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イケオジ神様たちに甘やかされて困っ……てません!  作者: もちだもちこ


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23、きっちりお仕事しないとね


 柔らかな肉球を痛めないよう敷かれた絨毯の上で、転がり回る黄金色の毛玉。

 フローリングへ出てしまいそうになったら、そっと手のひらで受け止めてあげる。

 きゅるんと見上げてくる朱色の目に、頬がゆるゆるになってしまう私。


「はぁ、かわいい。どちゃくそかわいい。かわいいがすぎる。ここがペット禁止じゃなくてよかった」


「おい、神獣をペット扱いするなよ」


「ですが、これをペットじゃないと言い切るのは難しいような……」


 呆れた表情のアカガネさんだけど、神獣の子のために色々と環境を整えたのは彼だったりする。

 ギンセイさんは相性のこともあって声が聞きづらいんだって言うけど、もしかしたら他の地図にある『印』には別の神獣がいて、相性が良ければ会話できたりするのかな?

 うーん、ギンセイさんと相性のいい神獣かぁ……こういう知識がないから思いつかない。藤乃なら色々と出てきそうだけど。


「まぁ、俺らもいるし、神獣の子にとっての環境はいいだろうな。今は異界と現世の均衡が崩れているし」


「この部屋も異界に馴染んできましたからね」


「その均衡っていうのは大丈夫なの?」


「ここは彩綾と俺らの管理下になってるから崩れようがない」


「名付けの繋がりも安定している理由のひとつですよ」


 へぇ、そうなんだ……って、ちょっと待ってくださいよ。


 私は普通の人間だし、ここは賃貸なので異界化されると困るんですけど。引っ越すときは元に戻してくださいお願いします。


 用意されていた朝食を食べ終えた私は、ごちそうさましてキッチンに食器を持って行く。今日は姿の見えない誰かさんが作ってくれた和食だ。ほうれん草のおひたしが美味しかったよ。なめこのお味噌汁もいいけど、今度は赤だしがいいなぁ。

 すると、流しのほうからふわっと風が吹いてきた。どうやら次に期待していいみたい。


「あ、そろそろ仕事行かないと。この子どうしよ」


「俺が預かっておく」


「この子と私たちが同列なのは微妙な気持ちになりますが」


 それは正直申し訳ないと思っている。

 御二方に名付けをしたのと同じことを神獣の子にしてしまったから、私を主として同じ繋がりができてしまった。

 でも、あれはノリというか気分というか……そう呼びたくなってしまっただけで……。


 ふと気づく。


「あれ? 御二方とも実体化してます?」


「やっと気がつきましたか」


「彩綾……鈍すぎるだろ……」


「そこが彩綾のかわいいところですよ」


「言えてる」


 なぜそこから「かわいい」に繋がるのか。

 そして御二方の解釈一致でよかったな。戦争回避だな。


 そういえば、温泉……じゃない、異界に行った時も御二方は実体化していたもんね。この部屋も異界みたいになってるってことは、有り得る話ということで。


「藤乃になんて報告したらいいの……」


 週末の「報告会」について、早くも怒られる予感しかない。

 それはコンちゃんのことや、部屋の異界化のことではなく……いや、それもあるんだけど、それだけじゃないってことで。


 まぁ、今は仕事に集中しよう。

 週末のことは週末の私が頑張ってくれるってことで。







「え? 新入社員研修ですか?」


「そうそう。いつもは別の部署でやってるんだけど、ちょうど繁忙期に入っちゃったから、うちにお役目が回ってきたんだよねー」


「はぁ……」


 言っちゃ悪いけど、私の所属している部署はお世辞にも花形といった業務ではない。

 営業がとってきた発注を会社に直結している工場に依頼をかけて、製造と出荷のコントロールをするラインを見守るのが仕事だ。

 時には間に合わないという製造チームを手伝ったり、資料が足りないという営業チームを手伝ったりという、要は何でも屋みたいなものだ。

 ただ表立って営業かけるのは苦手で、製造に入る技術もない私にとって、こういうサポート的な役割は向いているのだと思っている。

 そうは思っているけれど。


「私が教えるんですか? うちの仕事を?」


「そうそう。ボクもねー、ちょっと忙しいからねー」


 嘘である。

 このオッサンは仕事中、お子さんが好きなアニメをチェックして、家庭内での話題に事欠かない状況を作り出すことに集中していたいだけだ。

 そして、上司の後ろに立っている御二方が、ドス黒い何かを出しているのだ。

 やっちまえ! じゃなくて、落ち着いて御二方!


「研修ですから、流れ程度でいいですよね?」


「大丈夫だよー、本来はうちの仕事じゃないんだからさ。その新人も製造チームに所属するのが決まっているからさー」


「……わかりました」


 ハッキリ言って面倒くさい。

 でも、ここで新人さんに仕事を覚えてもらうことは、うちの部署にとってプラスになる。


 ……嫌われなければ、だけど。


『彩綾なら大丈夫だ』


『むしろ心配なのは、その後のことになりそうです』


 ブツブツ言いながら上司の髪をプチプチ抜いている御二方には「ほどほどにね」とアイコンタクトをした私は、さっそく新人さんを迎えに行くことに。

 通常業務は上司に押し付けておこう。ぺっ。



 グレーの作業着を身につけている人たちをすれ違いながら、別棟にある製造工場に入るとキラキラしたオーラが見える。

 おお、あれが夢と希望に満ち溢れた新人オーラなのか……何もかもが懐かしい……。


『ありゃあ、なかなかのもんだな』


『愛されていますね。私たちほどではないですが』


 見るからに好青年といった様子の彼は、私を見て輝かんばかりの笑顔で駆け寄ってくる。

 新入社員らしくパリッとしたスーツ姿だけど、まだ似合っていないところがフレッシュ感を出しているね。

 そして彼の笑顔や白い歯が光っていて眩しい件。動画でもないのにエフェクトでも付いているの? 


『なんだコイツ、犬かよ』


『面倒な予感がしますね』


 奇遇ですね御二方とも。私も同じことを思っていました。


「研修の……ですよね! 初めまして田中です! お世話になります!」


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」


 御二方ほどではないとはいえ、高身長の新人田中君を見上げながら眩しさに目をショボショボさせながら挨拶を返す。

 そして田中君の下の名前は……まぁいいか。うちの部署に田中はいないし。

 製造チームにはメガネの田中と女性の田中がいるから、新人の彼は光る田中と呼ばれるかもしれないな。


『眩しいのは俺らだけだと思うぞ』


『彩綾も目が良くなっているので、眩しく感じるのでしょう』


 えー、これからしばらく一緒に行動するんですけど。ずっと眩しいのかな。

 なんか目が疲れそうで嫌なんですけど……。


 いかんいかん。

 新人の田中君に罪はない。せめてストレスのない研修生活を送らせてあげないと。

 そして製造チームに私の味方を作って増やして、仕事をやりやすくしていくのだ。


『そこの女』


 田中君には仕事の流れと、製造チームの連携の部分を詳しく説明したほうがいいよね。


『そこの女、聞いておるのか』


 あ、営業チームと仲良くすると、おいしいお菓子をもらえるって教えてあげなきゃ。


『妾が呼びかけておるのだぞ!!』


 うるさいなぁと思ったら、田中君の後ろでエロい格好しているお姉さんが御二方に取り押さえられていた。


 ええと、仕事に戻っていいですか?


『置いていくな!! これらをどうにかせよ!!』


 もう、しょうがないなぁ。

 今回だけですよ?(渋々)




お読みいただき、ありがとうございます。


Twitterにて、(有償で)描いていただいたイラストを公開しています!


Twitter ID :@himasen_saya


イケオジな御二方を、ぜひ!!ぜひ!!

(主人公もかわいいよw)

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