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黒のジーク 《書籍版発売中》  作者: ケンイチ
第七章
121/126

第八話

「あれがファブール軍か……侯爵軍より統制が取れているな。もしかすると、連合軍よりも上かもしれない……まあ、当たり前か」


 連合軍の会議の後、連合軍内の俺の評価はかなり下がったみたいだが、その分注目度も下がったらしく、簡単に連合軍から単独で離れることが出来た。そしてそのまま走り続け、一時間もしない内に敵陣の近くまで接近した。

 今はファブール軍のすぐ近くに生えていた木の上で様子を窺っているのだが、ファブール軍は数で負けていることもあって油断をせずに、時折俺の入り木の下まで警戒にやってきて、用心深く木の上まで見て異変がないか調べていた。

 ただ、流石に木に登ってまで調べてこなかったし、俺も近づかれると影に潜ってやり過ごしたので、今のところ怪しまれてはいないようだ。


 そんなファブール軍に比べ、一応味方としてやってきたはずの侯爵軍はというと、単独でも数で勝っているからか油断しきっており、周辺の警戒もそこそこ……どころかほぼやっていないようなもので、中には酒瓶をもって陣の周辺を歩いているだけの兵もいたくらいだ。

 あれでは少数で奇襲をかけられただけで、簡単に敗走することになるだろう。


 連合軍も連合軍で、油断とまではいかないがまだ戦闘態勢に入っているとは言えない者たちが多い上に、今は一つの目的に向かって揃った動きを見せているとはいえ、悪く言えば寄せ集めなので一枚岩と言える程の連携が取れているとは言い辛い。


「まあ、それでもこのまま当たれば連合軍が無様に敗走することは無いだろうが……侯爵軍が足を引っ張った場合、どう転ぶか分からないな」


 なので、出来るだけ正面からぶつかる前に敵の志気を削ぐ必要がある。

 その為に、一番わかりやすい敵側の象徴とも言える今代の雷の情報を集め、出来れば今夜にでもケリを付けたいと思いここまで来たのだが……


「流石に開戦前に前線まで出張ってきていないか……となると、街に侵入しないといけないな」


 その前に少し陣の中を見てみようと思い、木に登った時と同じように影に潜って移動したが、あまり有用な情報は得られなかった。その代わり、


「装備品や食料の保管場所が分かったのはありがたいな」


 テントの影に潜りながら移動したおかげで、その二つの場所を発見することが出来た。

 ただ、流石に全てをまとめているわけではないので、他にも何か所かあるみたいだが、同じような警備の仕方をしているところを探せば残りの場所も見つけることが出来そうだ。

 それに、発見ついでに忍び込んで、見張りがいない隙に中にあったものをいくつか拝借することが出来たので、ファブールの戦力を分析するのに役立つかもしれない。

 あと、武器は割といいものを揃えていたので普通に使ってもいいし、鎧などは潜入する時に使えそうだ。ただ食料に関しては忍び込んだところにあったのは保存食ばかり、味にはあまり期待できそうにない。


「開戦の前日にでも食糧庫に火をかければ、それだけで有利にはなりそうだな。その時は武器も出来る限り頂戴するか」


 上手くいけば、略奪品だけで一財産築けそうだな……と思いながら、俺はファブール軍の陣を抜けて、今代の雷がいると思われる街へと侵入した。


「さて、潜り込んだはいいが、これからどうするか……まずは情報収集と言いたいところだが、平時ならともかく、こんな情勢の中だと知らない顔が夜に現れれば警戒されるだろうから、このまま見つからないように探すしかないか……まあ、デカい建物を中心に探せば、すぐに見つかるだろう」


 というわけで裏道を中心に移動して、怪しそうな建物を探したのだが……なかなか今代の雷の痕跡を見つけることが出来なかった。

 探した中には、この街の代表や有力者と思われる者の家もあったのだが、そのいずれにも今代の雷どころか、ファブールの兵士の痕跡すら見つからなかった。

 こういった他国の街を占領した場合は、広くて頑丈に作られていることの多い権力者の家を接収して使うはずだと思っていたので、見落としがあったのかと考えた時、


「そう言えば、あそこがまだだったな」


 と、ある場所の存在を思い出し、それっぽい建物を探すことにした。そして、


「どうやらここで合っているみたいだな。確かにここなら広さも十分で頑丈だし、普段から荒くれ者ばかりだから、侵略者にはお似合いと言えばお似合いの場所か」


 俺は冒険者ギルドの建物に入っていく兵士らしき男の姿を確認しながら、近くの建物の陰に隠れて独り言をつぶやいた。


 とりあえず、本当に今代の雷が冒険者ギルドを根城にしているのなら確かめなくてはと思い、隙を見てギルドの建物のそばへと移動したのだが……


「いたか?」

「いや、こっちにはいないな」


 中の様子を窺おうと窓から覗いて数分もしない内に、上の階から数人の兵士が走ってきて俺のいた場所へとやってきた。

 だが、すぐに影に潜ったおかげで兵士に発見されることは無かったが、あの様子だと建物に近づいた瞬間に察知できるような仕掛けが施されていると見て間違いなさそうだ。


「防犯センサーみたいな道具でもあるのかもしれないが、そんなものよりも今代の雷の魔法だと考えた方がいいかもな」


 一度元居た場所に戻り、兵士たちをやり過ごした俺は、あの反応で冒険者ギルドに今代の雷がいると確信した。

 それに、どうやら今代の雷の魔法もしくは道具では、陰に潜った相手に対しては察知することが出来なくなるのと範囲は建物の横道までのようで、向かいの建物の影にいる俺に兵士が気づかずに戻っていったし、その後しばらく同じ場所で隠れていても様子を見に来る気配がないので、それであっているはずだ。

 もしも察知できる範囲がもっと広くて影に潜った相手を負えるのなら、戻った後ですぐに俺を探しに来ないのはおかしい。


「あの野良犬には申し訳ないが、人と犬の違いも分からないのかもしれないな」


 あの兵士たちは、俺が中を覗いていた辺りを探した結果、近くでゴミ箱を漁っていた野良犬を発見して追い払い、それが原因だったのだろうと結論付けていたのだ。


「影に潜ったままはきついけど、今代の雷に仕掛ける直前まで我慢するしかないか?」


 何度も影に潜って移動しているが、正直言って長時間潜り続けていると気が狂いそうになる時がある。

 シャドウ・ダイブは地上を走るよりも早くて、おまけに障害物を気にせずに移動できるのだが、何と言うか潜る時間が長いと自分が影に同化してしまいそうな感じがして、その反動なのかは知らないが無性に暴れたくなるのだ。


 その為、一度で長く潜るのは極力避け、ちょくちょく影から出てすぐにまた潜りというのを繰り返す方法を取っている。

 今のところ一瞬でも影から出るか、体の一部が出ていれば変な衝動は起きないのだが、実際のところそれが正しい対処方法なのかすらわかっていない状況だ。

 何せ、この魔法がまともに使えたのは今のところ俺一人(もしかすると他に居たかもしれないが情報がない)なので、全て手探りで調べるしかない。その為、今のところ危険だと分かっている長時間連続して潜るという方法を真っ向から克服する術は見つかっていない。


(まあ、長時間潜れなくても、便利な魔法なんだけどな……)


 そう考えた時、ふとある疑問が頭に浮かんだ。それは、


「どのくらいの大きさなら、バレずに接近できるんだ?」


 冒険者ギルドである以上、兵士以外が近づくこともあるはずなので、恐らくは不自然か怪しい動きをしているものを見つけた時に兵士を確認に行かせているのだと思うが、もしそうだとすると猫や犬、下手をするとネズミや小鳥であっても確認しなければならなくなる。

 だからこそ、相手の大きさに反応しているのではないかと思ったのだ。


 もしその考えが当たっていた場合、体の一部だけを影の外に出した状態でいれば、気が狂わないままでバレずに機会を待つことが出来る。


「試してみるか……まずは」


 俺は当たりを見回して、先程追い払われた野良犬が近くにいるのを確認し、肉を見せてギルドの近くまでおびき寄せて、範囲外だと思われるところに肉を投げて待機させた。


 野良犬は餌をもらうことに慣れているのか、餌をもっていかずにその場で食べていたので、少しの間その様子を影に潜った状態で確認しつつ兵士が来ないことを確かめてから、


「まずは体半分からだな」


 大体野良犬と同じくらいと思われる部分まで影の外に出してみた。

 もし誰かにこの場面を見られると、地面に腰から上の死体が立てて置いてあるか、もしくは新種の魔物と思われそうだが、近くには誰もいないので叫ばれることは無いだろう。まあ、体を出した瞬間、野良犬が驚いて逃げ出そうとしていたが、追加の肉を投げると吠えもせずに肉に夢中になっていた。

 そして、


「まただ! 急げ!」


 思った通り、またも兵士が走ってきた。ただ、今回も影に潜ったところは見られなかったし、兵士たちは「またか」と呟きながら野良犬を追い払い、辺りをろくに調べもせずに二階に戻っていったので、体半分ではだめだということが分かった。


「まあ、体半分だと隠れるのは難しいから、失敗でもいいんだけどな」


 しかし、これで大きさに反応しているということが分かったので、次は現実的な大きさで試してみることにした。つまり、


「誰かに見られたら、生首転がっていると大騒ぎになるな」


 頭だけを影の外に出して確かめるのだ。

 これなら隠れやすいし、若干だが上半身を出した時よりも影に戻る速度が速くなる。


「今度は少し離れた場所で試してみるか」


 先程までは建物の横道で試していたが、流石に三度目だし今回もバレてしまうと警戒されると思うので、次は建物の裏で影から出てみようと思う。

 そこならもしばれたとしても、猫か大きめのネズミだったのではないかと勘違いしてくれるかもしれない。

 そうして試した結果、


「頭くらいの大きさなら問題ないみたいだな」


 今回は兵士が駆け付けてくることは無なかった。

 ちなみに、頭だけ出した状態でじっとしているよりは、動きも加えた方がより怪しいだろうと思い色々な動きを試した結果、地面をすべるようにして移動し、壁すらも這いずりまわる生首が生まれることになってしまったが……宴会芸として披露すればウケそうなので、もっと研鑽を積むことにしようと心に決めたのだった。



「確かこの辺に看板があったはずだけど……あれか」


 宴会芸の研鑽を決めた後、軽くギルドの中を覗いていたが、この後の予定のことを考えて今日のところは引き上げることにした。

 今代の雷の姿を確かめることが出来なかったのは痛いが、ギルドを根城にしているのなら次は探すのに時間をかける必要はなくなるし、仮に場所を変えたとしても、頭程度の大きさなら気が付かれないというのが分かったので今日よりは探るチャンスが増えるはずだ。


 ということで次の予定移ることにしたのだが、その予定というのはある村の偵察だ。

 別にその村が俺たちに敵対しているという話は無いのだが、位置的に少し微妙なところにあり、下手をすると戦争に巻き込んでしまうかもしれないので念の為見ておこうという感じのものだ。


「この看板通りなら、連合軍とファブール軍の丁度中間辺りから一kmくらいしか離れていないぞ」


 その村は、両軍の中間地点との間に小さな山を挟んでいるのだが、もし山を迂回して仕掛けようとした時に、その村はどちらかの軍の進路上になるということになる。


「場合によっては伯爵に進言して避難勧告を出してもらった方がいいと思うが……ん? あれは……少し遅かったみたいだな」


 村の位置を示す看板を確認し、その通りに進もうとしたところ、前方に人の気配を感じたので身を隠したところ、現れたのはファブール軍と思われる兵士だった。


 気配を感じたとはいえかなり離れているので、かなり魔法に長けた者でないと俺に気が付かないだろうと思いそのまま様子を見たところ、案の定俺のことに気が付かずにそのままファブール軍の方へと向かっていったのでそのまま見逃すことにした。

 下手にここで始末すれば、連合軍がこの辺りまで入ってきていたという証拠になってしまうので仕方がないが、出来るのならとっ捕まえて情報を吐かせたいところだった。


「これは本格的に村を調べた方がいいな」


 俺は急いで村に向かい、村から少し離れたところで念の為に影に潜って侵入した。

 村の中は特に変わったところは見られず、ファブールの兵が隠れているようには見えなかったのだが……中央付近にある周りよりは少し大きなの家が目に入った時、丁度ドアが開いて中から明らかに村人とは思えない雰囲気の男が姿を現した。


 男は別に俺に気が付いたとかではなく、ただ単に何かの用事があって外に出てきたみたいだが、その足が村の外へと向かっているのが気になって後をつけてみることにした。


 男は弓矢を持ち、背負子を背負ってまるで猟師のような出で立ちで、周囲を気にしながら夜の森の中を移動していたが、どう見ても足さばきが猟師のそれではない。

 わざとかと思うくらい足音を立てて、時折足元にある意思を蹴ったりしているので、もし仮に本物の猟師だったとすれば、まだ素人の方がましだろうというくらい酷いありさまだ。


(まあ、猟師ではないと分かっているから、その辺のことはどうでもいいんだが……どこに行く気だ? このまま行けば連合軍の近くまで行ってしまうが、流石にこんな怪しい奴を見つければ、例え本物の猟師だったとしても、無事に帰れる保証はないぞ)


 こんな見るからに怪しい奴を見つければ、まず真っ先に敵の兵士だと疑い、尋問にかけてもおかしくはない。

 そんな風に見ていると、


(ん? 少し向きが変わったか? こっちだと……侯爵軍の方が近くなりそうだ)


 男が途中で方向を変えて、連合軍から少し離れるような進路を取り始めた。

 ただ、その先には侯爵軍が陣を張っている方角なので、どのみち良からぬことを考えているのは間違いないだろう。

 そして、そのまましばらく進み、あと少しで森を抜けるというところで、


(今度は誰だ?)


 男の向かう先に、誰かが身を隠しているのを発見した。


(女? それに、どこかで見た気が……あっ⁉)


 女が男の足音に気が付いた瞬間こちらを振り返ったので顔が見えた。そしてその顔に見覚えのあった俺は、


「動くな。少しでも動いたら首を落とす」


 男をシャドウ・ストリングで雁字搦めにして身動きを封じ、女の後ろに回って首にナイフを突き立てた。


「ひっ!」

「声も出すな」


 この女どこかで見覚えがあると思ったら、俺のテントの準備をしていた内の一人だ。

 あの時、この女は前にいた女の後ろにいて顔を伏せ気味にしていたが、エリカがエイジの首根っこを掴んだ際に驚いて顔を上げて俺と目があったので覚えていた。まあ、知らない奴がいたので警戒していたというのもあるが、それが裏切者だったとは思わなかった。


「これから俺の聞く質問に対し、首を縦か横に振るだけで答えろ。いいな?」


 そう言うと女は、震えながら首を縦に振った。


「そこの男はファブールの兵で間違いないな?」


 これに女は首を縦に振る。


「ファブールの兵と会うのは何回目だ? 今回が初めてか? なら、二回? 三回?」


 次の質問に対しては、女は首を横に振り続け、


「六回目か……最初に会ったのはいつだ? 六日前? 十日前? ……二十日前だと?」


 それが本当なら、連合軍はかなり前から情報を盗まれていたことになる。


「話すことを許可するが、決して大声は出すな。守らなければ殺す」


 そう脅してからナイフを離し、男に何を伝えようとしていたのかを聞いた。

 すると、女はかなり怯えていたものの、殺すという言葉が利いたらしく、ナイフを握りなおすだけで全て白状した。

 まず、今日の報告予定は、ヴァレンシュタイン家とフランベルジュ家が到着して配置についたこと、連合軍の中核の一つと思われていたヴァレンシュタイン家が、俺とバンの仲たがいにより二分されていることだったそうだ。まあ、それは聞かなくても想像がついたことだ。


 問題は、これまでに何を報告したかだ。

 続いて聞いたところ、女が流した最初の情報は連合軍の陣をどこにするか決め、どこにその家を配置するかを決めたというもので、それに似たようなものが二回目と三回目も続き、その三回目の時は他にも侯爵家が勝手に違う場所に陣を構えたなどが含まれていた。

 四回目は侯爵家の動向が主な報告で、どこにどういった感じの奴がいる、全体の指揮権を持っているのは若い男だが、素人目から見てもあまり手際がいいとは思えないなどと言った感じの者だったらしい。


 素人の、それもこれまで戦争とは無関係で、軍など見たことがあるかどうかと言った女にそう言われるくらいだから、侯爵軍はよほどの無能をトップに据えたようだ。


 そして五回目、これは三日前でのことらしいが、その時に自分がヴァレンシュタイン家の世話係の一人になるように言われたと報告したとのことだ。


(だとすると、すでに今代の雷には俺の配置場所がバレていると見るのが自然か……)


 向こうがどう思っているかは分からないが、スタッツでのことを根に持っているとすれば、俺のいる場所に奇襲を仕掛けてくる可能性は十分考えられる。

 もしかすると、今日の報告をもって奇襲をするかどうかを決め、後日の報告で時間と日時を決めるつもりだったのかもしれない。


「おい。お前の他に、ファブールに情報を流している奴はどれくらいいる?」


 女はその質問に対しては少し迷った様子を見せ、怯えながら「分からない」と答えた。

 それはどこに何人いて、誰がやっているのか分からないとのことだ。ただ、報告をしていたファブールの兵の様子から、自分の他にもいるのは確かとのことだった。


(この男に吐かせるか? ただ、ここから村まで戻る時間を考えたら、そんな時間はない。下手するとこいつが戻らないことで、ファブールの攻撃のタイミングが早まるかもしれない。向こうが本格的に動く前に、今代の雷を始末したいが……どうする?)


 男を逃がすわけにはいかないが、このままではファブールが動いだしてしまう。それを回避するにはどうしたらいいか頭を悩ませ、


「おい、お前がテントから出てきた時に俺のそばにいた女性を覚えているな? その二人を周りにバレないようにここに呼んで来い。もしもバレたり逃げたりしたら……地の果てまでも追いかけて、お前の親類縁者を皆殺しにする。分かったら急げ!」


 ディンドランさんとエリカを頼ることにした。

 上手くいくかは分からないが、時間稼ぎの方法を思いついたのだが、男をここに置いて行くわけにもいかないので、とにかく信頼のできる人手がいるのだ。


 殺気を混ぜた言葉に、女は俺の脅しが本気だと理解できたようで、ふらつく足で何度も転びそうになりながら俺のテントの方へと走っていった。


「さて、念の為……」


 俺は男の頭を力一杯地面に押さえつけて、そのままテラーを叩きつけた。

 これで気絶でもしてくれればいいし、この程度では死ぬことは無いと思うが、念の為いつも使うよりも弱めにして、様子を見ながら何度かテラーを繰り返した。


「四回か……弱めとはいえ、意外と粘ったな」


 その分酷い苦痛を味わっただっただろうが……と思いつつ、気絶した男に舌を噛み切られないように猿轡をしっかりと噛ませ直して、凶器や薬品などを持っていないか身体検査を念入りに行った。

 それらが終わったところで、


「ジーク、一体何があったの?」


 ディンドランさんとエリカが到着した。

 女も一緒にいるので、馬鹿な真似はしなかったと思いたい。その方が面倒ごとが減るし。

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― 新着の感想 ―
スパイが内部情報を敵に流していたとか……。ただでさえ敗北しかねない要因が複数重なっているのに、ダメ押しが来たというか……。 敵が勝つために様々な手を使っていたり、ジークさんに尋問されても気絶するまで屈…
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