おまけ:数百年後の少年たち。
―――数百年後。
「おいクトー、こっち来いよ! なんか見つけたぜ!?」
木漏れ日の中、崩れた崖の前で、大人用の棍棒を手にした浅黒い肌の勝気そうな顔立ちの子ども。
彼が張り上げた声を聞いて現れたのは、無表情で細身の白い肌の少年だった。
「……洞窟か」
子ども用の弓矢を手にした彼は、青い瞳で壁面の穴を見て、一つうなずく。
「中に何かあるかも知んねーな! 掘ってみようぜ!」
「危ないと思うが」
「いけるいける!」
浅黒い肌の子どもは、クトーと呼ばれた少年の静止を聞かずに棍棒で穴を広げ始める。
それを見て小さくため息を吐いた後、彼は子どもに告げた。
「リュウ、せめて上に回って掘れ。崩れた土に巻き込まれても助けんぞ」
「いや、それは助けろよ!?」
言いながらも、素直に言葉に従って猿のように壁面の蔦を登ったリュウは、器用にぶら下がって上から穴の下をほじくり始める。
やがて、実際に穴を塞いでいた岩が姿を見せると、リュウは棍棒を穴に差し込んだ。
「転がすぞー!」
「ああ」
クトーがその場を離れると、リュウは棍棒を持つ手に力を込める。
すると、腕よりも太い大人用の棍棒が、ミシミシと音を立てて折れかけるが……テコの原理で徐々に岩は動き始めた。
子どもではあり得ない膂力を込めていたため、棍棒がぼきりと折れる。
が、岩は軽く転がって、子どもならば通れそうなくらいに穴が広がった。
「おっしゃ、中に入るぞ!!」
「気をつけろ。魔物はいないと思うが……」
「ヘーキヘーキ!」
するりと隙間に身を滑り込ませたリュウに続いて、クトーも弓を肩にかけて中に入る。
洞窟の中は、どこにも穴がないのに荘厳な青い光に満たされていた。
その中央に。
「スゲェ!! 武器じゃねーか、アレ!?」
安置されていたのは、赤と黒の装飾で彩られた二振りの武器だった。
一つは大剣。
もう一つは、偃月刀。
それらが十字に交差するように置かれており、その後ろに鎧が置かれている。
だが、防具はどこか朽ちているように見えた。
左の胸元に大きなひび割れが入っていて、武器に比べて色合いがくすんで錆びている。
「あの防具はなんかダメそうだな」
「売って金にしようと思っているのなら、やめておけ」
「何でだ?」
「二つの武器の柄に嵌っているのは、呪玉だ。魔道士が媒介として使うものでも、小指の爪程度の大きさのはずだが、あれは男の握り拳位の大きさがある。値段としては、城が買えるくらいになるだろう」
「……いや、むしろ売りたくね?」
「そんな値段のもの、どんな商人が買えると思うんだ?」
クトーが無表情のまま淡々と指摘すると、リュウは納得したように頷いた。
「ああ、そりゃそーだな。んでも、とりあえずかっぱらって帰ろーぜ!」
「本当に持っていくのか」
「俺らが見つけたんだから、俺らのだろ!?」
言いながら近づいたリュウは、あっさりと剣を引き抜いた。
「へへへ、いいな、これ! お前も持ってみろよ!」
「ああ」
何の気無しに差し出された剣に手を伸ばすが、クトーが触れる前に、バチリ、と雷撃が走って弾かれる。
「む。……手が痺れた」
「何だ今の?」
「分からん。が、俺はどうやら触れんようだな」
「そーなのか」
リュウとクトーは、偃月刀の方も確認するが、同じようなことが起こる。
「仕方ねーな……じゃ、両方とも俺が持ってくかー」
「何でも構わんが、そろそろ獲物を狩って村に帰らなければ、お互いに母に怒られるぞ」
「おっと、そうだった!」
偃月刀と大剣を担ぎ上げたリュウは、クトーと共に外に出る。
「棍棒壊れたけど、新しい武器二つに手に入れたぜ!」
「……どちらにしても、棍棒を壊したことは怒られる気がするが」
「どうせ作るの俺だし、どうでもいいよ。帰ろうぜ!」
「ああ」
その前に一応、クトーは洞窟の隙間を初等の土魔法で埋め戻しておく。
「でも、この武器何なんだろうな?」
「さあな」
二人は、軽口を叩きながら帰路につく。
リュウの背負った二つの武器が、陽光を浴びてきらりと輝いた。
―――二つの武器が、世界の命運を変えた二人と、彼らの仲間になった少女の命を救うのは、また別のお話。
完結です。ご愛読ありがとうございました。
続きは直接の未来ではないので、おまけの彼らの話です。




