おししょーは、重戦士とやり合う。
ティーチは、すり足で前に出た。
纏鎧している状態であれば、一足で届く間合い。
おそらくは、バックラーの間合いであろう位置に足を踏み込んだ瞬間、何かにぶつかるような圧を感じた。
ーーー気当たり。
お互いの間合いが重なった状態で、軽く曲げた右腕を突き出しつつ勁を発する。
最速で突き出した掌底を、ティーチはバックラーの構えた大盾のど真ん中に叩きつけた。
衝撃が抜けた気配がするが、手応えがない。
ーーーダメか。
大盾は、おそらくは神秘金属の類でできているのだろう。
聖気を乗せた発勁で凹む気配すらなく、硬い感触が返ってきていた。
さらに、突き抜けた勁は、おそらくは鎧に阻まれてバックラーの体には届いていないか、バックラーの体捌きでいなされたようだ。
ーーーこれで頭を打ち抜ければ、楽に終わったんだがな。
洗脳が、聖気を打ち込むことで解けることは分かっているのだ。
バックラーの性格的な部分から、それでも戦闘が続く可能性はあるが、降参すれば命を取ろうとまではしないだろうという予感もあった。
掌底の一撃を防がれると同時に、大盾が動く。
右手が弾かれる前に引いたティーチは、左側から微かに風を感じて身をかがめた。
すると、後頭部ギリギリの位置を鉄板のような大剣が、ゴッ! と音を立てて横薙ぎに行き過ぎる。
ーーーいや剣の音じゃねぇ!!
どんな膂力をしているのか。
仮面の下で冷や汗をかきながら、ティーチは身をかがめたまま、さらに前に出る。
柄と刀身がほぼ同じ長さの特殊な形の、騎兵槍のような大剣は、射程が長い分重いはずだ。
それを片手で、避けるのがギリギリの速度で振り回すのは、仮に鎧の加護や補助魔法を受けていても尋常ではない。
ティーチは、バックラーの腕下から懐に潜り込み、体を捻り込んで、左拳を放った。
大楯を払って剣を薙いだ動きにより、相手の右脇腹に隙ができている。
ガラ空きの場所に、一撃は叩き込める、と思ったのだが。
こちらの左拳がバックラーを捉えると同時に、腹のあたりに凄まじい衝撃を感じた。
「ガッ……!?」
息が詰まり、そのまま吹き飛ばされながら、ティーチは相手の膝によるカウンターを食らったのだと理解した。
相手は微動だにせず、片足を上げた状態で、フルフェイスの兜の奥からジッと冷静な目でこちらを眺めている。
ーーー勇者パーティーの盾。
一合で分かるその強さに、しかしティーチは怯まなかった。
少なくとも、カノンやレイザーを相手にするほど間合いの不利はなく、速度も追いきれない程ではない。
そしてティーチは、相手がどれほど頑丈でも、その【纏鎧】の防御を突破する必要はないのだ。
ーーー頭さえ狙えれば。
相手の頭は身長差から高い位置にはあるが、軽くでも聖気を込めた何かの攻撃が当たれば良いのだ。
手数。
ティーチに必要なのはそれだった。
おそらく獲物などを持たない分、速度はこちらが有利なはずだ。
【纏鎧】そのものは、体を覆う鎧がそれであり、大楯と大剣は鎧とは別なのだ。
故に得物自体は、攻撃力や防御力に相応の重量がある。
ーーーよし。
両手足の先に貰った聖気を集めたティーチは、着地と同時に体勢を立て直す。
そのまま無理やり呼吸を整えて、再びバックラーに挑みかかった。




