宦官と結託する邪悪
・日曜日2回目の投下です
しかし移住にあれだけ苦労するとは思いませんでした。
三国志の時代には大勢の移住者が出て、たとえば徐州生まれの諸葛亮なんかは荊州に移住しています。
何でかというと中原の皆さんは戦乱、洪水に旱魃、蝗害でひたすら叩きのめされて、命からがら江南に逃げ込みました。
この移住者たちが呉・蜀の人口を増やし三国鼎立の原動力となったんですね。
じゃあ同じことをすればいいのかというと、私はそもそも三国志を防ぎたいんですから、それじゃあダメなんです。
なので、土地にまだ未練のある方とか、まだギリギリ余裕のある方は移住してくださらないので、今、呼びかけて移住してくれているのは破産して奴婢になりそうな人ぐらいです。
さて、奴婢ですが、そもそも奴婢の売買は漢朝では違法です。
後漢を建てた光武帝という皇帝は「天地之性人為貴」いう人間推しな人で、奴婢と良民の差別を禁じました。
そして何度も奴隷解放令を出し、売人法で奴隷売買を、略人法で人さらいを禁止しました。
で、じゃあなんで奴婢が今の時代にあるかっていうと、「奴婢の保有」と、「自分で自分を売るのは違法ではない」からですね。
借金を背負った良民が、自発的に借金のカタに自分を売って奴婢になるのは合法……という脱法的な方法がまかりとおっています。
なので大地主である豪族は良民に銭を貸し付けて奴婢を増やしているわけです。
そしてその銭を借りる理由が、政府の腐敗と重税です。
その結果として税金を払う戸籍が減って政府の収入が減っているわけです。
で、反乱が起きて、その討伐費用にさらなる重税が課されるというわけで。
なんか滅亡に向かって国全体で走ってる感じですね。
なので、三国志を防ぎたい私としては、何としてでも漢朝の走る方向を変えたいわけです。
まずは良民の財産を増やすことですが、同時に政治も糺さないといけません。
涼州や荊州は少し上手く行っている気がしますが……。
― ― ― ― ―
洛陽に戻ると、董卓パパが羌族と月氏を降伏させたという知らせが入りました。
皇帝陛下も、車騎将軍の趙忠さんもお喜びで、さっそく董卓パパには五千戸の加増となりました。
長安の近くの領地だということを加味すると、皇甫嵩や朱儁に匹敵する大貴族となりました。
「木鈴どの、最近、董将軍派閥の評判が悪いぞ」
「は?」
董旻叔父さんや劉備三兄弟と一緒に、洛陽の董一族屋敷でご加増のお祝いをしていた私たち。
そこに済南の相を辞めた曹操さんが尋ねてきました。
私よりも背丈の低いおじさんはお祝いの言葉を述べたうえで、言いにくそうに切り出しました。
「やはり、知らなかったか……董将軍に孫将軍は、十常侍と結託し、車騎将軍の趙忠の操るままに地方の内政と軍事の権限を独占し、失敗を賄賂で糊塗し、功績もないのに封候されたと、特に名士、党人の間ではたいへんな評判だ」
「いやいや、ウチは何大将軍の派閥で、袁一族をはじめ名士の皆さんとは仲良く……」
「彼らがお祝いに来たか?」
「あれ?」
たしかに。
あれ?世間では董卓派閥ってことになっちゃってるの??
「特に前の涼州刺史、および現荊州刺史が非常に詳細に董将軍と孫将軍の悪口を言って回っていて、名士の間ではもはやお二人の宦官との結託は明白な事実となっている」
「くっ、なんて根も葉もない……」
「そうか、十常侍に賄賂は贈ってないのだな……、毎日宴会をして贅沢をしているという噂も……まぁ、この屋敷を見れば質素な暮らしぶりは分かるからそういうことはないだろうが……」
……いや?賄賂は贈ってますね??
あと洛陽の屋敷が質素なのは董卓パパが現地で宴会や部下への褒美にばらまくせいですし……あれ?
案外、根と葉はありますねぇ……。
「なんにせよ、両将軍には少し行動を慎むようにお伝えしてくれ。陛下は両将軍を高く評価しておいでだし、余も両将軍は天下のために必要な人材だと思っている。小人の中傷で傷つかれては困る」
「……陛下のお気持ちをご存じなのですか?」
「ははは、余の祖父が誰だと思っている」
伝説の大宦官の曹騰様ですね。
宮中の情報はまだしっかりと掴んでおられると。
「で、余は病気なのだ。なのでしばらく、故郷の沛国譙県に引きこもって静養しようと思う。何かときな臭いからな」
「……え、何があるんです?」
「あまり知らんほうがいい、木鈴どのも大人しくしていれば大丈夫だ」
曹操さんはニヤリと悪戯っぽく笑うと、どう見ても病人には見えない元気いっぱいの歩き方で帰って行かれました。
完全に仮病です。
……いやいや?!何が起きるんですか?!教えてくださいよっ?!
― ― ― ― ―
ほどなく発表された人事異動で、宦官の縁者が実入りのいい関東の郡県に配置されました。
黄巾の乱以来、あちこちで反乱が起きていたので、名士の非難を避けるために、宦官の縁者は官職から外していたのですがすっかり元どおりです。
官職を奪われた名士たちは非難轟々、なぜか何も悪くない董旻叔父様が何進派閥からはぶられ気味になっています。
そして人事に満足した趙忠さんは車騎将軍位と政権を返上。
また皇帝が直接政治をするようになりました……。
・面白いと思った人は面白いだけでもいいので感想くれると喜びます!
・長期連載なので都度感想が貰えると手ごたえが分かりますので!
・参考文献 後漢書 「光武帝紀第一下」




