仕事を作ろう
・ごめんなさい、本来の木曜日の金曜日1回目の投下です。
パパが無職になり、隴西は反乱軍に占領され、私たちは貧乏になりました。
私たちは謹慎ということで、河東郡にあるお屋敷に閉じこもっていますが、とってもガラーンとしています。
部曲の皆さんや召使の皆さんもアチコチに預けたり、再就職させたりして、いまは最小限の人数しかお屋敷にのこっていません。
まぁ、なんとか自分たちが食べるだけの穀物はあるので贅沢しなきゃいいんですが……
一時期は百人近い人が詰めていたお屋敷もガランとしちゃって寂しい限りです。
「クククク……フフフフ……今に見ておれ宦官どもめ。袁老師が起死回生の一撃を加えてくださる。」
「くっくっく……そうなれば僕たちもきっと官職に戻れましょう!」
「はぁ……そうなんですか」
董卓パパと牛輔義兄さんはなんか働きもせずにブツブツと文句ばかり言ってます。謹慎中だからしかたありませんけど、どこからどうみてもニートです。
しかし、故郷を占領されているのに、戦って取り戻すとかできないんでしょうか。なんだかんだ言って董家の部曲には歴戦の戦士がたくさんいたはずです。
「いや、韓遂の反乱軍ってもう兵10万の規模になったらしいですわ」
これまたボケーっと白黒で遊んでいるのっぽの郭汜さんが呟きました。
え……と、当家は何人集められますか……
「いま、声をかけテも100カ……兵糧サエあれば千や2千は」
李傕さんが白黒を打ちながら答えます。
これは……無理ですね。国家レベルの問題です。謹慎中で官職にもつけないし、実家を頼ろうにも占領中という。もうどうしようもないですね。
「しかし!河東郡のやつら、新しい太守が来たからいうて、前の太守の主公に挨拶もないんかいな」
「恩知らずメ!!せめて肉や酒を持ってくるベキダロウ!!」
ヒマだから宴会したいだけですよねそれ。まぁ……謹慎中で落目の元上司とか関わりたくないとは思いますよ。召使を預かってくれただけマシだと思います。
しかし、腕に覚えのある人たちは再就職できたんですが、李傕さんも郭汜さんも無給でとどまってくれていますね。やっぱりパパが好きなようです。食糧庫の粟は食べられていますが。
まぁ、家の男衆はふてくされてはいますが、謹慎中だし無害です。粟が残ってる限り何とかなるでしょう。
問題はですね……
私は河東に帰ってきたばかりのことを思い出しました。
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「巫女様!」
「巫女様、お戻りですか!」
はい、河伯教団の皆さんです。
「おーい!みんな真っ直ぐに家に帰るように言われただろ!もう配るものはないんだぞー!!」
護衛についてくれている公明くんが叫びます。
そのとおり、実家は占領、パパは無職、居候も官職なしということで貧乏ですからね。均輸の仕事で支援してくれていた商家の皆さんもそれを見て急に他所他所しくなって、寄付をしてくれなくなりました。
「だって、巫女様が帰ってきてくださったし……」
「家に居てもすることねえだ」
「んだんだ」
「いや!?そこはまっすぐに仕事しようよ!!」
「畑狭いからもう終わっただ」
「薪拾うとか!」
信者の皆様って基本的に貧乏なので、何かしてあげたいんですよね。このまま放っておいてまた病気になられたら悲しいですし……そうだ、みんなができる仕事を作ろう……でも私の家はみんな無職ですけどね!!!
「えっと、じゃあ麦でも買ってきてください。売り物でも作りましょう」
「わかりました!!!」
私は唯一の資本、手持ちの金を出しました。1金ですから銅貨なら1万銭にはなるでしょう。京師で皇子様に白黒を売った代金です。
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麦を買ってきてもらって、董家のお屋敷から持ってきた石臼で挽きます。
これを水で練って塩を加え、細く伸ばして乾かせば、索餅になります。漢の国でもポピュラーな食べ物です。手間がかかるのが欠点ですが。
「これだけでも食品として売れることは売れるんですが、大儲けは無理ですね」
「はい!普通の索餅に見えます!」
うん、何か珍しいモノでも作りますか。
小麦粉を練って丸めてお焼き……。これじゃあ味がない。塩味じゃ索餅と一緒だし。うーん。甘みとか欲しいところですけど。
この時代、砂糖はまだありませんが、甘蔗は江南で取れます、噛んで汁を吸う感じです。ただ南の方の作物なので、河東まで運ぶとものすごく高くなります。
あとは甘味としては蜂蜜がありますね。原作の三国志では袁術さんが大好きなやつです。これもハチの巣を自然に見つけるしかなく、採取もハチの巣を命がけで壊してやっているので、たいへんお高くなっております。
何かもっと安い甘味料ありませんかね。今は麦がたくさんあって……。
ああ、麦芽水あめでいいや。これもこの国では甘みとしては一般的なもので、作り方も知られています。
というわけで試作品を味見してみますが、イマイチですね……
「水あめを入れるだけだとパサパサしませんか?」
「美味しいですよ?」
「美味しい」
小麦粉を水で練って塩加えて水あめ足しただけでも皆喜んで食べていますが。私が知っているお菓子はもっと美味しかったはずです。しっとりと、サクサクと……ああ。乳製品が欲しいですね。
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というわけで、匈奴さんの里にいきます。
応対してくれた人の顔をどこかで見たことが有るなと思ったら、この間、馬を巻き上げられそうになってた人でした。
向こうも気が付いたようです。いや、変装してるんで気づかれると困るんですが、巫女の変装って着飾って面紗一枚つけてるだけですからわかる人にはわかるようで。
「オオ、恩人。酪ナラ安ク売ルゾ?」
「もう発酵しちゃってますね……」
酪は酸っぱめの乳酸菌飲料で、遊牧民さんがよく飲みます。そのまま醸してお酒にもします。
「保存がきく奴はありませんか?」
「ダッタラ、乾酪がアルゾ」
乾酪を見せてもらいましたが、乳を煮詰めて乾かしたものだそうです。チーズというかいわゆる「蘇」のほうが近いかもしれません。これはこれでいいですが、バターがあるともっといいですね。あれはたしか牛乳を振るだけでできたはずです。
「新鮮な牛乳があったら、こういう脂肪の塊を作れませんか?」
「アア、乳ヲ袋ニ入レテ馬ガ走ルト、稀ニ良クデキル。ツクレル」
私が乳脂の製法を簡単に説明すると匈奴さんもピンと来たようです。
よしよし。なんか完成形が見えてきましたよ!!
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乳脂を加えて練った小麦粉のお焼きを味見します。うん、口当たりがよくなってきた。でも油っぽさもでてきたかな?
こういう場合は……卵か!
「小麦粉を練って、乳脂と卵を加えて、水あめ入れて……練る練るねって焼いてっと……」
はい、たぶんなんとなく餅乾ができました!
「美味しい!」
「美味しい!!!」
「美味しい!!!!!こんなもの食べたことねえだ!」
味見をした信者の皆さんが口々に驚きの声をあげます。
うんうん、これなら売れるでしょう……でも一種類なのはちょっと惜しいかな。種類を増やすとしたら……そうだ!
「というわけで、干し葡萄、陳皮、干しアンズ、榛子、甘栗などなどいろんな果実で種類を増やしてみました!」
「美味しい!!!!!!」
「美味しい!!!!!!!!!」
「美味しい!!!!!!!こんなもの食べたことねえだ!!!!!」
うーん、みんなの反応がもう天元突破してて変化しなくなっちゃいましたね。でもまぁ、これはいろんな味がして飽きませんし、美味しいです。
さっそく、信者さんたちに班を組んでもらって、市で餅乾を売ってもらうようにしました。
……
……
「巫女様、みんな見たことがないから近寄ってもこないだ」
「知らないものに銭はだせねって」
うーん、これは困りましたね。
知らない人に興味を持ってもらうには……。
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河東郡安邑城の市場。その一角に人だかりができている。
「そこでウサギは言ったべ、ああ、カメに勝てると思って居眠りこいてまった。もう駄目だべや」
木の板に書いた背景の前で、ウサギとカメの絵を動かしながら、信者さんがお話を続けます。
「ウサギはこまって言っただ、ああ、天のかみさま。今後はまじめにしますので勝たせてくだせえと言っただ」
「そこに神様があらわれ、本当にまじめにするだか?と言って、ならばこれを食べるべいぞと餅乾をウサギに与えただ」
「ウサギはこれを食べると元気百ばいで勇気が凛凛沸いてきただから、ものすごい勢いで走ってカメを追い抜いけただ」
「そしてウサギは改心してカメにケンカを売らなくなったし、カメはウサギを認めて仲良くするようになっただ。二人とも、孔子様の教えはこうだっただなと言って礼儀正しく生きていっただ」
「めでたしめでたし」
「さて、この餅乾が5銭だぁ。うめえし力がでるぞぉ」
「くれ!」
「くれ!食べてみてえ!」
よかった、ちゃんと売れるようになりましたね。紙芝居……木の板に描いた絵ですが、は効果があったようです。
お話の筋は昔話からとりましたけど、オチは儒教に怒られないようにちょっと変えました。
何か言われても「孔子様の教えが正しいと伝えるためです」って言い訳できますからね!河伯教団は邪教じゃないですよー。
さてと、これで信者の人たちの生活も落ち着くでしょうからあとは任せて……
「巫女様、売れすぎて足らんだ」
「少しずつ焼いてたら間に合わんだけどどうしたらいいべ」
なるほど、まとめ焼き……だったらアレが欲しいですね。
・いいねくーださい




