがみんなを大事にしてるからだ!!」


 おおっ!!

 なんか凄いアドリブでスラスラ出てくるな!


 ……と思ったら、ガガンの頭上にムキムキマッチョの神の影が見えた。

 あれは蛮神バルガイヤー!!

 信徒が今、聖なる戦いをするということでここに降臨したんだな。


 で、バルガイヤー夫人である月の女神もいて、彼女はインスピレーションなんかも司るそうだ。

 ガガンに言葉を思いつかせているんだな。

 具体的には、ガガンが感じた疑問や憤り、情動をボキャブラリーで名付け、言葉として発せるようにしている。


 凍土の大地の神であるはずの夫婦神だが、ここにいるということは……。

 オクタゴン神殿が結界に無理やり隙間を作ったので、そこから入ってきたのではないか。


 一瞬だけオクタゴンがこれを振り返って、『いいなあ』と呟いた。

 そうしたら戦神にガツンとぶん殴られている。

 神々の戦いはよそ見厳禁だぞ。


 アリスティアは唇を噛んで押し黙り、光輝神の信者たちは一瞬静まり返った。

 痛いところを突かれたな。


 信者たちが持ち上げていたのは、アリスティアという聖女そのものではなく、彼女が持つ清らかさとかそういうドラマ性だったのだ。

 で、異世界召喚者がアリスティアをたぶらかして醜聞が起こってしまい、聖女は清らかさとかを失った。

 なので、手のひらを返して怒り、聖女をぞんざいに扱うようになったわけである。


 とても人間らしい行為と言えよう。

 ふと思いつき、俺はちょいっとガガンの横から顔を出した。


「聖女アリスティア。光輝神アクシスの力、弱くなってきてるだろ」


「!? そ、そんなことはありません……!!」


「誰かがアクシスの声を勝手に捏造して伝えてて、信者は信仰を忘れて騒いでる。どんなことがあっても、聖女を敬って気高く振る舞うのが光輝神教団だろ」


 名前のイメージ的に。


「それをやってないんだから、なるほど、教団は弱くなるなあ」


 俺の言葉に、信者たちが激怒した。

 というか、怒りをぶつけられる先を見つけた! ということであろう。


 ガガンが放った言葉は、信者たちが内心に抱いていた罪悪感にダイレクトアタックするものだったのだ。


 いいぞいいぞ、俺にヘイトが集まった。

 俺は悠然と、信者たちの前に出た。


「そんなことはない! 神は偉大だ!」


「その力を見せてやるぞ異教徒!!」


「あの生意気な男に神罰を食らわせてやれー!!」


 うおおーっと押し寄せてくる信者たち。

 だが、俺は既にこれをチュートリアル済みなのだった。


 嵐のように放たれてくる衝撃の魔法を、俺は一旦寝そべって全て回避した。

 そして尻移動の変形パターン、片尻移動で横寝の体勢にて群衆に突っ込む!


「うわーっ!? 変な姿勢で飛び込んできたぞ!」


「どこだ!? どこだ!?」


「ひい、足を切られた!」


「暴れるな! 仲間に当たるー!!」


 もう、大混乱。

 同士討ちしか発生しない。

 俺は、冷静なやつだけを狙って切り、無力化する。


 結果、冷静ではないやつだけが残るのだ。


 三分ほどで、彼らは同士討ちしまくって、何もわからなくなった。

 後は放置しても、仲間を殴り続ける。


 俺は尻移動にて、彼らの間からスーッと出てきた。


 アリスティアが呆然としている。


「聖女アリスティア。光輝神の加護が薄れてるので俺程度に蹂躙されるのだ……」


 俺はおごそかに言いながら立ち上がった。

 これを見て、向こうにいたルミイがぼそっと呟くのである。


「オクタゴン相手に互角っぽいマナビさんが、程度なんですかねえ……」

面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[一言] あの配管工の奥義!
[一言] 説得のためとは言え、世界でも最高戦力レベルのマナビが俺程度と言うのは笑ってしまう
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