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イケオジ神様たちに甘やかされて困っ……てません!  作者: もちだもちこ


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14/40

11、どの料理でも日本酒は合うよね

 朝起きたら、部屋に岩山が生えてました。

 いや、違うね。そうじゃないね。

 岩山のような鬼さんがいました。


『どうも、おはようございまス』


「おはようございま、ス?」


 思わず鬼さんの口調に釣られて挨拶をすれば、ふわっとムチッと抱き上げられる。


『おい、朝一番の挨拶は、俺らにしておけよ』


 ひぇー! アカガネさん! 耳元で甘く囁かないでー!


 すると爽やかな香りとともに、別のムチッとした腕に抱き上げられた。


『朝ごはん、出来ていますよ』


 ギンセイさんに運ばれそっと座らされた私は、目の前に置かれた厚焼き卵に目を奪われてしまう。きっとこれは……。


「今日の朝ごはんは、見えないさん?」


『ええ、渾身の出来ばえとのことです』


「これはもうプロの犯行ですな!」


 姿の見えない『見えないさん』は、今は二人くらいいるらしい。

 いかんせん姿を見せないから、御二方も気配だけでの判断とのこと。


 どこぞの料亭で出されてもおかしくない味、そして焼き加減。

 甘い卵焼きが苦手な私のために、お出汁で味を整えた上に、大根おろしまで用意されている。なんという贅沢。

 お味噌汁は赤だしで、なめことワカメが入ってる。好き。


「はぁー、ほっこりするー」


『彩綾は今日から仕事ですよね?』


 スーツを準備してくれるギンセイさんの確認に、私は口の中にある卵焼きを飲み込んでから頷く。


「うん。もしかしたら遅くなるかもだけど」


『あん? 何でだ?』


 眉間に深い深いシワを作るアカガネさん。

 なぜ急に機嫌が悪くなるの? 卵焼き食べるかなと「あーん」して差し出せば、嬉しそうに頬張っている。

 うん、かわいい。


「ちょうど同期会があるんだよね。連休前にメールがきててさ、なんでこんなに先の予定を決めるのかと不思議だったけど休み明けの話だったみたい」


『そういえば、彩綾は連休があることを忘れてましたね』


 そう言って「あーん」と口を開くギンセイさんにも卵焼きを放り込む。

 はい、かわいい。


 結構大きいので、私だけじゃ食べきれないから御二方に頑張ってもらおう。まるで親鳥の気持ちでイケオジたちに餌を与えていく。


「あっ」


 やばい。こんなことしてたら遅刻しちゃう。


 ところで、何で岩山の鬼さんがいたんだろう? 

 美術館のオブジェ、大丈夫かな……。







 私が勤めているところは大手のメーカーで、子会社や関連会社も多い。

 社員も多いから同期もワンサカいるのだけど、なんだかんだで気が合う同士のグループが作られていった。

 いくつかあるグループのひとつに私は所属しているのだけど、あまり人付き合いが得意じゃない私はボッチ回避できたことにホッとしていたりする。


『彩綾は人と交流すんの上手いと思うけどなぁ』


「私、めちゃくちゃ話すタイプの人見知りだから」


『同期というと、あの絡みですか。……安全、とも言えませんね』


「何が?」


『いえ、お気になさらず』


 いやいや、お気にしちゃいますぞ。

 御二方は会社も付いてくるけれど、仕事中は離れたところにいるから気にならないのだ。

 気をつかってくれているのは分かるけど、やたらガタイのいいイケオジが二人で打ち合わせスペースで寛いているのは、すごく浮いて見える。


 後でコーヒーでも持って行こうかなんて思っていたら、今夜の幹事がやってきた。


「河野お疲れ。今日の同期会、忘れてないよな?」


「忘れてないよ」


 営業部のエースである彼、池手いけてくんは、私の目が一瞬泳いだことを見逃さなかったようだ。


「本当のところは?」


「同期会は忘れてないけど、連休があることを忘れていた」


「おま……マジかよ。連休どこも行かなかったのか?」


「行ったよ! 駅前のファッションモールとか図書館とか!」


「全部自宅近辺じゃねーか」


 ぐぬぅ……奴の日に焼けた肌がムカつくぅ……!!


 まぁ、色々あったから、旅行とか休みの計画を考える余裕は無かったよね。

 むしろ忘れてて良かったよ。予定入れてたら全部キャンセルすることになっていたと思う。


 イライラしてきたので、仕事の続きをすることに。

 無言でキーボードを叩いていたら、もう離れたと思った池手くんがわざわざ椅子を持ってきて隣に座った。


「でー?」


「ん?」


「何があった?」


「とても有意義な連休を過ごしたよ」


「それは知ってる」


 え? と思って横を見れば、思った以上に近くに顔があって思わずのけ反り……というか、むっちりとした筋肉に顔がうまってしまう。

 ちょっとぉ……ムチムチしてるじゃないですかぁ……至福ぅ……。


 再び池手くんを見れば、キョトンとした顔の彼がいる。


「なんだ? 今、なにがあった?」


「何だろうねー? ……あ、経理部の人が呼んでるって」


 偶然というには妙なタイミングで現れた経理部の男性に、気になって上を見たら笑顔のイケオジたちがいる。眼福……じゃない、何をしたのか御二方よ。


「まぁいいや、後で聞くから」


「何もないって」


「はいはい。またな」


 それにしても池手くんは、私が連休予定を入れなかった事について、そんなに気になるの? 

 一体どんな性癖なの?(性癖、とは)


『じゃ、今日は早く帰ろうぜ』


『彩綾の好きな煮込みハンバーグと、秘蔵の日本酒をいただくのはどうですか?』


 いやだから、今日は同期会なんだっつの。

 ちょっと嫉妬されてるみたいで嬉しいなんて、絶対言ってやらないんだから。




 そしてさりげなく「秘蔵の日本酒」を出してくるのは卑怯なり。


お読みいただき、ありがとうございます!

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