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イケオジ神様たちに甘やかされて困っ……てません!  作者: もちだもちこ


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25、来世に期待したいところ


 確かにあの時、御二方がサラッと「温泉は異界の管理下におかれている」などと言っていたような。

 ということは、管理しているものが何か調べれば……と思ったけど、どうすりゃいいんの? そもそも異界ってなんなんだってところからスタートだったりするんですけれども。


 おかわりのナッツをコンちゃんにあげながら先日のことを思い返す私を見て、藤乃は苦笑している。


「名付けや繋がりのことを知るには、まずは大元おおもとが何かを理解しておく必要がある。あの二つが言わないということは、何かしらの制限があるのだろう」


「そっか。これは私が動かないとダメなんだね」


「無理はしないように」


「はーい」


 本当にわかっているのか?と、藤乃から疑いの眼差しを向けられているけれど、大丈夫ですよ。私だっていい大人なんですから。


 大きく息を吐いた藤乃は、後ろへ向かって声をかける。


「……彩綾を守ってやってくれ」


『言われずとも』

『必ずや』


 後ろにあるテーブル席に、ちゃっかり座っているアカガネさんとギンセイさん。どれだけ飲んでいるのか、一升瓶が数本置かれているのが気になるのですががが。

 バーの雰囲気に合わせてスーツ姿なので、とても眼福でございます。


 彼らの姿は、バーの店員や他の客にはぼんやりと認識される程度。実体はなくても「何かがいる」という感覚になるらしい。

 藤乃は元々視力?が良いから視えるとのこと。きっとキラキラ田中君に憑いているお姉さんことも視えてしまうのだろう。大変だと思う。


 さて。

 問題は、御二方のお会計についてです。


『お気になさらズ』

『経費で落としましゅ!』


 あ、いつの間にいたのか赤鬼さんと青鬼さんがいる。

 バーテンダーの格好がよく似合うね! そしていつも経費、お疲れ様です!


 御二方はザルなので、酒代が危険すぎるのだよ……。


「そういえば、氷室さんは元気?」


「……元気だ。近々会いに行くと言っていたよ」


「いつも綺麗なお着物姿だから、次はどんなのか楽しみなんだよね。私、七五三と成人式でしか着たことないけど」


 そして着た早々脱ぎたがって、親が写真を慌てて撮っていた思い出。


『確かに、彩綾は着物がキツイって泣いてたな』


『赤色がとてもよく似合っていましたよ』


 ぐぬぬ、御二方が私の黒歴史を晒していく件。

 生まれた時から近くで見守っていたという御二方は、昔の私を肴に酒をおいしく飲んでらっしゃるのでしょう。


 あれ? 赤色?


「ギンセイさん、私の着物って赤だった?」


『ええ。確か赤い着物でしたよ』


『そうだよな。赤だったぞ』


 ギンセイさんだけじゃなく、アカガネさんまで赤だと言っている。

 私も赤だと思ってたけど勘違いだったと、この前実家で母から聞いたばっかりなんだけど。


「私も勘違いしてたけど、実家のアルバムにも『赤い着物』は無かったよ。母は七五三も成人式も赤じゃないと言ってたし」


「成人式の彩綾は緑系だったな」


 藤乃には笑いのネタとして画像を送ったことがある。あの時のオカメ・メイクは笑うしかなかった。メイクだけでも自分でやるべきだったと後悔したものだ。


 ……周りにはウケていたからいいけどさ。


『彩綾に関しての記憶が違うなんて、私たちに限ってはあり得ないことです』


『確かにな。だが、何かに頭をいじられたって感じもないぞ』


 アカガネさんの「頭をいじられる」という言葉が怖すぎる。

 そして、何かを思い出すように唇に指をあてているギンセイさんは、懐から一枚の写真を取り出す。

 

 そこには、赤い着物姿の幼女がいる。


「これ、私……じゃなかった」


「愛らしい幼女だな。彩綾よりも賢そうに見える」


 ひょいと覗き込んだ藤乃が失礼なことを言っている。

 何だと!? と思ったけど、確かに写真の子は私よりも賢そうだ。


『正確にいうと写真ではありませんよ』


『念写ってやつだな』


「念写……」


 ギンセイさんは、わりと器用なことするなぁ。料理も色々と研究して手の込んだものを作ってくれるし。おいしいし。

 ところで幼女の絵を懐に入れていた理由は?(真顔)


『おや……嫉妬ですか?』


『なんだよ。嫉妬するのはギンセイだけか? 俺にはないの?』


「嫉妬じゃないですぅー」


 ちょっとだけですぅー。


 冗談?はさておき、絵の幼女が身につけている赤い着物について既視感があるのだよ。

 実家でアルバムを見たけど、赤い着物の写真は一枚もなかったし。


『なぜ彩綾は赤い着物を気にするのです?』


「この前のことだけど……赤い着物を着ている私が、誰かに追いかけられている夢を見たの。押し入れに隠れながら誰かを待っているって感じだった」


『今の彩綾くらいの年齢か?』


「うーん、この絵の子と同じくらいだったと思う」


『へぇ、そういうことか』


 アカガネさんが納得したように頷くと、ギンセイさんは同調するようにやわらかな笑みを浮かべる。


『この子は、彩綾の前世ですよ』


 なるほど。私の前世は着物幼女ですか。

 御二方が言うからにはその通りだと思うよ。思うけれども。

 いきなり「前世」とか言われても受け入れづらいといいますか……。こういうスピリチュアルな案件は、もうお腹いっぱいといいますか……。


 写っている幼女の笑顔を見て、ふと気づく。


「もしや私、前世から見られていた?」


『ええ。それが何か?』


『当然だろ?』


 うん。何が当然なのか、まったく理解できないのだが?




お読みいただき、ありがとうございます。

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