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第106話 小競り合い・遭遇・思い出し

 白色と紫色の軍勢が争っている。


 白い軍勢は輝く武器を振るい、閃光が放たれ、衝撃波が敵を穿つ。

 中心にいるのは、白銀の鎧を纏った少女だ。


 紫色の軍勢は、その大半が人間ではないアンデッドたち。

 周囲を闇に染め、黒い武器が、爪が振り回され、目に見えるほど濃厚な呪いが敵を蝕む。

 中心にいるのは、暗紫色のローブを纏った大柄な女だ。


「戦争じゃないですか」


 遠巻きにこれを眺める俺がポツリと呟いたら、意外なことにカオルンから修正が来た。


「それは違うのだマナビ! これはどっちも神を信じる奴らなのだ! 同胞なのだ! だけど主義主張の違いで昔からいさかいがあったのだ!」


「カオルンが知的なことを……! そうか、もともと密偵だったもんな。セブンセンスには来たことがある?」


「もちろんなのだー。全部の国を回ったのだ! セブンセンスは帝国というより法国と呼ばれてて、法皇が治めてるのだ! その法皇は、色々な神様を信じる宗派の中から代表が出てきて、腕比べをして決めるのだ」


「法皇決定戦トーナメントがあるのか……。なかなか武力の国だった」


 眼の前で展開されている光景も納得できるだろう。

 血みどろでめちゃくちゃハードなバトルだ。


 首が、腕が、ポンポン飛ぶ。

 ガンガン死ぬ。

 死んだ端から、比較的軽傷なのは生き返って戦列に戻ってくる。


 アンデッドはもっと分かりやすく、壊されてもつなぎ合わされて新しいアンデッドになって戻る。

 で、誰かが死ぬ度に白銀の鎧の少女は悲しそうな顔をして、誰かが復活する度にローブの女は怒りの叫びを上げている。


「どういうこと?」


「戒律の違いなのだなー。内容はアカネルが詳しいのだ!」


「はいはい。当機能がプレゼンしますよ。ヘルプ機能には接続済みです」


 話が早い。

 あまりの話の流れの速度に、ガガンがついていけずにポカーンとしている。


「白い軍勢は光輝神アクシスの信者です。今、セブンセンスを統治する法皇もまたアクシスの最高司祭ですね」


「可愛い……」


 ガガンが呟いた。

 なんだお前、話の流れに置いていかれてポカーンとしてると思ったら、白い鎧の女の子見てポカーンとしてたのか。

 なるほど、アクシス教の白い女の子、かなり可愛いな。憂いのある感じの表情が凄くいい。


「マスターこっちです!! 他の女性を見てデレデレしてはいけません!」


「マナビさんが他の女の子見てデレデレしてたんですか!? だめですねー!」


「ウグワーッ!! 後ろから俺の両方のケツをつねるなー!! あひー、愛が重いぜ」


 アカネルとルミイから嫉妬攻撃を受けてしまった。

 他の女子には色目を使わんようにしよう……。


「それで、あの紫色の軍勢は死海神ルサルカの信者です。海と死を司る神で、復活の神聖魔法などを使うことは、生命の円環を乱すとして大変嫌っています」


「明らかに悪い奴らっぽいと思ってたら、凄くちゃんとした理由と教義があるんじゃん。なるほど、アンデッドなら死んでるから使っても大丈夫だもんな」


「ルサルカ信者は死ぬ時に、アンデッドとして奉仕する契約をする者がいて、そういう人だけアンデッドになります」


「凄くちゃんとしてた」


『いいねいいね』


 ペンダントからオクタゴンの声がする。

 ステディの予感がしたんだな。

 いきなりそれっぽいのに出会えるとか、幸先いいじゃないか。


 問題は、この戦闘をどうするかだが。


「んー、敵がはっきりしないのだ。カオルン、どっちを倒せばいいのだ?」


「どっちにも大義があるだろ、これ。どっちを倒しても恨みを買うから、静観してた方がいいな」


 俺の意見に、カオルンが不承不承頷いた。


「仕方ないのだ。スッキリ戦えないのは後がめんどくさいのだ! カオルン、後でガガンが手合わせしてくれるそうなので我慢するのを覚えたのだ!」


 おお!

 ウォーモンガー(戦闘狂)っぽいカオルンに自制心が!

 ガガンのおかげだ。


「オレとしても、訓練になるからな! 後で頼むぜカオルン!」


「任せるのだ!」


 ウィンウィンである。

 ということで、戦闘が終わるまでのんびり待つことにした。

 戦場の外にテントを張り、戦いをジーッと眺める。


 暇になったカオルンとガガンが、早速試合を開始した。

 カオルンは光の翼を封印しており、ガガンはトリッキーな相手への対策を練ってきていて、なかなかいい勝負をする。

 これは見てて楽しい。


 さて、時間は夕暮れ。

 逢魔が時とも言われており、その名の通りか、ルサルカの軍勢が力を増したようだ。

 攻勢が明らかに激しくなる。


 これを、アクシスの軍勢は揃って光のバリアみたいなのを張った。

 おうおう、日が暮れていくにつれて、バリアが押し負けていく。


 どんどんルサルカ側の力が強くなってるのだ。

 おっ、新戦力が加わった。


「レッサーヴァンパイアです。ルサルカ教団最強の戦力ですね。生きながらにしてルサルカの司る死の力を身に纏った高位の司祭です。ただし日光に照らされると灰になって死にます」


「ハイリスクハイリターン過ぎる」


 レッサーヴァンパイアの参戦で、戦況は決した。

 アクシス教団はバリアを次々張りながら、じりじりと押し込まれ、やがて潰走したのである。


 ルサルカ教団、これを追わない。

 よく見たら、一般兵であるアンデッドの多くが倒されているではないか。

 戦力的にギリギリでもあったんだな。


「よし、じゃあルサルカ教団に挨拶に行こう」


「えっ、マナビさん正気ですか! 明らかに怖そうな人たちじゃないですか! っていうか人がちょっぴりしかいません!!」


「戦場に人間をあんまり出してこないんだろうな。つまり命を大切にしている神様ということだ。行くぞ行くぞルミイ」


「あひー」


 嫌がるルミイの手を引っ張って、戦場へ歩いて行く。


「やあーやあールサルカ教団の諸君! 俺は凍土の王国からやって来た異世界召喚者で決して敵ではないのだが話がある!!」


 大きく手を振り、声を放つと、紫ローブの女とレッサーヴァンパイアがぎょっとしてこっちを見た。

 レッサーヴァンパイアは男だな。

 青白い顔に司祭の服を纏っている。真面目そうな顔をしているではないか。


 紫ローブの女は、俺より背が高いだろう。

 片目が赤く光っていたが、すぐにそちらに眼帯を付けた。

 赤毛を短く切りそろえていて、勝ち気な目つきと相まって、気の強そうな顔立ちだ。唇がぷくっとしていてなかなかえっちな顔をしている。


「マナビさんはどこからでもエッチを見出しますもんねえ」


「やめろルミイ、俺の心を読むな」


 下心丸出しだと思われたら警戒されちゃうだろ。


「なんだい、あんた」


「あっ、はすっぱな口調!! いい」


 キュンキュン来るな。

 俺はストライクゾーンがなかなか広いので、こういう姉御肌系女子もぜんぜんいけるのだ。


「な、なんだいあんた!?」


「ほらあ、マナビさんが口に出すから引かれましたよ!」


「ごめんごめん。あのな、アクシス教団と争ってるみたいだが、今の世の中はそういう内輪もめをしているどころでは無いと思ってやって来た。魔力の星が落ちたでしょ。普通の魔法が使えなくなったでしょ。そんな状況で内側でワイワイやってたら、フィフスエレの魔獣とかシクスゼクスの魔族にやられない?」


『確かに』


 レッサーヴァンパイアが頷いた。


『ナルカ、この方々は敵では無いようだ。話を聞いてみた方が良いのではないか?』


 なんて話の分かるレッサーヴァンパイアだ!


『それに、彼らもまた神を奉じる者たち。無信教な魔法帝国の連中とは違う』


 指差すのは、俺の首から下がったペンダントである。

 あー。

 これって、オクタゴンの聖印に当たるのか。


 助かっちゃったな。


「別にいいけどね。あたいはまた、あの聖女を取り逃がしたのが腹立たしいのさ。外国の男にかまけて、役割を果たせなくなったダメ女じゃないかい」


 ナルカと呼ばれた赤毛のお姉さんが、吐き捨てるように言った。

 外国の男に……?

 聖女の役割を果たせなくなった……?


 なんか色々覚えがありますねえ。

面白い!

先が読みたい!

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― 新着の感想 ―
[一言] あいつ生きてたら下手したらラスボスだったかもしれんね(二重の意味で)
[一言] 神々が居るならオクタゴンの婚活もできそう あの脳破壊野郎は本当に始末して正解だったな…
[一言] なんかあるなあ。
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