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イケオジ神様たちに甘やかされて困っ……てません!  作者: もちだもちこ


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20、そこに山があるからね


 雨が止んで外に出ると、来た時よりも少しだけ緑が薄くなったように感じる。

 いやいやちょっと待って。ちょっと待ってクダサイヨー。


「さっきは、もっと切っていたはずなのに……」


『一定の植物が生えるように、この辺り一帯にまじないが組まれています。』


『ただ、入り口は見えたぞ。今から行ってみるか?』


「行けるの!?」


 手元にある「おいでよ! 魔界の地へ」を取り出しページをめくれば、この近辺の地図があるのだけど……。


 おかしい。

 前に見た時よりも、印の色がハッキリしている。よく見たら「土」という字になっていた。


「前はうすいピンクだったのに、今は赤くなっているよ。これ、御二方が何かしたから?」


『隠している緑を薄くしましたからね』


『ああ、また閉じていくぞ。あと数分ってところか』


「い、いきましゅ!」


 慌てて返事をしたら噛んだ。

 そんな私を見てニヤリと男くさく笑ったアカガネさんは、ふわりと抱き上げて庭の奥へと進む。

 ふぉっ!? ナンデ!? ナンデ抱っこ!?


『帰りは私が担当しますよ』


 そういうことじゃない!!


 あわあわしている私に構うことなく、庭の奥へと入っていく御二方。

 そして、ふと気づく。


「庭、こんなに広かったっけ?」


「いや、もう界を渡ったぞ」


「私たち以外に気配はないので、とりあえずここは安全ですね」


 地面に降ろされた私が御二方を見ると、さっきよりもハッキリと見える。実体化した時と同じ感じだ。

 普段はピントの合わない眼鏡をかけている感じの見えかたなんだよね。


 先を進むのはギンセイさんで、アカガネさんは私の後ろを警戒しながら定位置の右側にいる。

 何も疑問を持たずに歩いていたけど、一体どこに向かっているのかしら?


「とりあえず、開けた場所に出ましょうか。印の場所に行けば何かあると思いましたが、今のところ何もありませんからね」


「危険だとかいう話じゃなかったっけ?」


「現世の人間にとって、異界は危険でしかないものですよ」


 そういえば、異界は化け物?がいっぱいいるって話だったよね。

 気をつけないと……。


 でも、御二方とも相変わらずの着流し姿で、武器とか持っていない。私なんか防御力が迷子のワンピースだ。幸いにもスニーカーを履いているから、歩くのは大丈夫なんだけどね。

 虫に刺されたら嫌だなぁと思いながら、前を歩くギンセイさんの揺れる白金色の髪を目印にひたすら歩く。

 スーツの時は短かったけど、いつもは髪が長い御二方。

 艶のある魅惑のサラサラヘアー、一体どうやってキープしているのかは謎だ。


「異界で落ちているものを拾ったりすんなよ」


「もう、子どもじゃないんだから」


 異なる世界……異界というには、あまりにも普通だ。

 ただ整っていない庭を歩いているから、少し歩きづらいなぁというくらいの感想だ。


 空は青いし、植物は緑だし、まったく異界という感じがしないのですが。


「薄緑色の空とか、そういうのかと思ってた」


「どこの星だそれは」


 有名アニメのことを考えていたら、アカガネさんから絶妙なツッコミをうける。

 こやつまさか……再放送を網羅しているのか……?


「アカガネ」


「おう」


 とうとつに目の前に広い背中が現れて、ぶつかりそうになったのを慌ててストップかけようとして失敗し、思い切り鼻をぶつける。痛い。


「えっ、なになに?」


「前に出るなよ。悪い念が取り巻いてやがる」


「うーん、なかなかの大物ですね」


 さっきまで流れていた爽やかな風は感じられず、強烈な圧迫感に心臓のドキドキが止まらない。

 まったく状況が分からないのだけど、見えないのも怖すぎる。

 そーっと、ちょっとだけ……。


「あっ、こら」


「ふぁーっ!! 何これ!!」


 目の前にあるのは、金色の毛並みをモッフモフさせた……。


「……山?」


「彩綾、下がっててください」


「え、でも、モフモフが……」


「これ以上オイタすんなら、お仕置きだぞ」


 見ればギンセイさんは槍を、アカガネさんは刀を持って構えている。

 え、お二方、このモフモフ山と戦うの?


 モフモフに目を向けると、殺気だったように毛を膨らませている。

 怒ってるのかな? なんで?


「彩綾がモフモフ好きなのは分かりますが、これは神獣に近い存在です。下手に刺激するものではありませんよ」


「戦闘になると、前の……いや、ちょっとばかしキツいかもな」


 たぶん、アカガネさんが言いたかったのは「前の自分だったら」なのかな。私が名付けをしたことによって、御二方の力が制限されているみたいだし……。

 そしてモフモフ山の顔は見えないんだけど、これ、怒っているというか警戒している感じがする。

 昔飼っていた犬も病院に行くと言った時と同じだと思うんだよね。このモフモフが犬かどうかは分からないけど。


 気になってジッと見ていると、モフモフ山の向こう側に小さな毛玉が見えた。


「あれって、もしかして子ども?」


「なんだと!?」


「産後で体力を失っているところを、悪しき念に囚われましたか」


 警戒の唸り声を上げているだけで動くことはないと分かり、前に出ていたギンセイさんが厳しい表情のまま戻ってくる。アカガネさんの表情もかたいままだ。

 


「ど、どうなるの?」


「このままだと悪しき獣となるだけだ。子、もろともな」


「そんな!!」


「ここで私たちが動かなくても、異界の管理局が討伐することになります」


 管理局ってなんぞや?

 いやいやそれよりも、悪いものになったら討たれちゃうってこと? 今は動かないだけで何も悪いことしていないのに……。


「そんなの嫌だよ! あの子犬のコンちゃんは生まれたばかりなんでしょ!?」


「コンちゃんってなんだ?」


「あの小っちゃい毛玉だよ! 金色こんじきのコンちゃん!」


「おい……」


「おや……」


「え? 何?」


 突然、金色のモフモフ(大)が顔をこっちに向けてきた。


 ふぉ、でかい。

 まんまるな目は緑色の宝石みたいに輝いている。ピンと立ったモフモフ耳はこちらを向いて、細く長いマズルの先に鼻はクンクンと私たちの匂いを嗅いでいるようだ。




 そして、犬じゃなくて狐だったよ。ゴメン。 



お読みいただき、ありがとうございます。

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