wikiっぽいもの~その2~
3歳世代を無冠で終えたステイファートムは、無双となる4歳世代を迎えた訳だが、まずは今年の大阪杯を始動戦にする予定であった。
しかしまだまだ順調にとはいかないのが競馬だ。2度目の骨折。それが年明け発表されたステイファートムであった。
有馬記念での激闘による疲労がストレスであったのか、壁に向かって前脚をぶつけるステイファートムの脚にヒビが入る結果となったのである。
そんなステイファートムはJRAリハビリテーションセンターで日々の疲れを癒すこととなり、そこで秋に激闘を繰り広げることになる1つ上のダービー馬、アスクマカヒキモアと出会うこととなる。
実は結構な気性難とされていたアスクマカヒキモアだが、ステイファートムとはウマが合ったらしくこの時だけは大人しく過ごしていたようだ。
そんなステイファートムは時折現れる横川勤(が持参するりんご)に目がなく、楽しみにしていた様子が職員の間でも目撃されている。
また同時期には牝馬2冠を達成したキャンディボールも治療のため訪れており、面食いと呼ばれる気難しい女王様である彼女もまた、ステイファートムの虜となるのであった。
なお本当に発情をして放馬したキャンディボールにステイファートムが襲われるという事件も発生しており、レースに出ていなくても世間を騒がせるステイファートムはこうして人気を高めていった。
春全休となったステイファートムとは対照的に同期となる4歳世代は明暗が別れる事となる。ダービー馬ロードクレイアスはGIドバイシーマクラシックを3馬身差で制覇。
GI天皇賞・春はゼッフィルドが5馬身差での勝利を飾り、この2頭が宝塚記念のワンツーフィニッシュを決める。
そして大阪杯は重賞未勝利のジェミリニストが2着に入ったが、ドバイターフでは昨年の年度代表馬となったタガノフェイルドはまさかの3着。皐月賞馬ディープゼロス5着となっている。
そして新たに安田記念制覇を果たしたのは4歳世代のナベリウスである。こうしてタマモクラウンを破った馬のうち、ステイファートム以外がGI馬という結果が樹立された。(もちろんそれも秋には更新されている)
そして復帰戦に向けてリハビリ中のステイファートムにも1つ、大きな問題が発生する。馬体重の増加であった。その量は約40kg。
荻野調教師は帰ってきたステイファートムを見て一言『……牛になっちまった』と呟いたと言う。そんな散々な言われようなファートムだが、必死に調教を重ねて馬体重を絞り、復帰戦としてGII札幌記念に出走を決めることとなった。
なお絞った結果が有馬記念から+30kgであり当初は調整不足と思われたが、これが本格化の兆しであることを陣営だけが信じていた。
またGII札幌記念の前に行われたメイクデビューでカーテンコールが8馬身差の圧勝を見せていた事から、ステイファートム復活の伏線と囁かれて単勝オッズが下がったという噂もある。
そんな札幌記念はGI馬4頭、重賞馬8頭と例年にも増して豪華なメンツとなっていた。その中でも1番人気は復帰戦となるステイファートム。GI2着4回の肩書きと人気は伊達でなかったようだ。
そして昨年の覇者ドゥラブレイズ。秋天勝ち馬ホワイトローゼンセ。昨年の皐月賞馬ディープゼロス。GI大阪杯2着のジェミニリスト。GII金鯱賞覇者サザンプールが集結していた。
そして未だ2戦続けて負けているディープゼロスとは皐月賞以来の対決となる。レース展開はジェミリニストが引っ張り、サザンプールが前目のステイファートムをマークするいつもの形で進む。
最初の1000mを57.2で通過する異次元の走りを見せたジェミリニストだが、四コーナーで力尽きたのか失速。変わってステイファートムが前に出る。
そして外からホワイトローゼンセ、真ん中ドゥラブレイズ、最内サザンプール。遅れてディープゼロスが足を伸ばす。
そしてホワイトローゼンセの猛追をクビ差で凌ぎ切りステイファートムは見事に復帰戦を勝利で飾ることとなった。
当時の荻野調教師曰く7割仕上げとの事だったが、2着のホワイトローゼンセがサウスポーであることは割と知られていた事もあり、お互いに全力の走りでは無いことは承知だったそうだ。
そしてディープゼロスは着外に沈み、ステイファートムはゼロスから勝利をもぎ取る快挙を成したが、マイラーであり早熟説もあったゼロス陣営としては不本意な結果であったことは想像にかたくない。
不完全燃焼な対決の結果であるが、これがステイファートムとディープゼロス、3度目であり最後の対決となった。
そしてステイファートムは札幌記念の勝利を経てGII3勝目と記録を伸ばし、堂々と次走をGI天皇賞・秋と宣言することになる。
そして迎えるGI天皇賞・秋……の前日にカーテンコールはGIIIアルテミスSを走って3着を取り、連対率100%の兄と比較される出来事もあったが、横川はこの悔しさは明日結果で晴らすとコメントを残していた。
改めて迎えるGI天皇賞・秋。GI馬6頭とまずまずのメンバーが揃った1戦。ジェミニリストやバーストインパクト、サザンプールなどのイツメンが集結する中、ステイファートムは一番人気でこのレースを迎える。
それでも5番人気までが1桁オッズという混戦模様の中、二冠馬ネオエイジが2番人気。府中5戦無敗のホワイトローゼンセ3番人気。
GI5勝の最強牝馬カレンニサキホコル4番人気。GI常連ヒシクラウン5番人気。そして唯一の3歳馬ミドルオブドリームは距離の長さを嫌われ6番人気。GI3勝のアスクマカヒキモアは宝塚記念着外と、調教と馬体のデキが微妙だったため7番人気となっていた。
レースはジェミニリストらが1000mを57.5で通過する超ハイペースを展開。前を意識したファートム鞍上の横川は既に手綱を動かし始めていた。またいつも通りバーストインパクトも動き出し、第4コーナーを迎える。
400を通過したあたりで早くもステイファートムが先頭に立ち、サザンプールとカレンニサキホコルが競り合うがあっという間に突き放す。
そしてネオエイジが沈み、ミドルオブドリームとアスクマカヒキモアが伸びあぐねている中を割ってホワイトローゼンセが驚異的な末脚でステイファートムに並び、1度交わす。
しかしそこからステイファートムの執念か見せる根性を発揮させ、見事差し返し初の戴冠を果たすこととなった。
なお横川はタガノフェイルドにも騎乗しているのでGIはGIは5勝目であった。しかし初制覇となったのはステイファートムの母であるプリモールで制した天皇賞・秋であり、史上初の母子制覇の大記録が1人の騎手で達成されたのであった。
ステイファートム初のGI勝利には集まった8万人を超える大観衆から祝福の拍手があがり、勤コールが湧き上がった。そうしてステイファートムは運命に導かれるように次のステップへ進むのだった。
天皇賞・秋を制して栄えあるGI馬となったステイファートム。そんな彼が満を持して挑むのは秋古馬三冠路線の2冠目であり、国際招待レースとなるGIジャパンCだ。
日本競馬の王道であり全ホースマンの夢である日本ダービーと同じ2400m競走であり、近年では年末のグランプリ有馬記念を抑えて日本ナンバーワンを決める戦いにもなっている。
日本勢は天皇賞・秋を制したステイファートムはもちろん、今回でラストランを迎える日本ダービー、去年のドバイシーマクラシック、ジャパンカップを制した5歳世代のアスクマカヒキモア。
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オークス馬ペルツォフカに天皇賞・秋から距離をさらに伸ばしたミドルオブドリーム。京都大賞典を楽勝したドゥラブレイズなどが人気を集めた。
天皇賞・秋で府中適性の無さがハッキリと露見したネオエイジはジャパンCを回避して有馬記念に照準を合わせた。
またロードグレイアスも凱旋門賞後に体勢が整わず、急遽1週ズレた香港ヴァーズに向かったことで寂しいJCメンツと影で言われることとなった。
だがしかし、今年はそれを補うかのように強力な海外勢が5頭も招待される。様々な国のGI馬やパートIII国スペイン原産の競走馬だったりも居たのだが、中でも1番はやはり、今年の凱旋門賞馬シャルルゲートだろう。
凱旋門賞でロードクレイアスを打ち破り、日本にトラウマを植え付けた欧州現役最強馬が襲来する事となったのだ。
他にも日本のエリザベス女王杯を連覇したスノーフェアリーでも達成できなかった英愛オークス、そしてヨークシャーSを制覇したリリーオブザインカも来日することとなる。
内外含めてGI馬は9頭。まさに国際招待レースに相応しいメンバーがそろい踏みする事となった。
そんな中でも1番人気は天皇賞・秋を快勝したステイファートム。2番人気は引退レースのアスクマカヒキモア。3番人気はGI常連ドゥラブレイズ。
4番人気はオークス馬ペルツォフカで、凱旋門賞勝ち馬のシャルルゲートはアルカセット以降過去30年近く勝てて居ない外国馬な上、日本との馬場の違いを懸念されて5番人気であった。
ん? 2025年ジャパンCの勝ち馬は20年振りに外国馬カランダガンが勝利したはずじゃってうわ何だやめくぁwせdrftgyふじこlp
6番人気ミドルオブドリーム。7番人気は同じく30年近く勝てていない外国馬GI3勝リリーオブザインカであった。
レース展開はGIIアルゼンチン共和国杯連覇を成し遂げたレーゼドラマが引っ張り、2番手にステイファートム、そしてなんと3番手にシャルルゲートがつける形となった。
アスクマカヒキモアは中段後方に位置しており、リリーオブザインカも隣に位置する。向正面を迎える中盤でグランジェクトがスパートをかけ、レーゼドラマは引っかかる、荒れる展開が予想されるレース展開を見せた。
1000m通過は58.9。早い流れで進むレースは早くも第4コーナーを迎える。まずミドルオブドリームがBCターフ勝ち馬ジョイフォーリーフとリリーオブザインカに阻まれ年長勢との差を見せつけられる展開となった。
そして残り400mを切った時点でステイファートムとシャルルゲートが先頭に立つ勢いで迫る。アスクマカヒキモアやドゥラブレイズ、ペルツォフカも足を伸ばし内からリリーオブザインカも迫り、まさに混戦模様の直線を形成した。
ステイファートムとシャルルゲートの競り合いで先に脱落したシャルルゲートを交わしてアスクマカヒキモアが迫る。
連覇と有終の美を狙ったアスクマカヒキモアが2番手に上がり、さらに1時後退しかけたシャルルゲートも最後の一伸びをする。
しかし充実期を迎えたステイファートムはそれらを一掃する末脚を爆発させ、1頭突き抜けて先頭でゴールを果たしたのだった。
こうして有終の美とはならなかった2着のアスクマカヒキモアはその後ノーゼンファームでの種牡馬入りが決まり、秋古馬二冠を達成したステイファートムに惚れ込んだシャルルゲート陣営は来年の凱旋門賞での挑戦を叩きつける結末となった。
これにはステイファートム陣営も乗り気な発言が当時のインタビューから伺える。そうして馬場適性で少し遅れを取っていただろうシャルルゲート陣営は、打倒ステイファートムを掲げリベンジに燃えるのだった。
なお来年。欧州競馬はある一頭の、世界最強の復讐者によって蹂躙される事になるのだがそれはまた別のお話。
ステイファートムが年内最後のレースを有馬記念と定めたのはジャパンカップ後すぐであった。去年は大外枠⑯を引き当てた荻野調教師は厄祓いにも行ったが、引き当てたのは去年と同じ大外枠である⑭であった。
今年の有馬記念はGI馬6頭とまずまずのメンバーが揃うこととなったが、人気は天皇賞・秋、ジャパンカップを連勝して3頭目の秋古馬三冠を狙うステイファートム。そしてクラシック三冠を成し遂げたドゥラスチェソーレの2頭によって2分されていた。
斤量差と大外枠の影響もあり、ドゥラスチェソーレが3.2倍の1番人気。ステイファートムは3.3倍の2番人気であった。
3番人気はエリ女を勝った二冠牝馬キャンディボール。4番人気は引退レースとなるGI5勝カレンニサキホコル。
5番人気は3年前の二冠馬ネオエイジ。6番人気はダービー2着のワナビアヒーロー。7番人気はバーストインパクトであった。
主戦ジョッキー横川勤が遺した怪文書『共に歩んだ僕の運命旅程~運命に導かれて~』によると、当時の横川騎手は勝つ自信しか無かったと語られている。
この怪文書によると、他にも色々と面白い出来事や考えたことはあるが、全部を話したら僕だけのアイデンティティが無くなってしまう。
だからタイトルも『共に歩んだ僕だけの運命旅程』から変更したと書かれており、2人だけの秘密を独占した横川勤にはステイファートムのファン、旅人達から賞賛と羨望の眼差しが贈られている。
話は逸れたが、イクイノックスとスターズオンアースの子供ドゥラスチェソーレに1番人気を譲る形となったステイファートムはこの2強を1強にする走りを披露するととなった。
レースは逃げ馬ワナビアヒーローが引っ張る形で進む。ステイファートムは3番手。その後ろにカレンニサキホコル、キャンディボール、ドゥラスチェソーレの順で隊列は組まれた。
最初の1000mは60.1。平均的なペースで進む。そして向正面。バーストインパクトが動き、ペースが乱れ始める。
少し中段から後方寄りに位置していたドゥラスチェソーレとメルコ・デムーロの手が早くも動き出す。そして勝負の第4コーナー。
最初に駆け抜けたのはワナビアヒーロー。しかしステイファートムがもったまま2番手まで迫り、後ろからキャンディボールとカレンニサキホコル、ネオエイジらが来ていた。
さらに大外に回したドゥラスチェソーレが2番手に上がり、先頭に入れ替わっていたステイファートムを捉えにかかる。
ほんの一瞬、2強が馬体を合わせた。しかし次の瞬間、ステイファートムに鞭が入りあっという間に突き放す。終わってみれば、三冠馬ドゥラスチェソーレに3馬身差の圧勝。
史上3頭目の秋古馬三冠達成の瞬間であった。2着ドゥラスチェソーレ。3着キャンディボール。4着は引退レースのカレンニサキホコル。5着はネオエイジとワナビアヒーローの同着で幕を閉じた。
ステイファートムは今回の結果から年度代表馬に選出されることとなり、一躍世界に名乗りをあげることとなった。
しかし妹のカーテンコールは阪神JFで1番人気に推されるも、僅かに及ばずの2着だったことで兄妹揃っての受賞は先送りになってしまった。……なんで先送りにしかなってないんですかね?
また有馬記念2着のドゥラスチェソーレは最優秀3歳牡馬に満票で選出。3着キャンディボールも最優秀4歳以上牝馬を受賞する形となった。
昨年の年度代表馬タガノフェイルドがGI未勝利に終わる中、同期の皐月賞馬ディープゼロスがマイルCS、香港マイルを連勝したことで最優秀マイラーを受賞。
そして凱旋門賞2着でありドバイシーマクラシック、宝塚記念、香港ヴァーズのGI3連勝を果たしたロードクレイアスは惜しくも年度代表馬を逃し、特別賞に甘んじることとなった。
この結果はロードクレイアス陣営は不満の声を漏らしたが、来年の更なる飛躍を目指してドバイシーマクラシック連覇を目指しに再び海外に照準を定める事となった。
なお皆さんご存知の通り、203△年は最強の復讐者が本格的に始動する年となる。ステイファートムのファンからも同情される不憫なクレイアスくん(泣)。
こうしてステイファートムの4歳時代は幕を下ろした。そして来るべき5歳時代。ステイファートムを世界の競馬ファンが知ることとなる年である。




