(閑話)劉関張三兄弟 その1
・日曜日最後です。
・平日は1話ずつ
「なあ、雲長よ。あのお坊ちゃま。俺の名を、聞く前から知ってたよな?」
「うむ?そういえばそうであるな玄徳兄。どこかで聞いたのではないか?」
「ちげえよ。「玄徳」じゃねぇ。「劉備」だって知ってやがった」
「備」というのは、諱だ。
他人の諱は軽々しく呼ぶもんじゃない。だから俺を呼ぶなら劉玄徳だし、こいつを呼ぶなら関雲長ってのが普通だ。
主君とか親とかでないかぎり諱で呼ぶことはないから、「そのへんで聞いた」ぐらいで、俺の諱が「備」だって知ってるはずがない。
「つまり、どういうことだ、玄徳兄」
雲長のやつが、髭をなでながら、いぶかしげに問う。
「つまり、だよ」
人差し指を振って、俺の推測を説明する。
「董卓将軍は、それだけ俺に注目しているってことだ。なんせ一族のものに俺の名前を教えているくらいだからな。それに義兄弟だとも知ってた」
「はあ」
「くくく。この劉備、運が向いてきやがった」
「……それなら最初に宴会に呼ぶと思うのだがな?」
たまに無駄に鋭いよな雲長はよぉ?!
「え、演出だろ演出」
そうだそうだ、そうに決まってるぜ。ただ単に宴会に呼ぶならその他大勢。一族の若者を通じて個別に会うことで、進言に結びつける。董卓さんは最初っからそれが狙いだったんだろうな!!
しかも、あのお坊ちゃま。まだヒゲも生えないぐらい若いのにこれがどうして属吏を率いてこれだけの大軍の補給を完璧にこなしてやがる。
それに下っ端の言うことも差別せずによく聞いて、事実を調べてはすぐに仕事に反映すると評判だ。
董卓さんには息子はいないようだが、あれだけの器量の人間が一族に居るなら、董家は隆盛まちがいなしだろ……。しかも、俺たちが歴史に残ると確信をもって言っていた、あれは「歴史に残るぐらい出世させてやるからついて来い」って意味だよな??
「よし、俺たちはこのまま董将軍についていくぜ!」
「お師匠はいいのか」
「……いいも何も逮捕されて連れてかれちゃったしな……」
「まぁよいか。たしかに董家についていくのが英雄になる早道のようだ」
「おーい、玄徳兄、雲長兄。鄒校尉からいい加減帰ってこいって使者来てるぞー」
なんだよ、鄒靖のやろうか。そういえばこっちに盧植先生がいるから短期間でも援軍にいかせてください、って頼み込んでこっち来たんだよな……。そりゃあ、先生が逮捕されたなら帰ってこいっていうだろうけどさ。
よし!
「使者殿!大変申し訳ないが、劉玄徳隊は鄒校尉の傘下から離脱させていただく!我らは董将軍についていくのでな!」
「なっ?!貴様、そんな勝手が」
「お帰りはあちらだぜー?」
張飛に頼んで使者を投げ返してもらう。
しょうがねーよな。こっちのほうが大事にされてるし、将来も明るいからな!!
俺はニコニコしながら将来に思いをはせて、その言葉を聞いた。
「おい、聞いたか?董将軍が皇帝陛下のお怒りを買ってクビになったそうだぞ?後任は皇甫将軍だそうだ」
は………?
「益徳ぅ!!!鄒校尉の使者はどうした?」
「死ぬほど怒って帰って行ったから、もう見えねーけど?」
「追いかけるんだよぉおおおおおお!!!!」
史実では劉備はこの鄒靖さんに従って戦い、恩賞を貰っていました。なお。
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