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外伝15話~BCターフスプリント~

《BCターフスプリント今スタートしました! ポインセチア上手く出た! 今年は芝1300mで施行される本レース!


日本からは3歳マイル王のポインセチアが挑みます! まずまずのスタートから中段につけている。いつもより位置取りは少し下げた形か?


先頭を走るのはイギリスのアカザディナー。2番手アメリカのディルフォーン。おっと、少し押し上げて先頭に立つ勢いのフランスのチャリーン!


ポインセチアは中段。前から数えて7頭目辺り。先行競馬のいつもに比べて少し抑える形になっています。鞍上は横川勤


焦ることはありません。人馬で積み重ね、深めた絆で人馬一体横川勤。軽く促して行きます


最後方はネルトチャックといった体勢。早くも第3コーナーから第4コーナー! この電撃戦の行く末は! さぁポインセチアは上手く抜け出せるか!


最後の直線! 先頭アカザディナーとチャリーンの競り合い! ポインセチア前が空いた!


ディルフォーンと並んで真ん中から伸びてくる! アカザディナーいっぱいになった! チャリーン先頭チャリーン先頭!


ディルフォーンを交わして単独2番手ポインセチア! チャリーンかポインセチアか! 大外からネルトチャックも飛んでくるが3番手まで!


チャリーン! ポインセチア! チャリーン! ポインセチア! ポインセチア! ポインセチアかゴールインッ!!!


最後並びましたがどうでしょう! 日本のポインセチアか! フランスのチャリーンか! スローモーションの映像は……僅かにポインセチアです!


僅かにポインセチア! 横川勤です! 最後は首の上げ下げ! ゴール前で一伸びしたその鼻先は、チャリーンより僅かに前に出ています!


日本勢初のBCターフスプリント制覇! やってのけたのはポインセチア! まずは次男が勝ちました!


この後に行われるBCクラシック! BCマイルに出走するステイファートム、カーテンコールの弟が! 見事に1着となりました!》



 今年の日本勢初勝利は横川勤とポインセチアが果たした。そして続くBCディスタフでは4着。その後のBCターフはワナビアヒーローが僅かに及ばすの2着。


 そして次は大本命。グルグルバットとステイファートムが挑むBCクラシック。始まりの時は刻一刻と迫っていた。



***



「BC初勝利おめでとうさん」


「あざっす! 荻野さんのお陰ですよ!」


「何を言ってんだ。慣れないアメリカスプリントのスピードにも着いていけた。馬群も上手く捌けた。完璧だった。相手も強かったがな」


「すっごく気持ちよかったです。このままファーとコールで3勝して歴史に名を刻んでやりますよ」



 物凄く興奮した様子の横川を眺める。かかっ、少し危なっかしいが調子は良さそうだ。



「ほら落ち着け。ファーにそんな姿見せんのか?」


「おっと……少し頭冷やしてきます」


「そうしろ。興奮するのは3勝してからと、今日の夜まで取っとけ。今からそんなテンションだと気が持たんぞ」


「えぇ!」



 ったく、ファーの名前を出した途端にこれだ。アメリカのGIを勝つなんて名誉な事だからあぁなるのも無理は無いが。


 勤の奴がいなければ俺がああなっていた可能性も捨てきれないしな。そういう意味じゃ、あいつのお陰で冷静になれた。


 て言うか凱旋門賞の時はあれの比じゃ無かったな。俺ら全員お祭り騒ぎしたせいで注意まで受けたっけか。まぁあれは仕方ない。だって凱旋門賞なんだからな。


 それにしても、これでポインセチアも朝日杯FS、NHKマイルCに続いてGI3勝目か。3歳秋で今のコールと1個差まで詰めるとは大したもんだ。ファーなんてこの時はGI未勝利だぞおい。



「次はBCクラシック……」



 はは、震えが止まらねぇ。凱旋門賞とはまた違った震えだ。日本のホースマンが目指す国外の芝の最高峰が凱旋門賞なら、BCクラシックはダートの最高峰。


 既に前年グルグルバットが初制覇を果たしちゃいるが……芝馬での制覇なんてことになりゃそれはもうすごい快挙だ。



『おっ? 荻野さんやんけ。何か用?』


「よぉファー……相変わらずな表情してるなお前は。まっ、お前なら勝てるって信じてるぞ」


『任せろ荻野さん! 横川さんと俺でなら、またオーソレミオの奴にだって勝ってみせるさ!』



 この後、グルグルバットと共にダートで走ることを、この時のファーは知る由もなかった。



***



「落ち着け、大丈夫……」



 頭から水を被り、物理的に頭を冷やす。もうすぐ11月だってのになんでこんな熱いんだよ。身体の熱が半端なく熱い。風邪をひいてるわけじゃない。


 ただ、胸の中にある炎が燃え盛っているんだ。タオルで頭を拭く。ふぅ、良い香りのする柔軟剤だ……ファーの匂いを嗅ぎたくなってきたな。


 こんなに気持ちを高ぶらせてくれるなんて、本当にファーは……いや、ファーの母親であり俺の初GI制覇を果たさせてくれたプリモール……モールの奴に感謝か。



「お前も来たのか勤」


「荻野さん……」



 少しファーの顔を見たくて立ち寄ると、その場には先客として荻野さんもいた。



『横川さん! よく来てくれました! 早くオーソレミオの野郎をぶっ飛ばしてやりましょう!』


「おぉ、元気だなファーも。……勝とうな」


『任せなさい!』



 思いを言葉にすればファーはブルルル! と返事を返してくれる。頼もしいね本当……君がいれば、僕はどこにだって飛んでいける。そんな気がするんだ。


 なんて事を考えながら軽く話し込んでいると、もうそろそろ準備をしないといけない時間が迫ってきていた。


 1度僕と荻野さんはファーから離れて、最後の打ち合わせを始める。と言っても既に体調チェックも済ませてあり、作戦は変わらない。



「もちろん勝つつもりで挑みます。ただファーの様子を見て、少しでもおかしいならすぐに手綱を緩めます。ファーの安全が第一ですから」



 競走馬の脚は消耗品だ。正直言って、ファーが走れる回数は多くない。その事をステイファートム陣営は理解している。


 ファーには競走馬としてだけではなく、今後は種牡馬としての活躍も望まれている。その価値は既に上限に近いと言っても過言ではない。


 だからこそ、安全第一に。ステイファートムという商品価値を万が一にも落とさないために。……まぁ、フツにファーに怪我とかあったら僕も含めた陣営全員やファンの人達が悲しむから当たり前なんだけどね。



「馬鹿。それはそれでだよ。……俺からのアドバイスは一つだ。いつも通り、お前はお前らしく乗ればいい。そうしたら、ファーは応えてくれるからな。……行ってこい」


「はい!」



 荻野さんからの激励を受けて僕はファーの元に向かう。さぁ、アメリカでも見せつけてやろうじゃないか。僕とファーの実力を!



サンタアニタパーク競馬場第5R:BCクラシック<GI>(ダート・良・左・2000m)


【馬番】【名前】【枠番】

①オーソレミオ⑭

②レブロンジョイユ⑩

③ドゥームネルト④

④ディールザット⑫

⑤グルグルバット③

⑥ハーブクルトン⑬

⑦アナザーレイン⑦

⑧マルク⑨

⑨リンカーン⑪

⑩ステイファートム⑧

⑪ウーバーイーツ①

⑫アニメイト⑥

⑬ティックトッカー⑤

⑭ヒューストン②



【単勝オッズ】

1番人気アナザーレイン2.3倍

2番人気グルグルバット4.1倍

3番人気ドゥームネルト7.0倍

4番人気オーソレミオ8.7倍

5番人気ステイファートム16.4倍

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― 新着の感想 ―
⑪以降、これ読者から募集した馬名でしょw
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