28、あれ?またなんか以下略
イケオジな御二方が戦っているところが、とてつもなく格好良すぎた件。
木の上から抱っこでおろしてくれたのはアカガネさんだった。
ありがとう、い〜い筋肉です。
「これでしばらくは大丈夫でしょう」
「彩綾、怖かったか?」
「だ、だいじょぶ、です」
御二方の戦いに見惚れていたとは言えず、無難な回答を返す私。
なぜなら、そういうこと言ったり褒めたりするのが恥ずかしいからだ。
「なに? 俺らに見惚れてたのか?」
「ちがいますし!!」
ほら、こうやって否定しちゃうんだよ。恥ずかしいんだよ。
それでもニヤリと笑うアカガネさんには、お見通しなんだろうな。ちくしょう。
「もう少し頑張れますか? ここまで不安定な場となると、これの本体の所から界を渡るしかないのです」
「え? そうなの?」
「心配ない。俺らが守る」
「いや、そうじゃなくて」
さっきのウネウネしていた白いものの本体って、嫌な予感しかしないんですけど……。
「大丈夫ですよ。縁起物ですから」
「本体は一本だ。安心しとけ」
モフモフしていないものは、基本無理だと思ってください!!
異界の森の奥へ行く私たちの目の前に、とうとつに岩山が立ちはだかった。
近づくにつれて、岩の裂け目の奥から冷たい空気が靄となって出ているのが分かる。
けっこう歩いたから疲れるかと思ったけど、思ったより平気みたい。もしかしたら体力が増えたのかな?
「その毛玉のおかげで、移動も楽だろう? 後でうまいもん食わせてやれよ」
違いました! コンちゃんのおかげでした!
木の実とか果物が好きみたいだから、お高いのを買ってあげよう。
コンちゃんを手に持ってたら危ないからと、移動中はアカガネさんを見習って?頭に乗せている。
歩いていると地面から適度に反発があるというか、ふわふわと助けてくれている感じなのだ。踏み込むたびに浮く感じが、なんだか楽しい。
楽ちんだから常時やってほしいと思ったけど、異界限定で力を解放できるんだって。
まだ子狐だからね……しょうがないよね……。
岩の裂け目に入っていく御二方を追いかければ、どんどん地底へ向かっているようです。ちょっとこわい。
しばらく歩いていると、ほどなく広い場所に出た。
私たちの目の前にあるのは、鎮座した「太くて大きくて長くて白いもの」でありまして。
「だいぶ大きく育ってますね」
「あれだけ分体を出して消費しても、まだここまであるのか」
「これって、白い……蛇?」
白色の中に銀色に光る、巨大な網目状の模様。
とぐろを巻いているそれは、ピラミッドくらいの大きさと言えば分かりやすいかもしれない。
……見たことないけど。
「前回の神獣は弱っていましたが、今回は栄養過多といったところでしょうか」
「管理がなってないな。彩綾が引っ張られた理由も、これが原因か」
「なんで私が呼ばれたの?」
いや、元々ここには来る予定だった。
御二方のことがあるし、異界の温泉にも興味があったから。
偶然とはいえ、こういう不思議な出来事に遭遇するようになったのは、何もない平凡な毎日を送るよりは楽しい。
何よりも、ギンセイさんとアカガネさんという美丈夫たちを認識できたのは嬉しすぎる。
御二方の存在は、独り身の私にとって潤いであり砂漠の中のオアシスだ。永遠に眺めていたい、目の保養でもある。
時々かっこよすぎて心臓が保たないくらいだよ。はふん。
思いを馳せていると、大きな白い蛇を撫でているギンセイさんが小さく息を吐く。
「あまり彩綾の前世に触れたくなかったのですが……ここまで異界に呼ばれるならば、知っておいてもらったほうが良さそうですね」
「彩綾には今を好きなように生きてほしいんだよ。だから異界の地図も隠したっつーのによ」
「なるほどー」
だから私がやることに関してサポートはしてくれるけど、積極的じゃなかったのか。
ふむふむ。ならば物申す。
「じゃあ、これからはガンガン異界のことを教えてよ。御二方の力を取り戻したいし、色々な温泉に入りたい」
「温泉ですね」
「温泉だな」
温泉です!!!!
ムフフとドヤ顔でいる私の頭を、苦笑しながら撫でてくれるアカガネさん。
なんだかんだ御二方は分かってくれているんだろう。温泉は言い訳だってこと。悔しいし恥ずかしいから絶対言葉に出さないけどね!!
「私たちに協力してくれる彩綾の気持ちは嬉しいのですが、残念なお知らせがあります」
「残念?」
困ったように微笑むギンセイに頭を撫でられながら、こてりと首を傾げる。
「今世の彩綾は、とにかく弱い。弱すぎる」
「弱いとダメ?」
「ここに来るたびに倒れていたら、温泉どころじゃないだろうな」
「そんなぁ……」
「きゅぅー!!」
ガックリとうなだれていると、不意に頭にいるコンちゃんが鳴き声をあげた。
身構えるアカガネさんと、私を背に隠すギンセイさん。
すると、目の前にいた巨大な白蛇が銀色に光り、その体が皮膜のようなものに包まれていく。
これはまさか……。
「脱皮?」
ギンセイさんの広い背中からこっそり覗き見すると、皮膜の一部が裂けて……。
「しゅぅー!!」
小さな白蛇が出てきた。
「あ、かわいい。ニョロちゃん」
「彩綾!?」
「おい!?」
しまった!! またやっちゃった!?
焦る私たちの目の前で、白蛇ちゃんはゆっくりかま首を上げて……ゆらゆらと横に振った。
「しゅしゅぅ」
「だが断る、と言ってます」
断られた!!
「いや確かにニョロはないよな」
「ねーみんぐせんす、が乏しい彩綾も愛らしいですよ」
「ああ、どんな彩綾も可愛いな」
ネーミングセンスなんて言葉、どこで覚えたのですかギンセイさん。
あと流れるように同意しなくてもいいですアカガネさん。
ニョロじゃなければいいんでしょ! ニョロ以外で考えるよ!
「じゃあ、白蛇だからハクちゃん」
「しゅぅー♪」
「やはりこうなりましたか……」
「今回は回避できたと思ったのになぁ……」
あ、あれ? こういうことじゃなかったの???
ひぃん!!
お読みいただき、ありがとうございます。




