唯才是挙できない
こんにちわ、享年16歳の一児の母であり、悪役(になったパパ上の)令嬢でもある董青です。
子育てもなんとかコツをつかんできました。
熟練者に頼る、これですね。
というわけでひいおばあ様(董卓パパの母上)に私の宝貝をお預けして、擬人化悪だくみさんと会話します。
「しかしまぁ、言わせておけばよろしいのでは?」
「そうですか?」
若白髪の賈詡さんが頭を掻きながら答えました。
「皇帝陛下はきちんと政権を担っておられますし、我らの報告もきちんと情報を踏まえて判断しておられます。名士たちが多少騒いだところで政権が揺るぐわけでは」
「そうですか?まだ名士たちは朝廷の要職や地方官を占めていて、いざとなれば動く実力がありますよね?」
「いまのところ董公に批判が集中していますが、ご本人も気にしておられません。我々も隠れ蓑……ゴホン。いや大変頼りに」
「……」
私はじとーっとこの全自動悪謀生産機を眺めます。
まぁ、パパ上に悪評押し付けてる分には弁くんたちは困りませんものね。
パパ上あの悪人顔ですし、なんか物語の中盤で出てくる悪逆非道な悪者っぽくて批判しやすいというか。
名士たちの不満のぶつけ先としては最適なのでしょう。
それに人間って自分のみたいものしかみないんですよね。
結果として名士過激派は一掃され、皇帝弁くんが政治をするようになったわけですが、悪名高かった中常侍たちも一掃されて反宦官名士が復帰したわけです。
やはり袁紹たちの決起は正しかった、命をもって皇帝の目を覚ましたのだ、というような「正しい歴史」が流布されているとかいないとか。
こういう人たちがパパ上を逆恨みして、董卓専横に立ち向かう!檄文だ同盟軍だってなりませんか?
というと賈詡さんはニヤリと悪い笑みを浮かべます。
「なれば今度こそ名士は一掃ですな、大変よろしいのでは」
「……ダメです!人が大勢死ぬでしょう!民が巻き込まれます」
「はっ、そうですな。いや私めとしてはどちらにも備えておきたく」
賈詡さんの悪い癖ですね、状況が動き出したときにすぐ悪だくみを始めてしまう。
あと、人死にを理由にしましたが、私はもう一つ恐れているものがあります。
原作の強制力です。なんか大きな流れが三国志になるよう仕向けているような気がします。
もう歴史十分変えただろうといえば変わってるんですが。
とにかく反乱は避けたいです。
あれだけあからさまな袁紹の乱ですら自己正当化する人たちにとって、反乱で弾圧されました、はまた次の反乱の言い訳にしかならないでしょう。
皇帝弁くんも悪だくみ人間もいつまでも居るわけではありません。私の可愛い宝貝やその子の代まで平和にしないと。
何かいいやり方はないものでしょうか。
パパ上にも相談しましょう。
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大将軍となったパパ上の大豪邸。
家族だけが入れる奥の部屋でパパ上に現状の懸念を伝えました。
「ん?ああ、知っとるが気にしとらんぞ」
「はい?」
この世をときめく外戚(皇帝の親戚)で、大将軍。朝廷首座として政権を主導する董卓閣下は上機嫌でした。
いやいや、名士たちに逆恨みされてこのままなら刺されるかもしれませんよ?
「まぁ、弧の役目は陛下の盾となって悪名を受け止めること。いざとなればいつでも引退するわい。」
「潔いですね」
「うむ、一生分の贅沢はやりつくしたし、百官を従えてヘコヘコさせるのもやってみれば飽きた」
「そんなの飽きないでください……ってまぁいくら羨ましがってても実際に達成したらそんなものかというのはありますけど」
「うむ、すでに涼州の大草原が懐かしいわ」
確かにパパ上は最初から政治に向いてないっておっしゃってましたしね。
「しかし、父上が引退されては今度こそ逆恨みが陛下に向くのでは?」
「ならば逆賊じゃから誅殺すればよかろう、皆殺しぞ。名士たちが名声や美名に隠れてあそこまでひどいとは思わんかった」
うう、軍人脳……。
私は頭を抱えます。
しかし確かにそう思う気持ちはあります。あれだけの大反乱がおきても人間の考えって変わらないものですね。
やっぱり人材登用の仕組みが名声だけというのががおかしいのでは……そうだ。
「父上、そういえば私が提案した国家公務員試験についてはどうですか?」
「……あれか、あれはなぁ」
そうそう、弁くんにかなり前に提言しっぱなしで忘れてました。
名声や推薦で官吏を登用するからみんな儒教を守る過剰演技をするし、コネと癒着で結託するんです。
だからすぱっと試験で、ちゃんと文章力や計算力、法や経済の知識を問うもので登用すればいいんじゃないですか。
で、試験官は曹操さんがいいですね、きっと最適です。
でもパパ上はなんかゲンナリしてますね。
「あの上奏文の唯才是挙(才能が有れば採用します!)はまずいだろ」
「なんでですか!才能がない人が名声だけで採用されるから困ってるんですよ!孟徳様だってそういいます」
「おお、曹操は大喜びだったがな?!法家が舞い上がり儒家は墜落、名士たちが全員発狂するわ!」
「むぐ……またもや名士。宦官がおとなしくなったと思えばすべて名士が邪魔をしますね」
「おとなしくなったかの??」
表向きは。
羊さんが宦官をがっちり統制して、政治には一切口出しをさせずに皇帝陛下のお世話に専念しています。
袁紹の反乱で宮殿が焼け、皇帝生活や朝廷の運営に必要な日用品や家具、衣服などの生産体制もぶっこわれてしまいましたので、
それらのお仕事を教団の洛陽支部で丸っと請け負うことになりました。
今までは専任の職人が少量だけ手作りしていたのに対し、教団では庶民用の品とあわせて大勢で大量生産しますので安く上がります。
そして浮いた予算はすべて着服……せずに宦官たちの生活改善と老後の年金にあてることを皇帝に提案して認められたのです。
羊くんに収入や老後の生活を保障された宦官たちはまじめに働くようになり、張譲さん趙忠さんの時代のように民衆から賄賂を取ったり因縁をつけて手数料を取るということをしなくなりました。
宦官たちの仕事は宮殿や朝廷の維持、裏方、下働きですのでどこにでもいます。
なので宮殿内や役所のあちこちで役人や高官たちの行動をこっそり監視してはすべて皇帝にありのまま報告するのです。
いや、本当は正面から賃上げを認めさせたかったのですが、朝廷の名士たちの大反対で速攻でつぶされました。おのれ。
うーーーん。人材登用方法の改革がうまく行かないならやっぱり今の名士たちをきちんと管理する方法が必要で。
今はパパ上が矢面に立ってるからいいとして、引退したら弁くんが直接攻撃される。
かといってこのままだと名士たちがまた暴発しかねない……。
えっと、だから、弁くんが引き続き責任を回避しつつ、儒教に染まった名士たちが批判できないようなやり方で管理しないといけないんですよね。
孔子様にでも復活してもらって全員批判させればおとなしくなるんですけどねぇ……あ、そっか。
「あ、父上、こういうのはどうでしょうか」
「また無茶を言う……時間がかかるぞ」
パパ上は口ぶりとは逆にニヤニヤと悪そうな笑みを浮かべておられました。
リハビリのため書いたチートなし転生転移なしファンタジーものです。
よろしければどうぞ。
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