おししょーは、弟子と一緒に仲間を助けに行く。
「アーサス!?」
いきなり、何らかの魔法に撃ち抜かれて、彼が倒れた直後。
その軌跡から相手の位置を瞬時に予測したレイザーはそちらに向けて武技を放った。
「〝風炎爆槍〟!!」
相手の気配が動く。
炎と風が藪を燃やし散らす攻撃を背に、跳ねて姿を見せたのは、フードを目深に被り、ローブを身に纏った女性だった。
「ウィズ……!」
その姿を視認して、レイザーの頭が沸騰する。
「何でアーサスを殺したァ!!」
正々堂々とは対極の振る舞いに、怒りを渦巻かせながら、レイザーは力を開放した。
「《纏身》ッ!!」
現れた鎧は、緑の軽装鎧だった。
胸当てと手甲脚甲、そして鳥の頭に似た兜。
「―――《纏身》」
同時に、ウィズも姿を変える。
纏っていた黒いケープの胸元の呪玉が輝き、フードが顔を被わないタイプの兜へと変化した。
ケープそのものは左の片胸だけを覆う胸当てへと変化し、兜と胸当ての色が白色に染まる。
明確な殺意を向けて、ウィズに対してレイザーは槍を扱き抜いた。
しかし、それは易々と彼女が手にした杖でいなされる。
時空魔法により、ウィズの動きが加速しているのだ。
「落ち着きなさい、レイザー。まだ……!」
「おぉおおおお!!」
ウィズが何かを話しかけてくるが、レイザーは無視する。
怒りに任せて、いなされた槍の柄尻を跳ね上げた、ところで。
「レイザーッッ!!!!」
圧を伴うカノンの声が、背後から聞こえて、ピタリと動きを止めた。
その瞬間、ウィズが杖をかざす。
向けた先は、カノンの方向。
「《聖矢》!!」
静止姿勢のまま、再度放たれた魔法の軌跡を目で追う。
その先にあったのは、倒れたアーサスの死体。
だと、思ったのだが。
―――その体が跳ねて、魔法を避けた。
「!?」
「やれやれ、上手くいったと思ったのに、騙されないなぁ」
アーサスは、普段の気の弱そうな顔ではなく、人を嘲笑するような笑みを浮かべていた。
「アーサス……?」
「多分、中身はアーサスじゃないんじゃないかな〜♪ ……《纏身》♪」
黄色地に黒い筋の入った、配色の纏鎧。
虎に似た模様のそれのフードが変化し、虎の顔を模した鉄仮面が張り付いた。
しなやかな肢体を持つ俊敏そうな姿に変わった彼女は、トントン、と爪先で地面を叩く。
「ねぇ、どう?♪」
カノンの問いかけに、アーサスはニィ、と笑みを深めた。
※※※
聖気の光が収まると、バックラーが天を仰いだ姿勢のまま動きを止めていた。
「何が起こった!?」
「わ、分かりませんー!」
突然、聖気が爆発して死霊どもが消え去ったが、ティーチたちは無傷だ。
バックラーも、纏鎧の強度のお陰か、あるいは聖気爆轟になんらかの影響を受けたのか、額を槍で貫いたはずだが死んではいない。
だが、ピシリ、と鬼の面に傷が入り、バキリと半面がずり落ちてバックラーの顔が覗いた。
ふらり、と体を揺らした彼は、それでも大剣を地面に立ててすぐに踏みとどまり、こちらをギロリと睨みつける。
「やってくれたな」
「頑丈なこった。……だが、今、これ以上続けるのはやめにしないか?」
ティーチの提案に、バックラーは少し沈黙した後、視線をカノンらの居る方に向けた。
ウィズ、レイザー、カノンがそれぞれに纏鎧し、なぜかお互いではなくアーサスに対峙している。
状況は読めないが、分かっていることが一つ。
「アーサスから、瘴気の気配を感じる」
「魔王の力……」
ティーチとバックラーが同時につぶやくと、スートが目を見張った。
「魔王!? アーサスが!?」
「分からねぇ。が、洗脳が解けてなかった可能性はある」
魔王の気配だというのなら、余計に猶予がなかった。
そこで、バックラーが腰元を探り、一つの宝玉を取り出す。
『ちょっとバックラー!? なんで応えないのかな!?』
「聞こえている。取り込み中なのは見えているだろうが」
『終わったのも見えてるよ!!』
少し焦り気味の口調で怒鳴るグラスに重ねて、ブレイヴが口を開いた。
『納得したなら、ウィズを助けに行こうぜ、バックラー。……婚礼を前に、どっちかが命を落とすようなことは……』
「分かっている、ブレイヴ……乗っ取りか」
『ああ。迷惑かけて、悪いな』
「いい。……お前も来い、グラス。一時休戦だ」
『もう向かってるよ! そっちこそ急いだら!?』
バックラーが大剣を地面から引き抜くのに合わせて、ティーチも、ブレイヴを肩に乗せたスートに目を向ける。
正直、ここからの連戦は荷が重いが……そうも言ってられないだろう。
「スート。行けるか?」
「はい!!」




