自覚しろ
・月曜日の投下です
ううう……結婚とか、恋愛とか、そういうのは考えたくなかったです。
私は若白髪のおじさん―賈詡さんーに正論で殴られながら思いを馳せました。
そのために三国志の対策と一族皆殺しの運命回避のために尽力してきたのに、まさかそのために必要な最大の手段が皇帝の長男、劉弁皇子と自分の結婚だなんて……。
えっと、先送り。先送りしましょう。
冷汗を垂らし、横を向きながら言い訳をつぶやきます。
「そういうのはまだ早いと思いますよー、だって私、まだ年少ですし?」
「そうですな、では2年後、3年後なら構いませんな?そのためには今から誘惑して皇子の心をがっちりつかんでおく必要がありますな?」
「あぐっ」
逃げ道を一瞬で塞がれたっ?!
こ、この若白髪の中身、一切容赦してくれない?!
もう答えは決まってます。そう、あのどこか頼りない弁皇子の妃に収まり、ひたすらお尻を叩いて改革を続けないといけないのです。それでほかに側室がたくさんいて、周りには宦官がいて……。
ああ、私は一族みんなでワイワイ楽しく、白ちゃんの成長を愛でて暮らしたかったのに……。
「うう、なんでみんなして私の幸せを潰そうとしてくるんです?私が女だからですか、男だからってずるい……」
思わず口から出た言葉を聞いて、賈詡さんが信じられないようなものを見た顔をしました。
「……あの、主公。漢土の女や娘のほぼ全員が皇帝の妃になれると聞いたら大喜びで、心から幸せになると思うのですが……。むしろ主公の幸せのためを思って提案しておりますが?暖衣飽食で贅沢し放題ですぞ?」
「へ?」
んーー???
いや、そうか。これは私の感性がおかしいのかな。普通の人は後宮に入って絹服を着て暖かい宮殿で美味しいご飯を食べられれば幸せなのか。
いや、だって、後宮の生活みてたけど、別にそんなに羨ましくなかったし。むしろ必要なものは教団で作れるし、服や装飾品は教団の職人のほうがいいもの作れるし、食事は私が作ったほうが美味しいし、朝廷の将軍っていう高位高官の娘だから屋敷も立派だし……。
「あと、男だからずるいというのは?」
「その……漢朝は三国志を迎えようとしているわけです」
「ええ、それを防ぐために改革が必要なのですな」
「男だったら自分で軍隊も率いて、自分で出世して、立派な父上の後継ぎになれるわけじゃないですか……なのに女だから私は中途半端に男装したり女装したりで、結局は何もできないんですよ?」
「何もできない?!」
賈詡さんがいきなり怒り始めました。
「主公がそれを言いますか?漢朝のどの男よりも成し遂げたものの多いお方が?!聞きましたぞ?河東郡の腐敗を正し、黄巾の乱を見抜き、名士や山賊、豪傑に戎狄と幅広く交遊し、教団をつくって流民に正業を与え、東へ向かっては黒山軍の反乱を鎮め、西へ向かっては涼州の反乱を治め、西域と交易をして巨万の富を稼ぎ出し、心ひとつで皇后の座も思いのまま、そして天下の政治を改革するという遠大な理想をお持ちのお方がそれを言いますか?!……ワシだってそれができるならやりたかったです、そのワシの策謀を全部奇麗に叩き潰した主公だけはそれを言ってはなりませぬ!」
「……ごめんなさい」
ぜぇ、はぁ……
またもや賈詡さんがしゃべりにしゃべりつくして、息切れして止まってくれたかと思ったら、言葉を続けます。
「主公は天下に二人とおられない英雄で、すでに男も女も関係ないと思っておりますぞ。なぜそこまで自分を卑下なさいます。それでは……主公に従っている我らが情けないではございませんか」
……だって、だってだって……じゃないか。
うん。
私が知っているのは、三国志の世界。曹操、孫堅、劉備といった真の英雄、原作主人公たち。この世でもすでにその片鱗をまざまざと見せつけられてきました。だから、私は彼らに遠く及ばない、ただの女だと思っていたんですが……。
すでに、公明くんや賈詡さん、教団の皆さん。そして董卓パパと董一族の皆。
大勢の人の運命を私が左右してしまっているんでした。
自分の力を正確に把握せずに、戦いなんてできるわけありません。
自分の評価から逃げちゃだめだ、受け止めないと。
「そうですね、私はまだ英雄とは言えませんが、群雄ぐらいはやれてるんでしょうか」
「天下一品の英雄だと申し上げておるんですが……まぁまだマシですのでそれで」
なんで呆れてんですか。ちょっと。
「主公が自分の実力をきちんと把握してくださったところで、もう一つ。まだ目標を隠されてますな?それでは献策が上手くいきませぬ」
「目的とは?」
「先ほど仰ったではないですか、主公の幸せとはなんですか?ワシはそれが皇后になって富貴を極め、政権を握ることと誤認しておったわけですが」
「えっと、私は一族みんなで楽しく暮らせればそれで……今以上の富貴とか望みませんし、あ、あと結婚を強制されたくない、かな?」
「……娘が、親のいうとおり結婚しないで、どうやって結婚するのですか。野合ですか?」
「いや、その父上にも祝福はしてほしいんですがえっと……愛されて結婚したいです……お見合いとか結納で買われるんじゃなくて……あとその、能力とか仕事とか親のコネとかじゃなくて、私を見てほしい、かな……なんかこう、私が頼られて私が尽くすより、私が頼れて、私に尽くしてくれる感じで……」
賈詡さん、すごい変な顔してますよ。
何言わせるんですか恥ずかしい。こんなの策謀の士に相談することじゃないですよね?!
「普通の娘は、衣食住が揃っていれば幸せな結婚と考えるものですが……これは大変強欲なお方ですな」
「強欲で悪かったですね、目標は全部いいですよね?これで!」
「とりあえず分かりました。それでは皇后は厳しいでしょうな。弁皇子を確保する方法は別に考えることとしましょう」
というと賈詡さんはちょっと迷った風な表情で、退出しかけて、足を止めました。
「……その、余計なお世話かと思いますが……。いま、一番、主公を女として好いておられるのは、公明様かと思います」
「へ?」
一瞬、思考が止まる。
……ちょっとまって?
正気に戻って詳しく聞こうと思った時にはすでに賈詡さんはその場にいませんでした。
……えー。
私のために戦ってくれて。
うん。
私に贈物をくれたり。
あー……
私がしてほしいと思ってたことを先回りしてしてくれて。
好き?
・賈詡「いや、見たらわかるし……なんで気づかないんですか」
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